怪談と猥談を自在に操るエロと恐怖の伝道師・住倉カオス。ロフト各店で開催される、やたら怖かったりやたらエロかったりするトークライブの中心にはいつもこの男がいるのだ![interview:LOFT9 Shibuya:齋藤航]
杉作さんとの繋がり
──ロフトとの関わりのきっかけは?
住倉:杉作J太郎さんですね。杉作さんとの出会いは自分がハタチの頃からなので、もう30年近いんですよ。当時勤めていた東芝EMIの上司が杉作さんの親友だったんです。一緒にパチンコのビデオを作っていました。それ以降、やたら街中でばったり会うことが続いて(笑)。富久町の頃のロフトプラスワンのイベントに行ったのがロフトとの関わりの始まりですね。
──ボンクラ学園ですね!
住倉:それから『エヴァンゲリオン』のイベントとか、『あいぼん祭り』とか、杉作さんのイベントに顔を出して。杉作さんが映画を撮ることになって『男の墓場プロダクション』ができたんですが、掟ポルシェ。さんたちのようなオモテの演者というより、映像撮影などの裏方として関わっている意識が強いですね。最新の『チョコレート・デリンジャー』では撮影監督として携わってます。
──チョコデリは当時のプラスワン関係者も誘われて関わっているんですよね。自分は石神井公園の撮影に間に合ったので出演させていただいているんですが、石崎(当時ロフトプラスワン店長)は寝坊したので、昼休憩だけ参加して豚汁を食べて帰ったという(笑)。
猥談と怪談
──住倉さんメインのイベントといえば最初は猥談のイメージでした。
住倉:ですねぇ。モダンフリークスと組んでやった一連の。『下-1グランプリ』から始まって、『テレフォンセックス選手権』、『セックス・バレンタイン』とか『セックス天の川』とか(笑)。でも当時から会社の仕事では心霊系を扱っていて、DVDを出してました。ロフトプラスワンの新耳袋にも出させてもらったりしていて、ギンティ小林の『新耳袋殴り込み』とかにも関わってましたから。だから軸は猥談と心霊と(男の)墓場ですね。
──ストレートに『墓場』っていっちゃうと心霊系とごっちゃになりますね(笑)。
住倉:ややこしいね(笑)。まぁ自主イベントとなると猥談と怪談ですね。当時勤めていた映像会社の取材で行った殺人現場で、不可解な目にあったししだったりとか紹介してました。一時期、『不思議SNS』というオカルトのSNSをやっていたことがあって、平山夢明さんをゲストにイベントをやったこともありました。その頃から恐怖系のイベントをやり始めました。最初は映像や写真を見せるいわゆる心霊系のイベントでしたね。でも最近は語り中心の怪談イベントがブームですよね。
──住倉さんの怪談イベントはルポルタージュ色が強いイメージです。やっぱり現地に赴いていたり、取材に基づいた話しが聞けるイメージです。
住倉:怪談のカルチャーってもちろん昔からあるものなんですけど、稲川淳二さんのような芸能人による語り、民俗学的なアプローチのもの、あるいは文芸系…古くは小泉八雲だったり、そして、よりリアルに実際の事件なども取り上げるルポルタージュものと多様化してますね。
──怪談イベントは最近本当に増えていますね。昔は怪談のトークライブといえば『新耳袋』で、あとは妖怪を取り上げたイベントもありました。ちょっと前に都市伝説系のイベントがとても流行った時期があったんですが、今の怪談イベントはそういった要素を全てを取り込んでいる印象があります。
住倉:昔はそれこそ雪女みたいな化け猫みたいなものだけが怪談だったんだけど、今は…もう有名な「ベッドの下にナタを持った男が…」のようなヒトコワも都市伝説として語られている話しも怪談になってきましたね。
怪談★語ルシス
──今度の『住倉カオスの怪談★語ルシスNight』はどういったきっかけで?
住倉:Amazonプライムの『Channel恐怖』というところで始まったんですよ。怪談の集まりって、誰かが話し始めると「あっ、そういうのなら俺もある!」みたいに連鎖していく面白さがあるんですよね。それを見せるっていうのが、ありそうでなかった。尺が見えないっていうのもあるんだろうけどね。ただこれは話しのストックと、その場で語る技量が求められるのでハードルが高いんです。イベントや取材などで知り合った信頼できる人たちのおかげで実現できるようになりました。
──ほかのイベントではメイン級の人たち揃いですよね。語り手だけで10名以上ですよ!
住倉:僕のイベントはいつも詰め込みすぎちゃうんですよ…。杉作さんの影響ですね(笑)。サービス精神は墓場イズム。
──ひとつのイベントで呼ぶ人数じゃないだろ!っていうあたりの詰め込み感は完全にそうですね(笑)。アベンジャーズ感というか。住倉さんの怪談イベントによく出られる方も多いんですが、初めての方もおられますよね。
住倉:田中俊行さんとApsu Shuseiさんですね。ふたりともデザインがメインすよね。音楽とかデザインとか怪談とか、彼らの感性からすると垣根がない仕事をされています。松原タニシさんもそうなんですが、感性が新しいんですね。彼らの登場で『怪談』というジャンルの幅がぐっと広がったように思います。先日のイベントにも出てもらった村上ロックさんはスリラーナイトという怪談BARの専属怪談師で、仕事として毎日怪談を話しているプロ中のプロ。踏んだ場数だとダントツでしょうね。将棋で言えば、坂田三吉みたいなね。それぞれ個性がすごくあって。怪談って、やっぱり語る人の人間性なんですよね。
──例えば、同じ内容の話しをしていても語り手によって大きく変わりますよね。これからは落語でいう『談志の芝浜』のように、誰が何の噺を語るかによってお客さんが来るようになるかもしれませんね。
住倉:そういう意味では今度のイベントは詰め込みすぎなところがあって(笑)、たくさんの語り手が一気に見られるからショーケース的な見方もできるかもしれないですね。「この人の語りが自分に合うな」とか見つけてもらえればいいですね。僕はホストのつもりだったんだけど、今川宇宙さんが立会人になってくれましたし、せっかくだからプレイヤー側に回ろうかなと。僕を入れて12名になるので、6名ずつシャッフルしてフリースタイルでやってみようかと思っています。
──出演者の顔ぶれで質は完全に保証されているのに、何の話しが飛び出すのかわからないっていうのは凄いですね。楽しみです。そして怪談の次には猥談のイベントも!
住倉:そう、11月8日に新大久保のNaked Loft にて、日本猥談協会の公式イベント『猥談サロン・カオス』で範田紗々さんをお呼びします。これは絶対に面白いし、10月11日のLOFT9 Shibuyaのオールナイト怪談イベントの翌日の10月12日というか、その夜にね(笑)。Dr.Kobaさんという泌尿器科の先生と、カリスマ熟女女優の伊織涼子さんと一緒に『大人の性教育再入門』が行われます。妃月るいちゃんも生徒として参加してくれます。間違ったまま大人になってしまった性の知識を、エッチに楽しく正していこうというイベントです!
──…しかし凄い振り幅ですね。
住倉:僕の中では表裏一体なんですよね。どちらが欠けてもうまくいかない気がするんです。人生が終わってからのものが怪談だとしたら、人生が始まるのが猥談。だから【人生は猥談に始まり、怪談に終わる】んです。"エロスとタナトス"って言ったほうがかっこいいんだけどね(笑)。