自分に嘘をつかなければきっと本当の孤独にはならない
——1曲目の「デラシネ」は空気が広がっていく感じで凄くいい。歌詞も“たとえどんなスーパースターでも たった一人にめがけて歌う きみかもしれない”って、グッとくる。
ニイマリコ それは木村拓哉が言ってたんです(笑)。
——えー、そうなんだ(笑)。
ニイマリコ 何年も前ですけど、木村拓哉が、何万人の前で歌う時に気を付けてることは なんですか?みたいな質問に、「俺、目ぇいいんすよ。元気なさそうな子を見つけたら、その子に向けて歌うようにするんです。そしたら不思議と会場に広がっていく手応えを感じるんです」って言ってて。ずっと残ってて、今回使いました(笑)。私もその言葉を聞く前は闇雲に歌ってたんですけど、目の前に人がいるっていうこと、そこに焦点を絞ること、そして出てくる集中力っていうものを、なんか実感できるようになってきた。何に向かって歌うのか、迷うこともあるんです、上手く歌おうとしたり余計なこと考えたり。でも、ここにいるお客さんに向けようって思うようになったら迷いはなくなった。「デラシネ」 は元気のない女の子に向けてた曲で。2年ぐらい前からライヴでやってるんです。この曲があってアルバムに向かっていけた感じです。
——「KOOKOO」は珍しくスロウな曲。
キクイマホ ライヴでみんなトイレに行かないかな?って思ったんだけど、大丈夫でした (笑)。凄い不安だったんですよ。録って聴いてみたら、遅すぎるんじゃないかって。私は普段から後ノリで叩く癖があるので、遅い曲だと更に遅くなっちゃう。こんなに遅くて大丈夫か?って。
みちゃん 全然大丈夫。
ニイマリコ 全然いいと思った。
——凄くいいです。ズシッときた後に余韻があるんですよね。
キクイマホ ありがとうございます。自分としてはキチッとやりたかったんですけど、逆にこれがいいって言ってもらえるのはありがたいです。
ニイマリコ 人力の醍醐味ですよね。その人の音が出て、それが合奏になった時に、この3人じゃなきゃ再現できないものになっている。
みちゃん 信頼があるってことですよね。自分では気づかないことに気づかされるし。
——最後の「ノクターン」は具体的な歌詞ですね。
ニイマリコ 街の景色をそのまま書いたような歌詞。デヴィッド・ボウイのことで。彼の目を通して何が見えてるんだろう?、そういうイメージ。デヴィッド・ボウイが空から私のことを見ていて、「落ち込んでるあなたのことを見てるから」って言ってくれてるイメージ。この曲が終わってリピートで1曲目に戻った時、最後の曲の「ノクターン」がスタートに感じたり。循環していくような流れを意識して。
——あと「#0」はそれこそ虚無ってことだと思うけど、ポップだし元気が出るし。“僕ら自体こそが 変化になっていく”って歌詞は、変わっていこうってことじゃなく、変わらないでいい、そのままでいいってことですよね?
ニイマリコ そうです。そのままで行けーって。大変なことでもあるけど、自分に嘘をつかなければきっと本当の孤独にはならないよって。私自身、好きにやらせてくれるメンバーがいるし、ポスターやフライヤーを描いてくれる人、写真撮ってくれる人、インタビューしてくれる人、何よりお客さん、友達。いろんな人に囲まれてきたんだなって。人に気に入られようとしなくても、自分のままでいればいい。私はそれを実感してきたし、だからずっと変化できた。ならば伝えたいですよね。
——真ん中には虚無があるけど?
ニイマリコ 虚無はあるんです。でも、大いなるYESがあるってことだと思います。NOがあった上でのYES。ロックに感じてきたことってそれなんだなって。表現したいってことは、その動機が不満や反抗であっても、前向きな行為だし前向きな気持ちからですよね。 表現すること自体はポジティブなことだと思うので。それがなかったらロックは繋がってこなかったと思うし、NOを歌っても大いなるYESがあるのがロックだと思う。それをやっていきます。