人間交差点のようなコンピレーション
──お互い途中経過を聴かせ合ったりはしたんですか?
植木:横チンの曲は早かったから聴いていたよね。
横山:僕は曲ができあがっていたのを収録したいと思ってみんなに話をしたから、早い段階で聴いてもらっていました。言い出しっぺだし、最初にどんな方向でやっているか聴いてもらったほうが分かりやすいと思ったので。3人は打ち合わせ後から曲を作り始めたという感じですね。
──4人で1曲作ろうというのはなかったんですか?
横山:みんなで何かを作るというのはなかったですね。無理やり企画みたいにして曲を作るよりも、それぞれやりたいことを見せる。それで、またそれぞれの道に帰っていけばいいだけの話。この10年間の音楽のやり方、人生のやり方、いろんな経験を経て培ってきたものを確認するための通過点じゃないですけど、ここでいろいろ確認をして、またこの先の10年をそれぞれのフィールドで生きていくという。そんな人間交差点のようなコンピレーション。ずっとリリースできてなかったという星野くんが音源を作るきっかけになれたなら、声をかけて良かったと思えるし。
植木:60曲も作ってたんでしょ? すごいね。
星野:ダジャレだけで作った失恋ソングとか、2分半の曲で早口なんだけど唄い切るとビタミンの効能を全部覚えられる曲とか。歌詞に医者の要素が増えてきたね。
──それも聴いてみたいですね。
植木:星野くんはこの10年間何してきたの?
星野:7年前ぐらいに医者をちゃんとやろうと思って、毎日病院で働くようになったんです。
横山:いとうせいこうさんと本(※2018年2月に発売された『ラブという薬』)を出したり、執筆業も盛んで。
──とても読み応えのある本でした。
星野:書き物は増えましたね。webコラムとかもやらせてもらってます。だからそのぶん音源を出すという動きがなかなかできなかったんです。書き物とかは病院の部屋でできるし、部屋にはギターも置いてあるんだけど、音源をリリースするというモードはまた違うじゃないですか。1人で完結できるものではないから、すごくいい機会でした。
──それぞれ曲作りはどなたかにサポートで入ってもらったんですか?
植木:タカユキカトーくんという優れたエンジニアと作業をしています。僕が言ったものを形にしてくれる人。あと、つるうちはなちゃん夫妻。つるうちはなちゃんは僕の音楽人生で欠かすことができなくて、「亜熱帯気候」で参加してもらってます。素晴らしいメンバーに恵まれているなと思いました。
横山:音符的なクオリティが高いし、多層的な音楽だなと思いましたよ。
植木:自分が作るメロディに自分の技量が追いつかなくて。でもやりたいと思うことが多いんですよ。
横山:今は周りの体制と曲の相性がいいんじゃないかと思います。理解者がちゃんと仕上げてくれる感じがありましたね。
──星野さんはコーラスに青木拓磨さんを迎えて。
星野:青木さんとは発声の話をよくしていたから、コーラスをやるなら青木さんがいいなと思っていたんです。他にもトランペット奏者の三浦千明さんやフラメンコ・ギタリストの今泉仁誠さんと一緒に作っています。今回の作品は僕と今泉仁誠さんはギターだから、リズム隊がいないんです。そこを割り切ってやってみるのも面白いんじゃないかと思っています。
──横山さんは?
横山:僕はドラムに山田タケシ(テルスター)だけだね。
星野:ドラムを山田さんにお願いするのは必須なんですね。
横山:やっぱり話が早いよね。テルスターで20年以上一緒にやってるから、意思疎通がしやすい。
町田:僕は全部1人で。機材を覚えるところから始めたけれど、やっぱりいちからやると時間がかかりますね。最初から誰かにお願いしたほうが早かったなと思います。
──これからもそのやり方でやってみようとは?
町田:もういいかな(笑)。面白かったですけど。
──じゃあ、貴重な音源になりますね。
町田:宅録とは言え、結果的にバンド・サウンドっぽいものを作ったので、それなら生バンドでやったほうが頭の中にあるものは表現できたかなと思います。でも、やってみないと分からないから、ひとつの方向性としてやれたのはいいかな。
──これが12月31日にリリースされるんですよね。
横山:通販のみで12月から予約を受けて、年内に届くようにしたいと思っています。
次の作品を作る自信になった
──SNSでは遊星横町でCDをリリースするという告知をしていましたが、お客さんから反応ってありました?
植木:「いいね」がたくさん付きましたよ。普段のツイートでは全然付かないのに(笑)。
横山:僕も反応ありました。マッチーは何か言われた?
町田:「横チンさんが音楽活動をやる気になってくれて嬉しいんだけど、なんでテルスターじゃないんですか?」とは言われた(笑)。
横山:そこはね。もう少しお待ちください。
──遊星横町を覚えてくれていた方がたくさんいらっしゃったんですね。
町田:「当時読んでました。懐かしいです」ってリプライもありましたよ。
横山:自分たちの活動を楽しみにしてくれている人がいるというのはありがたいし、それが今回分かったから、次の作品を作っていく自信になりますね。
──次の作品というのは、遊星横町のですか!?
横山:それぞれの活動の、ですね。
星野:コンピの2枚目の話だったら驚くよね(笑)。
横山:コンピで次を出すなら、また10年後ですね。もしかしたら、この先の10年でいろいろなことを経験して、全く違う音楽をやっているかもしれないし、楽しみですね。ここからまたそれぞれの人生が動いて。
植木:今を大事にってよく言うけど、昔はケッと思ったことが最近すごく沁みてくるんだよね。
横山:年を取ると、植木くんもこういうことを言うようになるんですよ(笑)。
──ところで、今回遊星横町でCDをリリースするという話を聞いて、もしかしたら必要になるかもしれないと思い、みなさんがヴィジュアル系バンドとして池袋サイバーで行なった時のライブ音源を探したんですよ。聴きました?
星野:聴いてないです。
──何日にもわたって家中を探したのに?(笑)
星野:送られてきたファイルのタイトルが「壊-BREAK-」と書いてあって、いろいろ思い出されて怖くて聴けてない。酒呑みながらじゃないと聴けない(笑)。
──ライブ中もご丁寧に「壊れると書いて『BREAK』という曲です」と曲紹介していました。
植木:僕は聴きましたよ。あのライブの時にキャーキャー言ってた人たちはどこに行っちゃったんだろうね(笑)。
──たくさんのお客さんが見に来てくださいましたよね。この音源が2月26日にネイキッドロフトで行なわれるイベントで聴けるのか、何かしらは考えているそうですが。
横山:イベントに参加してくれた方にライブの音源をプレゼントでもいいかなと思ってます。
町田:おみやげがあったほうが嬉しいですからね。
──ネイキッドロフトでのイベントはどんな内容で考えているんですか?
横山:トークと、アコースティックのライブをやる感じにしようと思っています。
星野:青木さんとか呼んでもいいですか?
横山:いいですよ。ゲストを連れてきたり自由にやりましょうよ。