細部までこだわりを感じることのできる美しい内装やお店の方たちとの何気ない会話の楽しさ、お店でしか食べられない美味しいメニューたち...。純喫茶の魅力はいくつもありますが、それぞれの生活には都合があって、思い立った時に訪れることができないこともありますよね? 今回はそんなあなたに届けたい、ご自宅でも純喫茶のメニューを楽しめるレシピ本『純喫茶レシピ』の発売記念として8月31日(土)阿佐ヶ谷ロフトAにて開催をするイベントに先立ち、"純喫茶コレクション"でお馴染み東京喫茶店研究所二代目所長の難波里奈さん(『純喫茶レシピ』監修)、そして著者である料理研究家の髙山かづえさんにお話しをうかがいました。[interview:おくはらしおり(阿佐ヶ谷ロフトA)]
純喫茶との出会い
──いつから純喫茶へ通うようになったんでしょうか? きっかけなどはございますか?
髙山かづえ(以下、髙山):純喫茶には若かりし頃から時折、行ってはいましたが、明確に興味を持ち始めたのはこのお仕事を始めた7年前くらいからです。純喫茶のお店を取材してレシピを再現するお仕事をいくつかさせていただいたことがあり、なんの変哲も無いように見えていたメニューに、実は並ならぬこだわりの数々があったことを知ってからでした。食べるとなんだか美味しい、の「なんだか」には、雰囲気だけではなく、きちんと美味しさのポイントがありました。それは、お店ごとに異なり、どれも真似をしたい! と思うものばかりでした。私は家庭料理、すなわち家で、日常で簡単に作るお料理を伝えていきたいと思っています。純喫茶のキッチンやパントリーは、それほど広さがないところが多く、しかも調理スタッフがたくさんいるわけではありません。そんな環境で手早く、美味しいお料理を提供しなければならないというのが、家庭料理と通じるものがあり、純喫茶のレシピに興味を持ち始めました。そんなきっかけから、それまではコーヒーなどの飲み物だけを注文することが多かったのですが、食事も楽しむようになりました。
難波里奈(以下、難波):十数年前からです。もともと珈琲やひと休みする時間は好きでしたが、ある時期に、昭和の頃に使用されていた家具や雑貨、衣服などに興味をもち、コレクションするようになりました。昭和30~40年代の古着を着るときは少し特別な気分で、その服が似合うというか、しっくりくるのが純喫茶で、その安心感にますます夢中になっていきました。
純喫茶の魅力
──純喫茶の魅力を一言で表現するとなんでしょう?
髙山:「ストーリーを体験できること」です。空間、マスター、メニュー、全てにおいてストーリーがあり、行けば自分がそれを体験できること。ネットで買う、チェーン店へ行く、とは異なり、お店まで行く道のり、お店について中に入る、メニューをみてなにを食べるか決める、接客をうける、その空間で食事をする、と全てが自分の体験となり、思い出となる。
難波:「そこにしかない空間」でしょうか。個人経営のお店が多いので、店主が100人いれば、内装や外観、メニューの個性も100通り。だからこそ、何軒通っても飽きることなく、また同じ店でももっともっと知りたくなってしまうのです。
前回開催「純喫茶マスター大集会」
──当店阿佐ヶ谷ロフトAにて大盛況だった「純喫茶マスター大集会」。開催をしてみていかがでしたでしょうか?
難波:普段、自分はいろいろな純喫茶をめぐる日々を過ごしていますが、そこでよく耳にするのが、「他のお店も気になるけれど、営業時間や定休日が一緒だからなかなか行くことができない」ということでした。そこで、イベントのお話を頂いた時に、「思い切ってお店の方々を一同に集めてみたら楽しそうだ」と思い付き、お声掛けしたところ、皆さんふたつ返事でご快諾下さいました。イベント後も、お互いのお店を行き来するなど、交流が続いていることがなによりも嬉しいです。
──当日限定として各純喫茶の名物であるお食事やお飲み物を再現してみたのですが…。
難波:私は一口も食べられなかったのですが(笑)、お店の方々も喜んでいましたし、お客さんたちもロフトで味わって、実際のお店で食べてみる、という2度美味しい楽しみ方が出来たのではないでしょうか?
──どれも宝物のような時間でしたが、記憶に残るマスターのエピソードはございますか?
難波:皆さんがおっしゃっていた、長くお店を続けるコツとして、「嫌なことは翌日に持ち越さない」というのは、とても難しいですが人生において大事なことだなとしみじみ感じました。私もマスターたちの心意気にたどり着けるよう努力します(笑)。
書籍「純喫茶レシピ」について
──今回はどんな内容になりそうですか?
髙山:純喫茶のメニューはいわゆる定番料理が多いです。カレーにナポリタンにサンドイッチ、それらを家庭でできる一工夫を加えることで、純喫茶のような美味しい味に仕上げています。
──本を作る中で実際に純喫茶のレシピを再現したと思うのですが、難しかったことはございますか?
髙山:純喫茶のレシピといっても、本当に千差万別で、どのお店をイメージするかに悩みました。家庭料理になりすぎても、レストランになってもいけない、その落とし所をどうするかが一番悩みました。なんとなくこのお店、とイメージしてお店のポイントを落とし込んだレシピものもあれば、マスターから習った作り方のポイントをより家庭的に落とし込む、という逆のものもあります。
──自宅でも作れちゃうお気に入りのレシピなどございますか?
髙山:私が担当したメニューはどれもおうちで作れます! 自宅をスタジオにして撮影や打合せをしている関係で、来客が多いので、前日に作り置けるコーヒーゼリーやプリンはよく作ります。あと、スパゲティもパスタを茹でる時多めに茹でて、翌日ナポリタンを楽しんでおります。ナポリタンのパスタは一晩おいた方が美味しいので。
純喫茶ファンの方へ一言
──イベントに向けての意気込みなどございましたら是非お願い致します!
髙山:今回の本は、東京喫茶店研究所二代目所長の難波理奈さんが監修してくださって実現した本です。純喫茶レシピに落とし込む際にいただいたアドバイスや、撮影時の様子など、ここでしか聞けない、この本が出来上がったストーリーもお伝えできたらと思っています!
難波:今回は、純喫茶を好きになる→自宅でもメニューなどを再現してみる→美味しく出来て嬉しい! →ますますお店が恋しくなる…という気持ちになってもらえるイベントにしたいです。料理家、コラムニスト、マスター、純喫茶愛好家と立ち位置のまったく違った4人でのトークとなりますので、私も予想がつきませんが、楽しい時間を約束しますので、ぜひ遊びにいらしてください!