2010年6月13日、日本中いや世界中を熱狂の渦に包み込んだ"はやぶさ"の帰還。それから10年、その魂を受け継いだ"はやぶさ2"が2020年12月6日に帰還予定。日本が再度宇宙に関心をもつ今、宇宙空間の誰も見ることもできない遠い空で"はやぶさ2"はどのような旅をしたのか。JAXAの情報を元にその姿を克明に描いた『劇場版HAYABUSA2~REBORN』が11月27日より公開を迎える。その公開を前に監督の上坂浩光さんと実際に"はやぶさ初号機"の開発に携わられた元NECエンジニアの小笠原雅弘さんにお話を伺いました。[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
実際の情報を元に映像制作しました
──改めて映画を作り終えた今のお気持ちを伺えますか。
上坂:この作品は2009年から続く3部作をまとめたものでしたので、11年間無事やり終えたと、安堵しています。“はやぶさ”のことを全く知らなくてもよく分かるようにということを意識して再編集しました。完成版では主軸・目的を伝えることが上手くできたと思います。この作品は単に科学・ミッションを説明するだけでなく、観ている方も感情移入できるような演出をしたのですが、それによって今まで宇宙探査に興味を持っていなかった人たちにも届く作品になったと思います。
──もともとプラネタリウム作品として作られていた今作が、劇場作品にリバイバルされた形になります。プラネタリウムはスクリーン全体に投影、映画では正面のスクリーンに投影と見せ方が違ってくるので演出的にかなり変わってくると思いますが如何でしょうか。
上坂:はい、かなり違っています。プラネタリウムは“自分がその場に行った”という感覚を得られるような見せ方をするんです。もちろん、プラネタリウムでも視線を誘導する演出はありますが、観客の方には空間を自由に観てくださいという感じなんです。でも、映画ではフレームで四角く切り取るので違ってきます。ドーム版を平面版にするにあたって、どこに焦点をあてるかという部分はカットごとにいろいろ工夫しました。
──実際に“はやぶさ”の動きを目にしてはいないわけですが。それをこういうものだろうと検証しながら映像化したわけですか。
上坂:JAXAさんから公表されている情報を元に位置などをなるべく正確に再現しています。たとえば、“はやぶさ”には4隅と前後にスラスターという小型ロケットがあるんです。そのロケットをふかしながら姿勢を指定された位置まで変えていくんですが、動きを止めるために噴きすぎると戻りすぎてしまうので、その噴射時間もなるべくリアルになるように描きました。ただ、嘘もついています。たとえば本当はスラスターの噴射は見えないんです。
小笠原:宇宙空間では空気がないから見えないんですよ。
──そうなんですね。
上坂:映画ではみなさんに伝わるように色を付けて、その光が照り返されているなど演出的な嘘は適宜していますが、なるべく本当、本物に沿って作っています。タッチダウンも実際の情報を元に映像制作しました。
──そこまで正確に制作されているんですね。小笠原さんは実際に設計で携わっていらっしゃいますが、映像を観られて如何でしたか。
小笠原:本当に緻密でリアルに描かれていました。タッチダウンの部分、前作ではわりとスッと降りて上がるという演出だったんです。でも実際は、“はやぶさ初号機”はいろいろ装置が壊れていて理想的な状態では降りられていないので。そこが今作ではスッと降りるのではなく、一度降りて目標補足をし、再度姿勢も変えて最終目標に降りるといった“ピンポイントタッチダウン”形になっていました。誘導などは担当者が観ても「そうだよな」とか「右ね。ちょっと5度傾いで、こう吹いたかな」と、実際の現場を再現したと思えるほどの出来でした。
上坂:補足させていただくと、小惑星は小さいので、地面はカーブしています。ですので、単純に位置を変えると言っても地面に対して垂直じゃなくなってしまうので、しまいます。タッチダウンするには正確に小惑星表面に対し垂直でなければならず、非常に繊細なコントロールが必要なんです。
