常に「今に見てろ!」と思ってる
──女の私としては嬉しかったです。応援歌にも感じて。スケバン、カッコイイし。あと「ボーリングIN高田馬場」って凄いタイトル(笑)。
セイジ:東京に出てきて最初に住んでたとこからすぐに高田馬場に引っ越して。三畳の部屋に。友だちも誰もいなくて、もちろん彼女もいなくて。あんまり暇で一人でボーリング行って。ボーリングって友だちとか家族と行くものだと思ってたから、一人でボーリング行ったのが凄い衝撃で。
──自分で行ったのに自分で衝撃(笑)。
セイジ:こんなに俺は暇なのか! って(笑)。その衝撃で思いついた曲(笑)。曲の内容はどんどんどんどん飛んでったけど。びっくりした、一人でボーリング行ったことに(笑)。俺には誰もいないんだ! ってびっくりした(笑)。
──さっきの原宿の仲間に出会う前のことで。
セイジ:出会う前ですね。
──「ティラノザウルス四畳半」もそうですけど、東京に出てきて一人で悶々としつつも突き破ろうと戦う姿が…。
セイジ:あ、「ティラノザウルス四畳半」も高田馬場の頃を唄った曲ですね。四畳半って唄ってるけど、ホントは三畳(笑)。
──アルバムの中に必ずと言っていいほど、まだ自分のことを誰も知らない時代の歌、東京に出てきて、今に見てろ! って感じの曲がありますよね。
セイジ:常にあります。常に今に見てろ! って。
──ボーリングの球が太陽で、太陽を掴んでやる! っていう。
セイジ:それは適当に出てきた歌詞です(笑)。ちょっと卑猥な感じもあるし。
──ああ、そのへんブルースですね。
セイジ:そうそう。ブルースはそうだね。卑猥だよね。自分はブルース系なので(笑)。
──東京に出てきたっていうのは、もちろん人生の中の大きな出来事で。
セイジ:東京はデカかったですね。妙子さん、出身はどこですか?
──千葉です。
セイジ:『今日から俺は!!』だ! 面白かったなぁ、アレは。じゃ、ヤンキーだね。長いスカート似合いそうだもんね(笑)。
──だから「パリのスケバン」にグッときたのかしら(笑)。初恋で世界がチェンジしたわけだけど、東京は、東京に出てきたら自分で世界を変えなきゃならないですよね。
セイジ:東京にはね、自信をバサーって切られた、ズタズタにされたような。楽しかったんですけどね。でもなんかもう、田舎モンっていう感じのセンスを思いきりバカにされた。バカにされたわけじゃないけど、叩きのめされた。
──それでも自分自身を貫き通した?
セイジ:いや。田舎モン根性をメキメキ出すのは、何も自分に身についてないのにメキメキ出すのはできない、逆にカッコ悪い。だから何かを得るために、カッコイイ何かを知りたくて知りたくて、探しまわってたどり着いたのが原宿。いま思えばみんな田舎者でダサいのに、頑張ってカッコイイ服着てさ。原宿で出会った連中とは、革ジャン着てカッコイイ服着てるけど、中身は焦ってカッコイイものを見つけようと必死だなって、きっとお互いそんなふうに見ていて。とにかくダサかったんだよ。自分がダサい人間だと思わないと、カッコ良くなりたいっていう欲望は出てこないんじゃないかな。カッコ良くなりたいっていう欲望が常にあった。で、いろんな知識ってのは大事で、古着の知識とか。たとえばリーバイス505、501、深く知るようになって、知識に裏打ちされたものがあると自信を持って話せるようになる。原宿っていうのは、コレがカッコイイんだ、コレはカッコ良くないんだって基準をくれた街。土台ができたら田舎者根性パワーがメキメキと出てきた。そしてロケットみたいにビューッて飛んで、飛び続けて今に至る。
──初めてそういう話を聞きました。セイジさんって、もう最初から迷いなく突き進んできたと思ってたんですけど、叩きのめされて、自分はダサいと思って、そこからどんどんいろんなことを得て。
セイジ:迷いなく突き進んでいくんだけど、ダセェな、ダセェなってとこに何度も何度もぶち当たって、ようやく本当にカッコイイのはコレだ! って教えてくれたのが、この街です。原宿の街。
──今日のインタビュー、原宿で良かった。セイジさんの原点で、セイジさんの新しい顔を知れた気がする。いいですよね、そんな原宿の頃からの仲間がライブに来ていて。
セイジ:うん。でも20年ぐらい前はライブでケンカもあって面白かったけど、みんなもういいおっさんで(笑)。
──今の話で、「LOVE&JETT」の「まだまだ強くない」って歌詞がさらに伝わってきます。じゃ、改めて今作で感じてほしいことって?
セイジ:LOVEを知ることによって、人生がスパークすること。いろんな人に出会ってデカい衝撃を受けたり、困難なことにぶち当たったり、そのたびにスパークしていくってこと。それを感じてほしいです。でも一番はノレるアルバムだってことです。
──ジェットロックンロールなアルバムです!
セイジ:ありがとうございます!
──ツアーもすぐスタートですね。初日はビリーさんの地元の群馬県館林。ビリー墓参りツアーをやるそうで。
セイジ:初日はいつもビリーの故郷からなんだけど、今回はお墓参りもファンの人と行こうかなって企画を立てて。募集中です。定員になり次第締め切ります。
──自主レーベルも立ち上げたんですね。
セイジ:メジャーのレーベルだと海外のレーベルとなかなか契約できなくて。ギターウルフレコードを立ち上げたことによって、アメリカのThird Man Recordsとの契約を進めてるとこです。で、国内ツアーの後、すぐに海外ツアーへ行きます!