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INTERVIEW

トップインタビューDISCOMPO with 泉茉里 - コロナ禍に誕生した新時代オンラインユニット、待望の初シングルをCDでリリース!

コロナ禍に誕生した新時代オンラインユニット、待望の初シングルをCDでリリース!

2021.01.20

それぞれの得意技を掛け合わせる試み

──短編映画『DISCOMPO』公開時のインタビューで、UsuiさんがDISCOMPO with 泉茉里としてやっていきたい試みとして「4つ打ちのエレクトロポップを現代風にアップデートする」と話していましたが、「シャドウ・ヴィーナス」はまさにその試みを具体化した曲と言えますね。

Dr.Usui:24年前に始めて2010年までやっていたMOTOCOMPOの後期の曲の続きをやりたくて、どんなことをやればいいのか考えていたんです。それとアイドルをやっていた茉里ちゃんのファン、茉里ちゃんと同世代の人たちのことを意識したときに、この10年くらいで日本のポップスがだいぶ進化してきたし、そこから自分なりに受け取ったものをやってみたいと思ったんですね。そうした日本のポップスの要素と、僕がもともと好きだった海外のインディーポップの要素を掛け合わせたものというか。海外のインディーポップも近年はすごくエレクトロに寄ってきたので、そういうダンサブルなアプローチを参考にしながら「シャドウ・ヴィーナス」は作りました。

──「シャドウ・ヴィーナス」は歌詞もUsuiさんが手がけているんですか。

Dr.Usui:いえ、歌詞は名嘉真監督です。監督はこれまでも広告系の動画を作る際にニーズに合う歌詞を書いていたらしいんですけど、今回初めてアーティスト名義で作詞者としてクレジットしたんです。「輪郭」のほうも名嘉真監督とDr.Usuiの2人でテキストのやり取りをして書いたんです。ちなみに「シャドウ・ヴィーナス」の歌詞は、名嘉真監督がいきなり書き上げてきたんですよ(笑)。

絢屋:ZOOM会議で「シャドウ・ヴィーナス」の歌詞をどうするかという話が出たんです。その会議の終わり頃に名嘉真監督が「実は書きました」と突然名乗りをあげて(笑)。そこで読ませてもらったら、すごくしっくりくる歌詞だったんです。すごい話ですよね、歌詞の完成をメンバーも会議中に知るわけですから(笑)。

──「シャドウ・ヴィーナス」というタイトルも詩的でいいですよね。

Dr.Usui:それまでの会議で、雑談としていろいろ話していたんですよ。夏の高校野球がなくなって球児たちは可哀想だねみたいな話を僕がしていて、会話が盛り上がった回があったんですよ。それで「砂に消えた夏のヴィーナス」というサビの書き出しが生まれたんじゃないですかね。

──アレンジはどんな感じで詰めていったんですか。

Dr.Usui:「シャドウ・ヴィーナス」のほうはトラックを進めつつ、順くんに仮のギターを入れてもらって部分ごとに修正していきました。歌入れ以外、メンバーは全く会わずに作業を進めた曲ですね。「輪郭」のほうは順くんに僕のスタジオへ来てもらって、いろんなギターを弾いてもらいました。エレキとアコギ2本だったかな。

絢屋:ナイロン弦のガットギターと通常のアコースティックギター、それとエレキギターですね。「シャドウ・ヴィーナス」ではエレキギターしか使わなかったんですけど、僕はもともとソウル、ファンク、ディスコといったブラックミュージックがすごい好きで、プレイの素養としても深く掘り下げていたので、そのニュアンスをふんだんに入れられたらいいなと思いながら弾きました。

Dr.Usui:(M)otocompoの活動が続いていた頃からDISCOMPOのアイディアが自分の中にあって、こんなことがやりたいんだと順くんには話していたんです。実際にDISCOMPO with 泉茉里が始まってからは自分たちの得意技の掛け合わせをやろうと意識するようになりましたね。各自の得意技をさらに伸ばしながら掛け合わせて、それまでできなかった所まで到達したいというか。そういう部分を極めていかないとリスナーの皆さんに聴いてもらえないんじゃないかという思いがあったんです。