小笠原:しかも、リュウグウは自転しているんです。そんな中で数メートルの範囲に降りなければいけない、これが大変なんです。初号機の目指したイトカワの場合は平坦な土地があったので、数十メートルくらいの範囲で降りられれば大丈夫だよねという形だったのが、今回は数メートル以内に降りないといけなかったのでハードルが高かったんです。
上坂:最終的に、2回目のタッチダウンでは、目標の60cmの場所に降りることができました。
──改めてその繊細さ・凄さに驚きました。そこをかなり丁寧に、知らない人でも理解できるように描いていましたが、そこはやはり一番重要な伝えたいポイントということだったのでしょうか。
上坂:はい、タッチダウンはひとつの見どころではないかなと思っています。“はやぶさ2”が凄い遠くの小惑星に行って、何をしたかは実際には誰も見ていない。でも、この作品を観た見た人にはその手ごたえを感じて欲しいと思って描きました。“はやぶさ”は今やミッションチームだけのものじゃなく、日本中のみんなが応援している探査機探索機なので、そういう方たちにも手ごたえ感じて欲しいなと思って作りました。
46億年前のまま変質していない物質が地球にやってくる
──映画というよりミッションについての質問になるのですが、今回の調査の目的や期待していることを伺えますか。
小笠原:“はやぶさ初号機”が行ったイトカワというのは、比較的内側で出来た小惑星なんです。なので、水や有機物という熱い領域では残りにくいものは残っていなかったんです。今回の“はやぶさ2”が行ったリュウグウは外側で生まれているので、リュウグウの中には水や有機物が残っているかもしれない、“太陽系生成時の水や有機物といった始原物質を地球に持って帰る”、これが一番の目標です。そのために“はやぶさ2”では、小惑星に穴を空け底の物質を持って帰るということやっています。穴の底からは変化していない素のままの状態の物質が手に入る可能性が非常に高いんです。しかも表面の物質と穴の中の物質、2種類を混在しないように部屋を別々に分けて保管しているんです。
──凄いことをやっているんですね。
小笠原:アメリカも同じようにサンプル採取をしたんですけど、1回だけです。今回“はやぶさ2”では2カ所、別々の表面と地中の物質を面倒なことをしてまでも手に入れることが出来たということに最大の価値があるんだと思います。
上坂:地球も小惑星と同じような成り立ちで出来たので、出来た当初は小惑星と同じく水や有機物が存在しました。ですが、地球は凄く大きいので、重力や放射性物質で熱を帯びてしまい、元から存在したすべての水や有機物が地表からはなくなってしまったと言われています。
生命の元になった水や有機物は、落下した隕石がもたらしたんじゃないかと言われていて、その隕石の起源が小惑星じゃないかと考えられているんです。今はあくまで予測ですが、“はやぶさ2”が持って帰ってくるサンプルからその答えに近づけるんじゃないかと考えられています。46億年前、太陽系が出来たときの状態のまま変質していない物質が地球に来るんです。これは凄いことだと思いませんか? そのままの物質を手に入れることが出来て、分析が出来る、タイムマシンでもない限り手に入れられないと思っていたものが手に入るんです。
──ワクワクしますね。
小笠原:サンプルを持って帰る最大の意義は将来の最新鋭機器で分析が出来るということなんです。10年後・20年後に残すことが出来れば、さらに進んだ機器を使って分析することができて、もっといろんなことが分かるんです。
──確かに。
小笠原:今でも“はやぶさ初号機”が持って帰ってきたイトカワの物質から新しいことが分かってきているんです。先ほど、水がなかったと言いましたが、実は百万分の一だか千万分の一だかの量では存在したんです。それは今の最新鋭機器で調べたから初めて分かったことになります。サンプルを持って帰るということは人類に遺産を残すことが出来るということなんです。
──想像以上に壮大で意義があることなので、ビックリしています。
上坂:まだ入口に立ったところなので、これからが楽しみですね。
──“はやぶさ初号機”と“はやぶさ2”、開発の中での一番の違いは何だったのですか。
