自分の言葉には意味があるということを知ってほしい
あきこ:施設からうちに来たひとは、最初あいさつとか返事もしなくて。でもそれはかっこつけてじゃなくて、返事をしなくてもなりたつ人生だったんですよ。頼まなくても職員の人がやってくれるし、返事をしなくても勝手に決まる。だから、ちゃんと返事をしないとだめだよっていう幼稚園みたいな時間は、実はいっぱいあった。
佐藤:いきなり今になったんじゃないんだよね。
あきこ:だから自分でこうしたいっていうのを言わないし、そもそも聞かれてこなかったんだと思うんです。
佐藤:気に入らないことがあって「ご飯なんかいらない」って言っても、ご飯は自動的に出てきて、「利用者さん、食べてください」ってやられるわけじゃない。でもいらないって言われたらうちは出さない。自分の言葉にはちゃんと意味があるんだっていうことを知ってほしい。
──自分が言ってもどうせ…っていう気持ちってわたしたちにもありますよね。
あきこ:そうそう、それもすごくあると思う。職員に「はい」って言われても実現しなかったことをいっぱい味わってきているから。言葉がちゃんと誠実に使われていないのは、相手にそうされてきたからだと思う。また今度ねっていう今度はこないっていうのを繰り返して、諦めちゃうっていう。
──3人はどうでした? 一番先輩はリーダーですか?
イノウエ:わたくしです(笑)。最初は週に1回だけバザーをやってて、倉庫もなかったんです。
佐藤:イノウエは、養護学校からすぐうちにきているから、そこは返事するとこだよって言うとすぐ伝わる。
イノウエ:そう。ああ、そっか。はいって思う。
佐藤:でも一回、施設を経由しちゃうと、その間の失われた数年を取り返すのがほんとにたいへんなんだよな。
あきこ:一度諦めるということをすると、人間関係がねじれてしまう。
──イチマルさんも最初のころたいへんだったって聞きますけど。
イチマル:たいへんだよ(笑)。
ノブ:もー、いつも目が怒ってた(笑)。
イノウエ:最初、一緒に働きたくないって思った。今と全然違う、笑ってなかった。
あきこ:「いろんなやつがいるけど、こいつとは一緒にやっていけないと思う」って言ってたよね(笑)。
外口:なにか言うとすぐ怒って逆ギレしてたからね。
佐藤:でもうち的にはイノウエたちが認めないとだめで、役所的な手続きだけじゃなくて、みんなの気持ちが大事だから。
──すっかり、お客さんの人気上位メンバーのイチマルさんなのに。
佐藤:だから最初の状態のままだったらどうにもできなかったよな。
俺らと一緒に逆襲して欲しいんだ
──攻撃は最大の防御じゃないですけど、優生思想についての反論の形としてこっちはこっちで楽しく見せつけていくしかないんですよね。文字にするとやな言い方になりますが、その攻撃のひとつとして、このイベントでちんどんメンバーを利用させてもらいますくらいの気持ちでいます。それこそ"一緒に逆襲して欲しいんだ"と。
佐藤:ほんとそう。だからみんなが緊張して真っ白にならないように。
イノウエ:うん(笑)。聞いてほしい、トークしたい。毎日遊びに行っていることとかも知らせたい。
イチマル:プロレスの話しもいいね。笑ってほしい。
イノウエ:イチマルは事件がたくさんあるからね(笑)。
ノブ:俺はリストラのことと、騙されたことも話したい。
──出た、鉄板ネタ…懸賞詐欺にひっかかって100万円だましとられたっていう。
佐藤:ほんとにね、途中で気づいてよかったけど。
ノブ:あと、前の仕事の話しがしたい。
佐藤:誰も話す人がいなかったんだよな。
──『カレー』の歌詞ですね。「俺は黙ってカレーを詰める 笑うことも忘れた 俺は仲間が仲間がほしい ふざけて笑える仲間が」っていう。
イノウエ:そう。俺も前の職場では誰とも喋ってなかった。
佐藤:まぁ、よく喋らないでいられたよな、きみらみたいなお喋りが。
イノウエ・ノブ・イチマル:あはははは!