G.D.のメンバーにはゴレンジャーみたいな役割がある
──『悪魔』の発表から5年経つのでそろそろ新作を聴きたいところですが、レコーディングに向けた準備は進んでいるんですか。
JOE:少しずつ歌詞を書き進めてはいるけど、作品としてはロフトの2DAYSには間に合わないかな。練習もしてなかったし、俺の不甲斐なさもあるんだけど。
──このコロナ禍で作詞をするモチベーションがなかなか上がらないのも作業が滞る原因なのでは?
JOE:ずっと自粛が続いて、誰しも少なからずネガティブになるじゃない? 俺はそういう歌詞を書きたくないし、前向きな歌詞を書きにくい時代ではあるよね。
──コロナをテーマにしながらもいろんな意味に解釈できる歌詞を書いてみようと思ったりはしませんか。
JOE:もちろんそういう歌詞も書きかけてるよ。だけどただ批判するだけで終わってしまう感じになって、なかなか難しいね。
──楽曲は『悪魔』同様にいろんなタイプの曲が集まりつつありますか。
JOE:いま出来てる曲は単純な3コードのロックンロールではないかな。
──『悪魔』にも従来のイメージを覆す曲がありましたよね。アコギを基調としたブルージーなサウンドの「俺たちの哀歌」のように。
JOE:曲の幅が広がってきたのは自然な流れだし、芯にあるものがロックンロールだからバラエティに富むってほどでもないと思うけど、前作ではいろんな曲が揃ったね。ただ歌詞に関してはずっと同じ人間が書いているし、唄いたいことも時代によって変わるところはあるけど掘り下げれば一緒なんだよ。だから「あれ? これ昔書いたような歌詞だな」と自分でも思うことがある。かと言って昔の歌詞を読み返すことはないけどね。言葉遣いに関しては、前より大人になったぶんだけ多少良くなってるとは思うけど。
──バッドボーイやヒールの視点で困難に抗い苦境を乗り越えていこうとする歌詞が個人的には好きなのですが、JOEさんの借り物ではない実直な歌詞がG.D.の曲の世界観を決定づけて息を吹き込むところがありますよね。
JOE:歌を通じて伝えたいことがあるからね。うちのバンドはゴレンジャーみたいなもので、それぞれに役割があるわけ。俺は歌詞を書いてなんぼだし、原はベーシックな曲作りを担っているし、博英は間奏のコード進行やギターソロといった細部を色づけするのが役目だし、岡本(雅彦)は曲の構成やアレンジをよく考えてくれる。そういう役割分担がしっかりできているんだよ。
──DEBUさんの役割は?
JOE:ご飯を食べることかな(笑)。
──キレンジャーならそうなりますね(笑)。ゴレンジャー的な役割分担があるのもバンドが長く続く秘訣なのかもしれませんね。
JOE:そうだね。全員がアカレンジャーだと続かないだろうし。さっき話に出たバンドが地に足を着けた後だったと思うんだけど、原と飲んでるときに言われたことがあるんだよ。「俺は次元大介を極めたい。JOEはルパン三世だからさ」って。原は原でいろんなことに手を出さずに自分のポジションを全うするつもりでそんなことを話してくれたんじゃないかな。
──なかなか言えない言葉ですよね。バンドマンである以上、自分がアカレンジャーになりたい気持ちがどこかしらにあるものじゃないですか。
JOE:うちのキレンジャーは誰がどう見てもキレンジャーなのに、自分ではアカレンジャーだと勘違いしてるみたいだけどね(笑)。ちなみに言うと、原はキャラとしてアオレンジャーではなくモモレンジャーなんだよ。ルパンでは次元だけど、ゴレンジャーだとモモレンジャー。この感覚はG.D.のファンなら分かってくれるんじゃないかな。あと俺のなかでは実はアオレンジャーが岡本で、ミドレンジャーが博英なんだよね。博英は実際、キャプテン時代に髪を緑色にしていたし(笑)。
──アオレンジャーの岡本さんは再サポートしてから来年でもう10年になるんですね。
JOE:そもそもうちのバンドの土台を作ったのは戸城(憲夫)で、あいつがZIGGYに行っちゃってからずっとベーシストが安定しなかったんだけど、この35年のあいだにやめていったり亡くなってしまったベーシストがいるなか要所要所でサポートしてくれたのは岡本なんだよ。それも初期の頃からずっと。トータルで数えるとベースは岡本が一番長くやっているし、もう20年近くG.D.をやっていることになるんじゃないかな。
──そんな最強のゴレンジャー体制で制作に臨む新作はいつ頃完成できそうですか。
JOE:できれば今年中に作りたいね。あとは俺が歌詞をまとめられればいつでもいけるんだけどさ。
対照的な趣向の結成35周年記念ライブ2DAYS