小笠原:“はやぶさ初号機”のプロジェクトがスタートしたのは1996年で、打ち上がるまで7年かかっているんです。“はやぶさ2”は実質3年で打ち上げてますから短いんです。ただ、“はやぶさ2”はプロジェクトを始めるにあたっての条件がありました。それは、“はやぶさ初号機”の遺産を最大限生かすということです。なので、“はやぶさ2”の基本設計は“はやぶさ初号機”を踏襲しています。それにより、短い期間で打ち上げることが出来ました。もちろん、「はやぶさ初号機」で上手くいかなかったところ、故障したところは、徹底的に見直して、何か起きてもバックアップとれるような設計・改良もしています。
──遺産を引き継いで開発されたんですね。
小笠原:知らない人は“はやぶさ”は地球でコントロールされていると思われているかもしれませんが、実際は3億kmという距離があるので電波の往復で30分以上かかるんです。そうなると間に合わない。なので、タッチダウンの時に現場で考えるのは搭載されたコンピューターの仕事になります。そこにどれだけの機能を盛り込むかというのは技術者のひとつの大きな仕事なんです。
“はやぶさ”に人格を感じたんです
──以前、上坂監督が「“はやぶさ”を生き物のように感じた」とおっしゃられていたのが印象的でした。その点を詳しく伺えますか。
上坂:1作目を作る前にJAXAで『「祈り」-小惑星探査機 はやぶさ の物語-』という作品が作られたんです。それは“はやぶさ初号機”のミッションを説明する映像で、僕はCG制作者として参加したのですが、それを作り始めたときには“はやぶさ初号機”は満身創痍で、帰ってくるときは地球に突っ込むしかないことが分かっていたんです。そんな状況で僕は“はやぶさ初号機”が地球を目指す後姿をCGで作ったんです。自分でCGを作っていて、その画像を見たときになぜか涙が出てきて、“はやぶさ初号機”に感情移入しちゃったんです。そのときに“はやぶさ”に人格を感じました。
──このシリーズに入られる前から持っていた感情だったんですね。
上坂:シリーズ1作目を作り始めるときは単純に科学ミッションを説明する映像にしようと考えていたのですが、どうも上手くいかなくて、自分の奥底にあった「“はやぶさ”は生き物」という感覚を前面に出して作り変えました。そうやって出来たのがこのシリーズです。いま振り返ってみると、そうしたからこそ、このシリーズが10年間つづく3作品として作れたんじゃないかと思います。1作目を本当に多くの方に観ていただいたんですけど、観ていただいた方々が泣いてくれるんです。子どもたちは本当に純粋で観たあと席から立ちあがれなくなるくらいで、そういう子どもたちをたくさん目の当たりにすることで、宇宙に関心を持ってくれる人の間口を広げることが出来たと感じました。ですので、このシリーズは上手くいったのかなと思っています。
──私も“はやぶさ”が生きていて、一緒に宇宙を旅しているように感じました。
上坂:ありがとうございます。映画を観て“はやぶさ”に魂が宿っているように見えたら、映画は成功したのかなと思っています。
──こういう言い方は失礼になってしまうかもしれませんが、正直、観る前は「“はやぶさ”を生き物のように感じた」という言葉に半信半疑なところもありました。しかし、その感情は見事に払拭されました。開発に携わっているの方々も同じような感覚になるものなのでしょうか。
小笠原:確かに同じような感想を持つメンバーもいました。
上坂:実は、この映画を作り始めるときに感情移入させるような、擬人化した脚本にすることをミッションチームの方々には反対されたんです。
──もっとドキュメンタリー作品として描いたほうがいいと。
上坂:はい、「もっと冷静に淡々と描けばそれで充分じゃないか」と。ただ、“はやぶさ”の帰還が近づいてくると、淡々としていたほうがいいと言っていた方たちが「“はやぶさ”のことを、生きているとしか思えない」って言い始めたんです。特にプロジェクトマネージャーの川口(淳一郎)さんがそうおっしゃられていたのが印象的で、それが人間の本質なのかなと思いました。やっぱり自分が思ったことは間違ってなかったなと思いました。
