やれるだけのことを悔いなくやっていきたい
──今年はロフトでのスペシャル・イベントの他にも、『HEART OF GOLD』と題された“LIVE+STORY PERFORMANCE”を10月に開催するそうですね。
JILL:女優の原田美枝子さんをストーリーテラーとしてお迎えして、イラストレーターの左右田薫さんにヴィジュアル面をお願いしたパフォーマンスなんです。もともと映画館だった有楽町のヒューリックホールという会場で、映画を彷彿とさせるライブをやりたいという発想から企画を立ち上げました。結成20周年の時に東京キネマ倶楽部でライブをやりましたが、いつもと違う場所でいつもとは違うライブをやるのは必要だなと思ったんです。ゲストを呼んでセッションをするとかではなく、いつもと違う世界を見せるライブは観るほうも想像がつかなくて面白いんじゃないかと思って。
──原田さんとは凌さんを介して知り合った感じですか。
JILL:そうですね。私は20代前半の頃から付き合いがあるんですけど、一度は一緒にステージに立ちたいと長いあいだ熱望していたんです。美枝子さんはすごくクールでワイルドな方で、現場ではいい作品にするために時にはケンカもしてきたというスピリットのある女優さんなんです。歳も向こうがひとつ上なだけで世代も一緒だし、今の時代に投げかけができるような舞台を一緒にできたらいいなと思ってたんです。それが今回やっと、40年越しの夢が叶うことになったので嬉しいですね。
──PERSONZはそうやってキャリアに胡坐をかくことなく、常に新たなことにトライしている印象がありますね。
JILL:もちろんバジェットや規模感の都合で実現できないこともあるし、たまたま条件の合う案件にやってみたかったアイディアが合致したりするんです。ただそういう新たな試みをやっていかないと面白くないし、もちろんPERSONZが軸としてありつつ、音楽家の人生としてもっといろんなことをやってもいいじゃないかと思うんですよね。このあいだ本田君が初めてソロ・アルバムを出したのもそうだし、渡邊君が岸君とインスト・ユニットを始めるのも、藤田君が主体的にユニットを組むのもすごくいいことだと思うんです。どれだけ面白いことをやれるかはいつも考えてるし、もうこの歳になると、突き詰めていけば好きなことをやるしかないってことになるんですよ。特に制約もないですしね。
──このペースで行くと、5年後の40周年はすぐにやって来てしまうでしょうね。
渡邉:どうですかねぇ。さすがにそろそろ具合が悪くなる人が出てきてもおかしくないですけど…(笑)。
JILL:5年経つと全員が還暦を超しますよね。そこまでバンドを持続させなくちゃいけないのは大きな課題だし、みんな元気で生きていられたらいいなと思います(笑)。30周年の時の武道館はもう一度叶えたい夢だっし、自分たちにとっても大きな自信に繋がったけど、ここまで来ると今後叶えるべき夢に規模感はあまり関係ない気がするんです。私たちより上の世代の方々の訃報を聞くたびにやれなかったことを心残りにするようなことだけはないようにしたいと思うし、この先の時間は限られてるし、やれるだけのことを悔いなくやっていきたいですね。あと5年も経てば音楽を聴く環境もまた随分と変わっていくはずなので、どうなるかわかりませんけど。
──対価を払わなくても音楽を聴ける時代になってきてしまいましたからね。
JILL:PERSONZのファンはまだCDやDVDに価値を見出す人が多いけど、若い人たちはストリーミングで充分でしょうからね。ただ最近、PERSONZのライブに若い人が増えたんです。お父さんと来たのかな? って感じでもないんですよ。もちろん嬉しいんだけど、理由がよくわからなくて。長くやり続けていると新しく聴いてくれる人が増えるのかな? とか思ってるんですけど。
──6月21日のロフトも若い人たちにぜひ観ていただきたいですね。キャリア35年を誇るバンドのしなやかな底力を堪能できるはずなので。
渡邉:結成35周年を迎えたこの日、この場所でPERSONZが生まれたことを一緒にお祝いして、リラックスして楽しんでもらえたら嬉しいですね。
JILL:とにかく楽しい祭りですからね。各セクションとも力は入るでしょうけど、肩の力が抜けた楽しい祭りだと思って来てくださればいいんじゃないかと。もてなす準備はバッチリですので(笑)。