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INTERVIEW

トップインタビュー島キクジロウ(the JUMPS / 島キクジロウ & NO NUKES RIGHTS)×ISHIYA(DEATH SIDE / FORWARD)×遠藤妙子「"REAL VOICE REBEL ON" コロナ禍の時代に響かせなければいけない音楽、叫ばなければいけない言葉とは何か」(前編)

コロナ禍の時代に響かせなければいけない音楽、叫ばなければいけない言葉とは何か
【前編】“社会に逃げるな、自分と闘え”から“自分に逃げるな、社会と闘え”へと変化した時代に

2020.10.07

“価値観の転換”がロックやパンクとつながった

遠藤:で、続きです。ハードコアバンドは国内ツアーはもちろん、海外にも行って。海外のハードコアから感じることは?

ISHIYA:D.I.Y.が当たり前ってこと。全部、何もかも自分らでやる。なおかつ自由。

遠藤:前にFORWARDにインタビューさせてもらったとき、海外のバンドは政権に盾突いてるって…。

ISHIYA:そうそう。バンクバンドならそれが当たり前。たとえば韓国に行ったとしたら、韓国では日本人が嫌われてるんじゃないかって噂を鵜呑みにする奴もいるけど、全然そんなことない。みんな国に盾突いてる奴らばっかりだから、「だろ?」「だよな」ってすぐ共鳴。国境が全然ない。アメリカでもそう。みんな国に盾突いてて、それがパンクスで、パンクスならそれが当たり前。日本のバンドに対して、「なんでもっと盾突かないんだ?」って言うよ。「政権に盾突くのが普通でしょ?」って。すごく自由にやってる。ただ、アメリカは戦争で儲けてるようなとこがあるから、その庇護のもとでのことなのか? って思うこともある。分かんないよ、調べてないから。だからその国がどんな国かを考えられるのも面白い。最高に面白い経験ができるよ、海外ツアーは。

遠藤:政権や国家に対して批判していくぜって意識を、パンクバンドはみんな持ってて、それが曲になるんだね。

ISHIYA:パンクがそういうものだから。別に国に文句ないならパンクミュージックをやる必要もないし、パンクスとして生きる必要もない。俺はそう思う。

遠藤:そういう経験が自分の音楽に反映されて?

ISHIYA:もちろん。ライフスタイルまで影響されてくるよね。バンドの音楽、歌詞、方向性、すべてに。

島:じゃ、FORWARDになってから、歌詞も社会的なことを?

ISHIYA:そうですね。DEATH SIDEでいわゆる政治的な歌詞を書いたのは、湾岸戦争の頃に出した2nd『BET ON THE POSSIBILITY』に、当時のアメリカを批判した曲があって。それより前は自分のことばかりの歌詞だった、生き様とか。

遠藤:以前は歌詞のテーマは多くのバンドが、“社会に逃げるな、自分と闘え”だったよね。それが今は、“自分に逃げるな、社会と闘え”ってことがリアルだし、重要な時代じゃん?

ISHIYA:だって知っちゃったからね。自分が社会でしょ、社会が自分だし。それに気づいたよね。

遠藤:社会や政治と自分は地続きだしね。島さんはバンドを始めて、それから弁護士になったわけで。

ISHIYA:それがすごい。真正面から国にケンカ売ってるんでしょ?(笑)

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遠藤:どういう経緯で?

島:小学生の頃から吉田拓郎とかフォークを聴いてたのね。それで小5の頃に岡林信康にハマッて、「手紙」っていう部落問題を唄った曲に衝撃を受けてさ。

ISHIYA:ああ、はい。

島:岡林の言葉一つ一つが刺さるんだよね。たとえば、「私たちが望むものは」って曲は“私たちが望むものは社会のための私たちではなく 私たちのための社会なのだ”。なんてカッコイイこと唄ってるんだろう! って。

ISHIYA:小5ですよね? 理解できるのがすごい。

島:分かんなかったんだけどさ、カッコイイってことは感じて。言いきる感じというか。

ISHIYA:うん。

島:ずっと後になって、あれは憲法13条のことだったんだなって。

ISHIYA:俺は小5の頃は阪神のことしか考えてなかった(笑)。

島:俺も中日のことばかり考えてたけどね(笑)。で、中1のときに有吉佐和子の『複合汚染』を読んだのね。いわゆる環境問題のことを書いてて。農薬、大気汚染、人口問題、地球の有限性。有限の地球でこれから俺たちどうなる? 社会はどうなる? って。それで人生決まったかな。その後、パンクロック、THE CLASHに出会って、そこが一致しちゃった。つまり価値観の転換ってこと。たとえばさ、俺たちの世代って親は必死に経済的ステータスを追ってたでしょ。全自動洗濯機とかカラーテレビとか。ちょっとたとえが古いか。車2台目とか…。

ISHIYA:マイホームとかね。

島:そうそう。俺らの親はそういうことが人生の目標になって必死になって働いてきた世代だよね。それはそれで親は一生懸命やってくれてるんだけど、やっぱちょっと子ども心に疑問はあって。そんなに大事なことかよ? って。

ISHIYA:すごい分かります。

島:俺、生まれたとこが名古屋市の中でも貧しい地域で、スラム街みたいなとこで。ケンカが強いかどうかでその人の位置づけが決まるみたいな。親たちはそこから這い上がりたいわけ。一生懸命働いて、何年かして当時の新興住宅街に引っ越して。

ISHIYA:ああ、住み分けされてたんだ。

島:そう。新興住宅街に移って、親は「今度のとこはレベルが高いから、あんたも頑張らんと」って言う。俺はレベルが高いって意味が分かんなかったから、とりあえず転校初日に窓ガラス割ったよ(笑)。

ISHIYA:正しい!(笑)

島:そしたらみんな真顔で、「島君、なんで窓ガラス割ったの?」って理由を聞いてきた。前に住んでたとことレベルが違うって、教育レベルのことだったんだよね。親には感謝しなきゃいけないんだけど、そういう価値観ってどうなの? って。で、価値観の転換っていうのが、俺の中でロックやパンクロックとつながったの。価値観の転換ってのは社会をひっくり返すことだからね。それにはロックしかないなって(笑)。

遠藤:話が盛り上がってるところですけど、ここで換気タイムです。その間にFORWARDの曲を。ISHIYAさんから曲紹介を。

ISHIYA:アメリカツアーを編集した映像で。無関心は人を殺すよって曲、「APATHY KILLS PEOPLE」。

 

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──FORWARD「APATHY KILLS PEOPLE」(『FUTURE TROOPS』に収録)
後編へ続きます。

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