──小笠原さんは生みの親の一人として今まさに帰ってくるのを待っている立場ですが、どういったお気持ちですか。
小笠原:上坂さんの言う擬人化とはとちょっと違う観点ですが、私も天空を動く生き物という気持ちもあります。私の専門は軌道や誘導で、頭の中は座標で出来ているんです。よく人からは「冷たいんじゃないの」って言われるんですけど、頭の中の座標上には常に“はやぶさ2”がいて、今も地球に対してどこにいるんだろうと毎日思っています。数学的なことで言うと座標のXYZ上の点として感じているというのが強いかもしれませんね。
「自分の一番大事な人、子どもだ」と思って話してくださいとお願い
──この作品の聞き所と言えばいいんでしょうか。ナレーションを篠田三郎さんが担当されていて、その声・ナレーションが凄い染みてきて、素晴らしいキャスティングでした。
上坂:篠田さんは本当に誠実な方で、ナレーションを録るたびに「何回でもいいから納得いくまでダメ出ししてください」って言っていただけるんです。こっちの意図を凄くよく汲んでくださる方で、シリーズを重ねるごとにミッションや“はやぶさ”への理解度が深くなってきて、1作目と声が感情のこもり方少しずつ変わってきているんです。
小笠原:そうですよね。観るとよく分かります。
上坂:だんだんと自分の中から出てくる言葉として話していただけているんだと思います。
──篠田さんにお願いした経緯を伺えますか。
上坂:実はキャスティングを僕の妻がやっているんです。作品を作るときにアニマティクスという粗いCGで全編を作って、仮のナレーションを自分で入れるんです。その僕の仮ナレ聞いて雰囲気が似ている、この人だったらと妻が思ったみたいです。
──確かに、上坂さんの話し方・声の雰囲気は篠田さんと似ていますね。
上坂:最初に篠田さんにナレーションをお願いしたときは“はやぶさ”ミッションのことはほとんど知らなかったんです。
──最初はそうですよね。
上坂:でも、“はやぶさ”を「自分の一番大事な人、子どもだ」と思って話してくださいとお願いし、その意図を汲んでナレーションをやっていただけました。
──だから、心地よく入ってくるんですね。小笠原さんは篠田さんのナレーションを聞かれていかがでしたか。
小笠原:大人の声、大人の話し方ですよね。大人が子どもに呼びかけるような感じが1作目で、今回はまたちょっと違う形で話してくれて、毎回凄く安心します。篠田さんの誠実で真面目な人柄が出ているんだと思います。私もナレーション録りに立ち会ったんですが、本当に何回もリテイクするんです。篠田さん本人から「こうしたい」「納得できない」と要望が出てくるくらいでした。
上坂:本当に篠田さんが「もう1回やらせてください」と何度もおっしゃって、やっていただきました。
小笠原:そういう姿を見たこともあり、今は篠田さんが“はやぶさ”のお父さんと思って聞き入っています。実際に“はやぶさ”を運営している人の気持ちを代弁していただけていると感じています。
──本当に見守っているというイメージがピッタリでした。
上坂:この演出が失敗すると、観ている人は、篠田さんと“はやぶさ”の2人が勝手にやっていることのように感じてしまうんです。その点は上手くいったんじゃないかなと思います。
長い長い物語の大団円を描いた物語
──完成版を観られての感想を改めて伺えますか。
小笠原:(2003年の「はやぶさ初号機」打ち上げから)17年という年月の長さ、私自身の技術者としての歩みと時間の流れを改めて感じました。それが全体を通しての感想の大きなところですね。それと、もうひとつ“大団円”ということですね。“はやぶさ”のミッションを締めくくるのはもちろん、そして私自身が技術者として第一線から離れましたから、2つの意味で大団円です。「これでひとつの締めくくりになる」という思いもあります。
──長い間、日本人の夢のためにご尽力いただきありがとうございます。いよいよ12月6日に“はやぶさ2”が帰ってきますが、今のお気持ちも伺えますか。
小笠原:“はやぶさ初号機”のときはドキドキしたけど、今回は大船に乗った気で“絶対上手くやってくれる”、そんな感じです。外から見てて凄く安心感がありますね。