──2020年における活動の本丸と言うべき結成35周年記念ライブ2DAYSが10月30日(金)と31日(土)に新宿ロフトで行なわれますが、初日はG.D.と縁の深い面々をゲストに招いたパーティー色の強い趣向となりそうですね。
JOE:昔からの仲間たちと一緒に楽しめればと思ってる。SLUT BANKSは戸城のバンドだし、やってることが純粋に格好いいと思うしね。(板谷)祐の書く歌詞の世界はぶっ飛んでるし、戸城はやっぱり曲を作る天才だと思ってるし。ニューロティカと横道坊主は同期なんだよ。横道は同じ年のデビューだし、ニューロティカは新宿ロフトで活動し始めた時期が同じ1985年という意味で同期。横道の今井(秀明)ちゃんの書く歌詞は俺には勝てないところがあるし、尊敬してるよ。ゲンドウミサイルは当時よくロフトへライブを観に行ってたんだよね。彼らがナゴムにいた頃かな、すごく格好いいなと思ってね。4-STiCKSは今のG.D.の所属事務所であるピーシーズのシャッチョ(柳沼宏孝)がベースなのもあるけど、やっぱりボーカルの南野(信吾)がいてくれたおかげでG.D.は35周年を迎えられるというのもどこかにあるので。南野はいないけど、彼に出てもらうつもりで4-STiCKSをゲストに招いてみた。
──4-STiCKSはロフトの先代の社長だったシゲさんこと故・小林茂明が直々にマネジメントを務めたバンドで、前身のBOICEの頃からJOEさんは目をかけていたそうですね。
JOE:シゲからライブを観てくれと言われて何度も意見を求められたりもしたし、ベースが抜けたときにシャッチョに入れと言ったのも俺だしね。南野と高田(佳秀)が新宿ロフトの店員として入った初日の夜に俺が飲みに行って、「今日入った新人の2人です」と紹介されたときからの付き合いだから、もう20年近く経つのかな。
──ロフトを介して縁を育んでいったバンドばかりが一堂に会すわけですね。いろんな事情でバンドをやれなくなったりすることが多いなか、G.D.を始めどのバンドも今なお活動を続けているのが驚異ですよね。
JOE:これだけの顔ぶれだから本当はもっとたくさんのお客さんを入れたいんだけど、コロナのせいで人数限定でやらなくちゃいけなくてね。残念だけどこればかりはどうしようもないし、チケットを買えなかった人はぜひ配信で見てほしいね。
──配信ライブの在り方についてはどう考えていらっしゃいますか。
JOE:この状況でベストなのは少しでも多くの人の前で生のライブをやりながら配信をやるのがいいんだろうね。今まで配信に対して消極的だったのは生のライブを大事にするライブハウスの意向もあったと思うんだけど、今はツアーもできないし、地方に住む人たちにもG.D.のライブを観てもらえる機会が増えるのは配信の良いところだよね。この先規制が緩和されてお客さんをどんどん入れていい状況になったとしても、そこで配信がプラスされればなおいいんじゃないかと思うし。
──2日目はワンマンライブですが、ゲスト参加もあるとか。
JOE:いろんなゲスト・ミュージシャンに参加してもらうゴージャスなライブにしたくてね。まず、鍵盤のジョージ。彼はこの高円寺界隈で知り合ったんだけど、デーモン閣下がソロでクラシックをバックに唄うライブでピアノを弾いたりしていて、本人がロックをやりたいと言うのでG.D.のライブに時々ゲストで呼んでいるんだよ。それとホーンセクションね。それこそ『イカ天』に出たこともあるアース・ウインド&ファイターズというバンドでトランペットを吹いている辰巳(小五郎)君を始めとする3人。彼らは『ROCK'n'ROLL SUICIDE』と『BAD IS FUN』のレコーディングで吹いてくれて、時折ライブにも参加してくれている。あと、関根真理ちゃんという遠藤ミチロウさんのTHE ENDでドラムを叩いていたパーカッショニスト。曲によってピアノとホーンとパーカッションのサポートメンバーに入ってもらいつつ、音の幅を広げたライブを見せたいんだよね。欲を言えば俺の歌にハモってくれる腕利きのコーラスを2、3人入れたいとか、やりたいことはいろいろあるんだけどさ。
──G.D.の追っかけをしていたという野宮真貴さんやアレルギーの宙也さんにコーラスをお願いするとかは?
JOE:高くつくだろうね(笑)。ストーンズのライブ映像を見るとサポートメンバーが当たり前のようにいて、必要なところでメンバーと同等にスポットライトが当たるじゃない? あんな感じのライブをやりたくてね。
──ああ、「GIMME SHELTER」でコーラスのリサ・フィッシャーがボーカルを取ったりとか。
JOE:そうそう。Superflyのボーカルにコーラスをやってほしいくらい。面識は全然ないんだけど(笑)。