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トップレビュー遊星横町(植木雄人×星野概念×横山マサアキ×町田直隆)『激戦区2020 〜わたしたちの盤です〜』- それぞれが音楽と向き合った10年を経て「今」を詰め込んだ1枚

遊星横町(植木雄人×星野概念×横山マサアキ×町田直隆)『激戦区2020 〜わたしたちの盤です〜』- それぞれが音楽と向き合った10年を経て「今」を詰め込んだ1枚

2020.01.06   MUSIC | CD

YSYC RECORDS YSYC-001
価格:¥1,500+税
2019年12月31日(火)発売
【収録曲】
1. 摩天楼(植木雄人)
2. 平熱大陸(星野概念)
3. オーライ/サティスファイ(横山マサアキ)
4. リバース・エッジ(町田直隆)
5. 亜熱帯気候(植木雄人)
6. 湿地帯(星野概念)
7. 粋にゴーナウ(横山マサアキ)
8. フライウィズミー(町田直隆)
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Live info.
遊星横町トーク&ライブ
“激戦区2020”〜わたしたちのライブです〜
出演:
植木雄人[ダブルオーテレサ]
星野概念[星野概念実験室、ex.ストライカーズ]
横山マサアキ[テルスター]
町田直隆[moke(s)、ex.BUNGEE JUMP FESTIVAL]
2020年2月26日(水)新宿ネイキッドロフト
OPEN 19:00 / START 19:30
前売¥2,000 / 当日¥2,500(飲食代別・1オーダー¥500以上必要となります)
※来場者全員にCD『2009.09.14 遊星横町デビューライブ in 池袋サイバー」をプレゼント
※チケット予約はイープラス、yuseiyokocho@yahoo.co.jpまたは各アーティストまで

2020年2月29日(土)大阪ポテト・キッド
詳細未定

〈遊星横町〉って何? という方へ

 2019年12月号から2カ月にわたって掲載をすることになった〈遊星横町〉。先月号で初めて〈遊星横町〉という名前を目にした皆様も多かったと思うので、ここで改めて〈遊星横町〉をおさらいしたい。

 〈遊星横町〉とは、植木雄人(当時・植木遊人)、ストライカーズの星野概念、テルスターの横山マサアキ、町田直隆の4人が集結し、2009年の1月からRooftopで連載を始めたコラムのタイトル。第1回目は年明けならではの企画として書き初めを行ない、その後はチョコレートを作ったり、公園での写生、スケートも行なった。得意不得意もあり、「やっぱりこの4人が集まっているのならバンドを組みたい!」という話になったのは2009年の7月ごろだっただろうか。そこで、自分たちがやっているバンドとは違う系統の音楽をやってみようということで、4人が初めてのヴィジュアル系バンドを結成した。それぞれ10年を超えるバンド歴がありながらも未知の領域に足を踏み入れ、ヴィジュアル系バンドについて勉強をし、このバンドのための楽曲を新たに作り、スタジオに入り、時にメイクの練習もした。そして、池袋にあるライブハウスのブッキング・ライブに出演させていただき、初ライブを行なった。多くのお客さんが足を運んでくださり、初めてのヴィジュアル系でのライブは成功したように思う。

 コラムは1年で終了となったが、10年後の2019年、「遊星横町でCDリリース決定!」というニュースを目にし、どんな作品を作っているのかとても興味があった。ヴィジュアル系バンドの続きか、それとも4人で曲作りを行なったのかとも思っていたが、届いたのは4人それぞれが真剣に音楽と向き合って作った2曲ずつが挿入された作品だった。

四者四様の曲に注目

 せっかくなので、このアルバムを1曲ずつ紐解いてみたいと思う。

 CDの幕開けは植木雄人の「摩天楼」。植木がボーカル&ギターを務めるダブルオーテレサを彷彿とさせるような、青春刹那系の楽曲。〈電影と少年CQ〉というアイドルに提供した曲で、タイトルと歌詞が違うセルフカバーだそう。打ち込みを多用したエレクトロニカ風な楽曲が心を躍らせる。

 2曲目は星野概念の「平熱大陸」。現在は精神科医として勤務しており、先月のインタビュー時に他の3人から、「問診されているみたいな曲」だと言われていたこの楽曲。Aメロの「適度な体温保ち続けること 手洗いうがいは当たり前のこと 休養や栄養がとても大切なこと」という歌詞を、美しいトランペットとギターの音色に乗せてコーラスとの掛け合いを楽しみながら流麗に唄い上げる。平熱の中に、グッと熱が上がる瞬間を感じるような面白い楽曲だ。

