全曲ノンストップミックス、メガミックス、マッシュアップとやりたい放題!与えられた持ち時間を"レイヴ"と称し、爆音サイケデリックトランスで唄い踊るアイドル、MIGMA SHELTER(以下、ミシェル)。その革命的なスタイルはデビューと同時にアイドル業界で大きな話題を呼んだ。楽曲のクオリティも高く評価され、クラウドファンディングでも支援額1,200万円以上を達成。今回はサウンドメイキング、ついに公開された"アリス"モチーフの新衣装について、ディレクターの田中紘治を交えてミシェルを徹底解剖してみた。(interview:西門徹)
サイケデリックトランスには人を狂わせる魅力がある
──まずはミシェルに関わるようになった経緯を教えてください。
タニヤマヒロアキ(以下、タニヤマ):サウンドプロデュースのタニヤマです。もともと田中さんのプロジェクトに楽曲提供でずっと参加してまして、その流れでわりと早い時期に「新プロジェクト始めるかも。サイケデリックトランスで」とやんわり聞いていました。で、ある日、「新プロジェクトの相談があるので」的なノリで呼び出されて事務所に伺ったら、なぜかカメラマンさんがいてインタビューを受けて、気づけばサウンドプロデューサーという流れですね(笑)。嵌められました(笑)。
田中紘治(以下、田中):俺はタニヤマさんの人生を台無しにしてでも一緒にやりたいんですよ。
Tomohiko Togashi(以下、Togashi):普段は個人で楽曲制作やDJをしております。もともとミシェルの「Mo' Strain」のDubscribeさんによるリミックスを見かけた時にお名前を知りました。サイケデリックトランスアイドルという文字列のインパクトが凄すぎてビックリしたのを覚えています。その後、2019年の頭に本格的に音楽でキャリアを積む決心をしてから、友人のプロデューサーから田中さんをご紹介いただき、「Spider Line」から関わらせていただきました。
田中:去年ケンカイヨシさんから、Togashiくんを紹介したい!って連絡があって。あの辺の作家さんや歌い手さんは面白そうな人脈はどんどん繋げとこ、みたいなノリありますよね。自分の損得関係ないっていうか。
Togashi:ミシェルの名前が出てきた時は「えっ、繋がりあるの!? スゲーー!」みたいな反応をしましたね(笑)。
田中:ところで名前が漢字とカタカナとアルファベットで見づらいでしょ。
Tomohiko Togashi
──大丈夫です。なぜアイドルにサイケデリックトランスを唄わせちゃったんですか。
田中:人を狂わせる魅力があるから。クラブイベントを打って遊んでばかりいた頃に、デビュー直後のSystem Fを「キラキラハウスだよ」って聴かされて、エピックトランスっていうらしいって遡ってたらHallucinogenに辿り着いてサイケデリックトランスにどっぷり。ハウステクノ系に比べて若い女の子のハマり方がイっちゃってて、今アイドルでやったらヤバくなるんじゃないかと思いました。
──アイドルがやるサイケデリックトランスと聞いて、どう思いましたか。
Togashi:想像つかなかったです。サイケデリックトランスってボーカルがある曲も少ないし、あってもポップスほど抑揚はない。でも聴いたらすべて払拭されました。ちゃんと化学反応の起きる、チャレンジングなことをしているんだと。田中さんの柔軟な発想と、タニヤマさんが生み出した楽曲の数々は自分の凝り固まったトランス観を壊してくれています。関わるごとに自身の変化や進化を実感しているので、今では掛け替えのないプロジェクトです。
タニヤマ:テクノとかハウスは好きで聴いていたんですけど、トランスは全く知らなくて、なので最初は具体的なイメージが全く浮かばなかったです。今思えばなぜ僕だったのか(笑)。田中さんのセンスというか勘、怖すぎます。
田中:曲に取り掛かって半年間は苦戦しましたよね。僕がやりたいのはジャズとかロックとかを経てエレクトロミュージックに辿り着いたRaja Ramのあの感じだから、ひとまずパソコンで作るのをやめて人力で始めようってお願いして(笑)。パーカッショニストのシマダボーイさんとか、数名のプレイヤーさんに生楽器で参加してもらってトランスの原点を掴む作業から入った。こんな苦行はタニヤマさんじゃないと頓挫してたと思う。
田中紘治