上坂:僕は心配です。
小笠原:大丈夫だって(笑)。
──上坂監督も“はやぶさ”に長く携わっていますから、その気持ち分かります。
上坂:ミッションチームではないですが、外野として凄く心配です。身内なんです。2014年に打ち上げのときも、あんなにでっかいロケットの最先端にポツンと乗っているのを見て、これ爆発したらどうするんだ、やっぱりやめようって思っちゃいました。今回もちゃんとカプセル落とせるかなって心配です。もちろん、大丈夫だと思いますけどね。
小笠原:上坂さんもお父さんみたいなもんですね。大丈夫ですよ。
──話を伺っている感じですと、小笠原さんがお父さん、上坂さんが心配性なお母さんといった感じですね。
小笠原:私が“はやぶさ初号機”ではなぜハラハラドキドキしたかというと、いろんな意味で初めてのことばっかりだったからです。しかも、途中で異常が起こって戻ってこれらないかもしれない、そんな時代でした。そのときに比べると“はやぶさ2”は元気です。それを支える人の層も凄く厚くなっています。充分に経験を積んだ人たちが“はやぶさ初号機”の時のざっと2、3倍いて、しかも凄腕の後輩ばかりです。だから、安心なんです。彼らなら絶対やってくれると思っています。
──そのお話を伺えて、私も安心しました。
上坂:でも、22万キロの距離から、狙い定めてカプセルを落とすんですよ。月までの距離が約38万キロなので、相当遠いのが分かりますよね。その距離でオーストラリアのウーメラ砂漠を狙って離すんですよ。心配になりません?
小笠原:それを大丈夫にするのが技術というものですよ(笑)。
──3億km離れていたリュウグウでは60cm以内で着地したわけですから、大丈夫ですよ(笑)。あとは戻ってくるのを楽しみに待ちましょう。“はやぶさ2”の帰還とともにいよいよ『劇場版HAYABUSA2 ~REBORN』も公開され、宇宙ファンのみならず楽しみが続きますね。
上坂:ありがとうございます。この作品はすべての人に思いを込めているので語り出すときりがないのですが、特に“はやぶさ2”がタッチダウンする動きをぜひ感じて欲しいなと思います。ミッションチームの方にもお観せしたのですが、お墨付きをもらえました。あとはメッセージもこの作品には込めているつもりです。命の本質というのが、このシリーズのテーマになっています。命の本質は、“命を継ぐこと・想いをつなぐこと”にあると思っているので、そのメッセージを読み取っていただけると嬉しいなと思います。
──小笠原さんからも改めて、楽しみにされているみなさんへのメッセージをお願いできますか。
小笠原:先ほども言った通り、この話は17年にも及ぶ長い長い物語の大団円を描いた物語だということを観て欲しいです。一番初めに“はやぶさ”のスイングバイというシーンが出てくるのですが、そこは軌道屋の私が一番感動したシーンでした。スイングバイという難しい概念をとても分かりやすく伝えてくれていました。私も人に説明するときには上坂さんの映像を使わせてもらっているくらいです。数字だけでしか表せないものを自分の目・神の目で、地球の引力によって大きく機体の軌道が変わっていく様子を追体験できる映像になっていると思っています。ぜひそういう姿を目で見てもらって、自分もこんなことをやりたいなと思ってくれる人が出てくれるといいなと思っています。
上坂:10年前に公開した『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH』が、2年間の間にプラネタリウムだけで100万人以上という、本当にたくさんの方に観ていただけました。そこで作品を観た子どもたちがJAXAに入ったり、宇宙開発に携わるメーカーに入ったり、科学者になったり、天文学者になったり、プラネタリウムの生解説者になったりしています。それは非常に嬉しいなことなので、この作品を観てまたそういった方が出て来てくれると、こんなに嬉しいことはないですね。繋いでいくということは本当に大事なことだと思います。“はやぶさ”シリーズの志というのはきっとこの後もどこかでまた生まれ変わって、新しい宇宙探査に繋がるんじゃないかと思っています。