──DISCOMPO with 泉茉里の楽曲にダンサブルな要素が必ずあるのは、絢屋さんの得意技であるブラックミュージックのフレイバーがあったからなんでしょうね。

絢屋:そのテイストがだいぶ曲に染み出ているかもしれませんね(笑)。(M)otocompoのときからそうなんですけど、Dr.Usuiが僕のプレイの良さを汲み取って引き出してくれるんですよ。今回のシングルも同じように引き出された部分は多いと思います。

──Usuiさんの得意技とはどんなところなんでしょう?

Dr.Usui:僕は自分の演奏がどうしても好きになれないんです。誰かの曲を聴いて「お、いいな。こんな音が入ってるんだ?」「ここでこういうことをするんだ?」「この音はどうやって録音したんだろう?」みたいに感じる、リスナーの感覚が常に先にあるんです。だから自分でも得意技だと思うのは、コンピュータをベースにして自分がいいと感じるトラックを構築することですね。自分なりに作り込んだものでお客さんに楽しんでもらうことが好きなのかなと。ビートがあって、踊れて唄えるものを作りたいんですね。その中でさらに説得力を増す材料として順くんのギターが入ってくれるとうまくいくんじゃないかと思うんです。バッキングトラックを作る上で2人でそうやって作ればいいものが生まれる、そういう関係性なんでしょうね。フットワークは軽いけど何度も何度もやり直すし、作業には時間と労力をものすごく注ぎ込んでいるんですけど。

──泉さんの歌入れにはどんなディレクションをしたんですか。

Dr.Usui:スタジオに来てもらって軽いディレクションはその都度しましたけど、割と好きなように唄ってもらいましたね。強いて言うなら「シャドウ・ヴィーナス」は明るくポップに、「輪郭」は今までの茉里ちゃんにない大人っぽい感じに持っていきたいというのを最初に話しました。「シャドウ・ヴィーナス」は名嘉真監督から歌詞をもらったものの、譜割りが分からないのでこっちで勝手に作っちゃったところがあって、監督にZOOMで仮歌を唄ってもらったんです。音数に合わせずに歌詞を書いた部分があったので。その辺を調整しながら茉里ちゃんには唄ってもらいました。

 

自分たちが本気になれるものをやればオンリーワンに近づける

──「輪郭」は、Usuiさんが「MOTOCOMPOと(M)otocompo両方のマナーが融合したかもしれない新機軸」とツイートしていたように、ご自身としてもかなりの手応えがあったんじゃないですか。

Dr.Usui:何週間か前に、リスナーの方が「輪郭」のことを「Chicみたいなディスコミュージックとジプシー音楽を融合させたような曲」とツイートしていたんです。自分としてはそこまで追求しきれていなかったんですけど、MOTOCOMPOのときにはディスコを、(M)otocompoのときにはジプシーや民族系を研究していたんですよ。自分としてはジプシー音楽というよりも東欧のほうの音階をポップスに織り込めないかと考えていたんですけど。それでいて、「輪郭」を録るときから順くんと話していたのは「自分たちのやりたいことや得意技や夢を入れていこう」ということで。僕らが本気になれるものを入れていけばオンリーワンのものに近づけるんじゃないかということで、バッキングの要にしたのはエレキでもなくシンセでもなく、順くんの弾く鉄弦のアコギを編集したループだったんです。それにガットギターのソロを乗っけてみたりとか。(M)otocompoでもそういうアプローチをやってみたくて、エレクトロにバンジョーを入れた曲とかもあったんですけど、そういうことをやろうとしていたある一部分が「輪郭」で混ざった気がするんです。それが結果的にDISCOMPO with 泉茉里が今後武器にしていけるものなんじゃないかとほんのり感じているんですよ。実際、「輪郭」みたいな路線は反響がすごくありましたし。自分としては不思議なんですけどね。どこがサビなのかよく分からないし、J-POPのマナーではないですし。でもその辺のバランスが今はいいのかなと思います。今の日常のリモートワークをしている環境でリスナーの方に聴いてもらえるのなら、作業に邪魔しないポップスとしてはこれくらいの温度感がちょうどいいのかなと思いますし。

