限られた条件のなかで精一杯やるしかない
──ということはお祭り騒ぎになる感じの初日とは対照的に、2日目はG.D.の音楽的側面を深掘りするようなライブになると?
JOE:そうだね。いつもとはちょっと違うワンマンライブになると思う。セットリストを組み立てるのはこれからなんだけどね。今回は人気投票の結果をあまり意識せず、他の楽器を入れたら面白そうな曲を優先してやりたいと思ってる。
──結果的にこの2日間のライブが結成35周年の華々しいキックオフになりそうですね。
JOE:こんな状況だから華々しくはないけどね。10月30日でちょうど35周年を迎えて、そこをスタートとして考えると来年の10月30日までが35周年モードになるから、その1年のなかでいろんなことをやりたいと考えてる。当初は10月30日に向けていろいろやろうと思っていたんだけど、そこをスタートにするように切り替えたんだよ。終点を始点にしてみたわけ。
──前回インタビューさせていただいたのは『悪魔』がリリースされた5年前で、それもあっという間に過ぎましたし、40周年を迎える5年先もすぐにやってきそうですね。
JOE:生きていればね。いつまでやれるか分からないというさっきの話につながるけど、さすがに40周年ともなると続けていられる自信がないよ。コロナに限らず気候だっておかしいし、アメリカと中国はずっといがみ合っているし、そのしわ寄せを受けるのは日本だけじゃないだろうし、この先何が起きるか分からないしさ。コロナのどさくさに紛れて私利私欲に走る奴らもいるし、地球もおかしければ国もおかしい。本当に世紀末的というか、終末観が世界全体を覆っているような状況だと思う。だからこそ今からやれることをどんどんやっていかないと後悔するだけだし、自分たちがやりたいことをやるしかないんだよ。音楽って文字通り音を楽しむものでしょ? せっかくこうして35年もバンドをやれているんだから、楽しいことをやらなくちゃ。
──とはいえ、こうしたコロナ禍という100年に一度と言われる危機を迎えて落ち込んだり、ネガティブな感情に引きずられたりはしませんか?
JOE:そうはならないね。ケガをして入退院したときも全然ネガティブじゃなかったし。ちょっと変わった環境で生まれ育ったし、悪いこともさんざんしてきたせいで抵抗力が他の人よりあるのかもしれないけど、今さらもう変わりようがないんじゃないかな。ジョー・ストラマーは死ぬまでジョー・ストラマーだったし、ミック・ジャガーは今もずっとミック・ジャガーのままだし、それと一緒じゃないの? 今も変わらずロックンロールが好きだしね。若い頃にいろんな音楽に影響を受けて夢中になって刺激を受けて、それに助けられた自分がいて、今度は自分が音楽を作る側になって35年経って、今やそれがもう当たり前のことになっているからさ。まあ、うちのバンドはやめるタイミングを失ったとも言えるけどね(笑)。でもバンドをやめようが続けようがそれで今の生活が変わるわけじゃないし、だったらバンドをやっているほうが楽しいんじゃないの? ってだけだよ。第一、バンドをやめる理由が見つからない。やってて当たり前だし、やめちゃったら何か物足りない気がするだろうね。実際、この7カ月休んでいてずっとモヤモヤしていたから。
──コロナ時代におけるバンドの在り方はこの先どうなっていくと思いますか。
JOE:まだまだ感染症対策でいろいろ気をつけなきゃいけない限りは外出することに尻込みしてしまう人はいっぱいいるだろうし、それが決して悪いわけじゃないし、ワクチンが開発されてもう大丈夫だよという状況になってもコロナ禍前の状態には戻れないと個人的には思う。だから臨機応変に対応するしかないよね。たとえばブルースやパンクロックが生まれたのはかなりヘヴィな時代背景だったわけでさ、音楽とはそんなときにこそ必要なものだし、やる側も聴く側も絶対になくならないと思うんだよ。それを信じて限られた条件のなかで何とか精一杯やっていくしかないよね。そういう意味で俺たちは図太いと思うよ。これを不幸中の幸いと言うのか5人ともちょっと能天気だし、デビュー当初から逆境には慣れているので(笑)。