 3曲目は横山マサアキの「オーライ/サティスファイ」。横山がボーカル&ベースを務めるテルスターのようなどこかひねくれた楽曲は陰を潜め、誤解を恐れずに言うなら、陽気なおじさんの部分が顔を出しているとでも言おうか。歌詞に言葉遊びも取り入れ、ソロならではの作品となった。

 4曲目は町田直隆の「リバース・エッジ」。このアルバムの中でも群を抜く歌詞の長さ。手書きの歌詞カードには細かい文字で歌詞がビッシリ書かれ、曲に込めた彼の熱い思いを窺い知ることができる。日頃抱えている矛盾や抗えない現実に何とか立ち向かっていこうとする歌詞。これをコツコツと宅録で1人で作り上げたそう。きっとリリースして多くの人に聴いてもらうことで、彼の思いは昇華されるのではないかと思う。

 折返して、5曲目は「亜熱帯気候」(植木曲)。ギターロック・サウンドを基調とした植木の王道作品。社会に出て壁にぶつかりながらも「それでもなお!」と拳を強く握りしめながら進んでいくことを想像させる歌詞。いつまでも満たされていないが、それこそが充実している状態ではないかと、そんなことを考えさせる楽曲。

 6曲目は「湿地帯」(星野曲)。「もともとコーラスが好きだった」と先月のインタビューで星野が言っていたが、〈星野概念実験室〉というコーラス・グループも組むほどで、この曲ではギター、ラップスチール、パーカッションをバックに青木拓磨と三浦千明をボーカルに迎えて3人で美しいハーモニーを聴かせていた。

 7曲目は「粋にゴーナウ」(横山曲)。疾走感があるこの曲は、横山が初めてバンジョーを使用して作られ、軽快に仕上がっている。

 ラストは「フライウィズミー」(町田曲)。まさに町田節ともいえるドラマティックなメロディで、心をぎゅっと掴まれるエモーショナルな曲だ。

音楽の向き合い方はそれぞれ

 コラムを連載していた当時30代だったメンバーは全員40代に突入している。変わらず毎週のようにライブを行なうなど精力的に音楽活動をしている人もいれば、仕事をしながら活動をしている人もいるし、自分のペースとタイミングで活動をしている人もいる。それぞれの人生があって、それぞれの音楽への向き合い方がある。しかし、ライブの回数こそ減っていたメンバーも、今も変わらず曲の制作を行ないながら音楽とともに過ごしていたようだ。そこで「遊星横町でCDをリリースしたい」と横山が声をあげたタイミングでメンバーが集まり、このような形で作品が完成した。

 先月のインタビュー中に星野が「今回横チン(横山)さんに声をかけてもらった時に、久々に音源が出せるというワクワク感がすごくありました」と言っていたように、4人のタイミングが合って作り上げられた。お互いを良い意味でライバル視し、それぞれが自分の曲を磨き上げ、今できる最高のものを提示しているのだ。4人がこれまでに生きてきた経験と、それぞれのスタイルで音楽と向き合ってきた「今」を切り取った1枚になっている。

東京・大阪でのライブが決定

 12月31日に発売される今作のリリース記念イベントとして、2月26日(水)には新宿にあるネイキッドロフトで『遊星横町トーク&ライブ“激戦区2020”〜わたしたちのライブです〜』の開催が決定している。ライブでは、ゲストを呼んだりしながらワイワイと賑やかに、そして和やかに行なわれるに違いない。また当日来場者には、遊星横町がヴィジュアル系バンドでライブを行なった際の音源がプレゼントされるというからただ事ではない。怖いものみたさで、ぜひイベントに足を運んで音源を受け取ってほしい。

 そして2月29日(土)には大阪にあるダイニングバー・ポテトキッドでもライブが決定しているそう。ここ最近はライブ活動を精力的に行なえていなかったメンバーも多いので、関西方面でのライブは久しぶり。お客さんもぜひ楽しみにしていてほしい。

 この作品が出たことで、ペースを変えてガツガツと活動をしていくということはなさそうだし、きっとリリース・イベントを終えたら、またこれまでの生活に戻っていくのだろう。

 聴いている人の平熱が少しだけ上がるような、心を揺らすこの作品が1人でも多くの人に届くことを願ってこのテキストを終わりにしよう。(text:やまだともこ)

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