──「輪郭」は絢屋さんのマルチ弦楽器奏者としての持ち味が存分に発揮された曲でもありますよね。

絢屋:今まで僕が経験してきたり修練してきたものを遺憾なく発揮させてもらいましたね。僕の友達にラテンギタリストがいて、独特の奏法をしているんです。その友達の奏法を教えてもらうために食いついて、やたら一緒に遊ぶ時間を作ったのも無駄じゃなかったと今では思います(笑)。あと、自分がかつてブルースにどっぷり浸かった時期に習得したスライドギターを今回いいところに入れることができたのも良かったです。

Dr.Usui:「ここはスライドかな?」とか僕が半分冗談で言ったら「やれますよ」と順くんが応えてくれて、そう、これこれ! なんて感じでね。あれは面白かった。僕もブルースロックが好きだったので、そんな要素も入れてみようかと思いつきで提案したんですよ。僕がやってほしいことを順くんはすぐにできちゃうんですよね。

──短編映画『DISCOMPO』では「輪郭」のフル尺を聴けませんでしたが、今回のシングル発売に向けて完成させた格好なんですか。

Dr.Usui:短編映画の尺が先発ではあったんですけど、撮影終了までにミックスまで終わらせる必要があったのでフル尺は作ってありました。MVでフル尺は9月に発表済みでしたし。

絢屋:ただ、短編映画で使われているショートバージョンのほうはMVのフル尺にはないイントロがあるんですけどね。

Dr.Usui:名嘉真監督が「映画のエンディングは遠くから同じフレーズがやってくるような感じがいい」というイメージを話していたんです。同じ言葉のリフレインだったり、旋律が繰り返されるみたいな。僕は曲のイメージとしてはフル尺バージョンのようにジャンジャンジャン…とすぐビートが立ち上がる感じにしたかったんですけど、映画バージョンは監督の意見を活かしてフィンガープレイで優しく入っていくようなイントロを作ったんです。

──そういった曲調のニュアンスを含めて、「輪郭」は名嘉真さんとの共同作業で完成したように思えますね。

Dr.Usui:名嘉真監督のオーダーによってできたところもあるんです。最初にMOTOCOMPOのとある曲みたいな感じでと言われたので。自分としては「シャドウ・ヴィーナス」のように平歌があってサビがはっきりあるみたいな曲のアプローチに頭が向いていたので、監督のオーダーに従うとループベースのものになるからどうしようかなと思っていたんです。そこで順くんの弾くギターのフレーズでループを構築しようと思いついて、新たな可能性を見いだせたんですよ。だから「輪郭」は名嘉真監督のオーダーありきで生まれたようなものだし、この方向性をこれから極めていきたいと思っているところです。

──名嘉真さんは映像の世界一本槍ではなくバンド経験者でもあるので、理想とする音のイメージが自身の中で明確にあったんでしょうね。

Dr.Usui:そうですね。監督はこれまでMVをたくさん作ってきて、MVは曲があって映像を作る仕事だけど、今回はまず映画ありきの話だったから、監督が本来やりたいやり方をしたということでしょうね。

──話を伺っていると、普段のやり取りはリモートでも関係性がしっかりとバンドになっているのがよく分かりますね。

Dr.Usui:うん、すごくバンドっぽいですよ。直接顔を合わせなくてもちゃんとコミュニケーションを取れていますし。

 

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【収録曲】
1. シャドウ・ヴィーナス
2. 輪郭〜短編映画「DISCOMPO」のテーマ〜
3. シャドウ・ヴィーナス(Instrumental)
4. 輪郭〜短編映画「DISCOMPO」のテーマ〜(Instrumental)

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CD発売記念『ファーストライブセッション動画配信』
2021年1月21日(木)夜
※詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。
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