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INTERVIEW

トップインタビューキノコホテル「創業12周年にして魅惑のディスコティーク・ラウンジ竣工! グルーヴィーなリズムが躍動する悦楽乱舞に狂喜せよ!」

創業12周年にして魅惑のディスコティーク・ラウンジ竣工!
グルーヴィーなリズムが躍動する悦楽乱舞に狂喜せよ!

2019.06.03

リード曲でファズという武器を使わなかった理由

──今日は珍しく支配人以外の従業員のみなさんがお揃いなので、お一人ずつ今回のレコーディングについて伺いたいのですが。ケメさんはいかがでしたか。

ケメ:私はいつものやり方しか知らなかったし、人に教わったこともあまりなかったので、自分の凝り固まった弾き方や録り方を島崎さんにぶっ壊してもらったところはありますね。もともとギターの手癖みたいなものが強くあって、それはもちろん良い部分でもあるんですけど、「もっとこんなふうに弾くといいよ」とかいろいろと教えてもらえたのが良かったです。デモの段階から手法を変えたことで今までとは違う楽曲が揃ったのもバンドとしては良かったと思うし。

──島崎さんはキーボード奏者でもあるんですよね?

マリアンヌ:プレイヤーとしてはキーボードなんだけど、ギターに対しても的確なアドバイスをしてくれました。エンジニアの清水さんもドラマーでありながら自らブースに出向いてギターの手ほどきをしてくれたりして。ギターに関して言えば、今回はとにかくケメさんにはカッティング地獄を味わっていただきました(笑)。

──確かに「ヌード」と「愛の泡」では壮絶なカッティング地獄が聴けますね(笑)。

ケメ:私にはワウの癖みたいなのもあって、踏み方が普通の人と逆だったので、いつもと逆にペダルを置いて踏んでみたんですよ。

マリアンヌ:そういう試行錯誤はギターが一番多かったんじゃないですかね。今回はケメさんの新境地をお見せしたかったし、ケメさんと言えばファズだけど、それだけで語られがちなのがワタクシは不満なの。もっといろんなことができるテクニシャンであることを彼女には体現してほしかったし、それをキノコホテルの作品にも反映させたかったんです。

──本作でもケメさんのシビれるギター・ソロは随所で聴けますが、これまでのように飛び道具的に入るのではなく、あくまで楽曲の中の不可欠なパーツとして組み込まれている印象を受けますね。

ケメ:今回の推し曲である「ヌード」ではファズを一切使わなかったんです。ストリングスやシンセなどですでに華やかなので、ファズがなくても成立しているんですよね。

マリアンヌ:キノコホテルを単なるガレージ・バンドだと思っている人はどう感じるかわからないけど、ワタクシたちが目指しているのはもはやそこではないので。

──従来のキノコホテルのパブリック・イメージであるガレージやサイケデリックの要素を、今回は意識的に薄めている印象は受けますね。

マリアンヌ:そこは意図してやりました。いつものキノコを望む人もいるでしょうけど、こちらは単純に飽きてくるんです。

ケメ:同じことをやり続けても広がらないですからね。今回、支配人が持ってきた曲も今までにない感じのものが多かったと思うんです。ちょっとブリティッシュな感じの「天窓」とか。

──チェンバロのイントロはブリティッシュですけど、途中でラーガ・ロックみたいなギター・ソロも入りますよね。

マリアンヌ:ケメさんがろくに使い方もわからないエフェクターを持ってきて、困っているのを「どーすんのよ?」と思いながら見ていましたけど(笑)。

ケメ:音的に合ったらいいなと思ったんですけど、何をどう弾けばいいのかわからなかったんです(笑)。

a_kinoco_zentai_web.jpg──ジュリエッタさんはいかがでしたか、今回のレコーディングは。

ジュリエッタ:私は新しい要素を入れることに対してワクワクするタイプなので、島崎さんが入ることは楽しみでした。実際にレコーディングに入ってみたら、その前段階の支配人と島崎さんのやり取りや準備のおかげですごくスムーズに作業が進みましたね。島崎さんと清水さんの連携も素晴らしくて。あと島崎さんはすごく耳が良くて、記憶力もいいんです。たとえば通しで3回くらい録ったとして、3回目のテイクを基本に使いつつ1回目のベースラインが良かった部分も使うみたいな感じで、どの部分が良かったのかがしっかりと頭に入っていたんです。私も同意見だったので、そういう部分でもすごく助かりました。

マリアンヌ:島崎さんは本当に耳がいいのよ。マスタリングの時に「お嬢、ここに何かヘンなノイズが入っているのわかる?」とか言われても全然わからなくて。そのノイズをどうしても消さなくちゃいけなかったみたいなんですけどね。

ケメ:「何か聴こえない?」とか言われましたよね。

ファビエンヌ:私以外の3人はみんなそのノイズをわかっているんだと思って、自分がわからないのを黙ってたんですよ。

ジュリエッタ:私も黙ってました(笑)。

ファビエンヌ:結局、みんなわかってなくてホッとしましたけど(笑)。

ジュリエッタ:それと、演奏面で島崎さんから言われることは特になかったんですけど、唯一ウッドベースを弾いた「秘密諜報員出動セヨ」では「後半はすごく動く感じで弾いてください」とアドバイスをくださいました。

 

参謀役の意見やアドバイスにだいぶ救われた

──本作はどのパートもクリアでパンチのある音をしていますが、とりわけベースの音が粒立って聴こえますね。

ジュリエッタ:そこは支配人の意向で、ベースの音量を大きくしてもらったんです(笑)。

マリアンヌ:ベースが大きいのはキノコの基本です(笑)。島崎さんにも「普通はここまでベースを出さないよ」と言われたんですけど、「いいの、いいの。ワタクシはベース・フェチなので」と押し切りました。ジュリエッタさんが加入してから自分でもベース・ラインをさらに意識するようになったし、腕利きの彼女がこれをどう弾くかしら? なんて想像しながらベースのフレーズを考えるのが楽しいんですよ。自分ではまともに弾けませんけど。

ジュリエッタ:支配人はすごくハッとするフレーズを持ってきてくださるんですよ。デモがすでに格好良かったので、それ以上のプレイをしなくちゃいけないプレッシャーもありましたね。

ケメ:支配人はギターのフレーズもすごくいいのを考えてきて、格好いいソロもデモで弾いてるんです。その通りに弾くのがけっこう大変なんですよ。「茸大迷宮ノ悪夢」のギター・フレーズはデモでもがっつり入ってましたね。

マリアンヌ:相変わらずコードは全く押さえられないんですけど、とにかく歪ませて適当に弾いたのが割と良かったりする(笑)。

──ファービーさんは今回のレコーディング、いかがでした?

ファビエンヌ:ミキシング・ルームから「お嬢、ここさぁ…」とか支配人と島崎さんがやり取りをしているのが時折聞こえて和みましたね。こっちがしっかり叩いたテイクを向こうで吟味してくれたし、あっちがOKを出してくれたものはきっと大丈夫なんだろうという安心感のもと、今回は自分のことに集中できました。「東京百怪」では自分の考えてきたフレーズをまっすぐ叩いたんですけど、「それでもいいんだけど、ハイハットのニュアンスちょっとハネて叩いてみて」と島崎さんから言われたんです。自分としては「ん!?」と思って、はてなマークのまま叩いたら「そうそう、そういう感じ」と言われて、プレイバックして全体を聴いてみたら確かに叩き直したほうが人間味があって良かったんですよ。そうやって全体を見てからパーツごとに指示を出してくれているのがすごく助かりました。

──人間味が出るとは面白いですね。「東京百怪」はニューウェイヴの要素が強い無機質な楽曲なのに。

ファビエンヌ:私もそう思って無機質に叩いたんですけど、そうじゃないほうが良かったんですね。

マリアンヌ:そういうテイクのジャッジにしても、「どう思う? 自分はこう感じるんだけど」というやり取りができる人が今まではコントロール・ルーム側にいなかったし、エンジニアさんとのコミュニケーションも不十分なまま録りに入っていたので、ワタクシが全部の指示を出さなければいけない状況だったわけです。リズム隊の録りの時はリズム隊以外の音が一切鳴っていない状態で録っていたし、いま思えばそれでテイクの良し悪しもあったもんじゃないわよね(笑)。だけど今回は自分が用意してきたデモの音源を使いながらのレコーディングだったので、3人ともやりやすかったと思いますよ。今まで「何か違うのよね」としか言えなかったことも具体的な指示を出せたし、ワタクシ自身もコントロール・ルームでああだこうだと議論しながら答えを出せたのがとても有り難かったです。自分のやりたいことを共有できて、「それって要はこういうことじゃない?」と代弁してくれる人がいることはこんなにラクなんだなと思いましたね。

──これまでのキノコホテルには諸葛孔明のような参謀役が不在だったということでしょうか。

マリアンヌ:3人はあくまでもプレイヤーなので、自分の右腕が欲しかったのかしらね。参謀役がいることでこちらもだいぶフラットな気持ちになれるし、3人に対してリスペクトを忘れずに指示を出せるんです。4人だけで作業を進めていくと煮詰まることもあるし、「お嬢の言いたいこともわかるけど、こういうことだと思うよ」とフォローしてくれる人がそばにいることで自分自身もだいぶ救われました。

 

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マリアンヌの奥儀

KING RECORDS KIZC-541〜2(CD+DVD)
¥3,200+税
2019年6月26日(水)発売

作詞・作曲:マリアンヌ東雲
エンジニア:清水裕貴
プロデュース:マリアンヌ東雲・島崎貴光
アート・ディレクター:常盤響

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【CD収録曲】
01. 天窓
02. ヌード
03. 愛の泡
04. 東京百怪
05. レクイエム
06. 雪待エレジィ
07. 華麗なる追撃
08. 茸大迷宮ノ悪夢
09. 女と女は回転木馬
10. 秘密諜報員出動セヨ
【DVD】
PV「ヌード」+メイキングなど

LIVE INFOライブ情報

サロン・ド・キノコ 〜13年目のウ・ワ・キ〜
創業12周年記念実演会

出演:キノコホテル(ワンマン)
2019年6月24日(月)新宿ロフト
OPEN 19:00 / START 19:30
前売¥3,500(ドリンク代別¥600)
チケットはぴあ(Pコード:146-985)、ローソン(Lコード:70915)、イープラス、新宿ロフト店頭にて発売中
問い合わせ:新宿ロフト 03-5272-0382

アルバム発売記念ツアー
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6月29日(土)札幌SOUND LAB MOLE
7月06日(土)梅田Shangri-La
7月13日(土)福岡 BEAT STATION
7月14日(日)別府 Copper Ravens
7月15日(月・祝)小倉FUSE
8月04日(日)仙台FLYING SON
8月30日(金)名古屋クラブクアトロ
8月31日(土)広島クラブクアトロ
9月13日(金)東京キネマ倶楽部
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