スウィング・ジャズ、リズム&ブルース、ジャイヴ、ジャンプ、スカ、カントリー、ディキシー、ジャグ、アイリッシュ......ありとあらゆるルーツ・ミュージックをごった煮にした底抜けに楽しいパーティー・ミュージックを標榜するザ・コルツ。昨年春に発表した結成25周年記念アルバム『BASTARD!』の続編となる『MORE BASTARD!』は、「DOG DAY AFTERNOON」という魅惑のキラー・チューンを筆頭にバラエティ豊かでクオリティの高い新曲、一段と深みと説得力を増したセルフカバー、トゥーツ&ザ・メイタルズとCCRのカバーをごちゃまぜにしながらこれぞコルツとしか言いようのない唯一無二の世界、あえて本物を追求しないフェイク感ならではの良さを堪能できる逸品だ。一時は開店休業状態が続いた彼らが息を吹き返し、今こうして充実した活動を無理なく繰り広げていられるのはなぜなのか。永遠の師匠格であるザ・モッズとのスプリット・ツアー千秋楽(大豪雨の野音!)を終えた翌々日、バンドの顔役であるKOZZY IWAKAWAこと岩川浩二、TOMMY KANDAこと神田朝行を直撃した。(interview:椎名宗之/yaon pix:山中善正)
野音でスカーフェイスの有終の美を飾れた喜び
──何はともあれ一昨日の野音、土砂降りのなか本当にお疲れ様でした。
KOZZY:モッズの雨の野音はビデオで何万回と見たけど、できれば自分たちでは体験したくなかったね(笑)。野音では何度もライブをやったことがあるけどあそこまでの雨は初めてで、大雨の野音はこういうものなんだなと思ったけど、もういいかげん大人だから心配することのほうが多かったよね。濡れた機材が耐えられるのか? 最後までライブをやれるのか? これ以上雨が酷くなったらモッズがライブをやれないんじゃないか? そのために僕らがちょっと早めに終わったほうがいいんじゃないか? とかさ。音が出なくなったらおしまいなので、その辺のことを随時確認しながらライブをやることになったね。
──パーティー・バンドらしく明るく楽しく振る舞いながら、かなり冷静沈着だったんですね。
KOZZY:ムダに大人になってないからね(笑)。とにかくお客さんが寒がって辛そうだったので、まずはしっかり盛り上げようと思った。
TOMMY:普段のライブよりもいろんな状況を見てたよね。お客さんのことはもちろん、カメラ・クルーは大丈夫なのか? とか。
KOZZY:ステージからお客さんの顔もよく見えたし、みんなの体から湯気が立ってるのも見えたしね。
──今回のモッズとのスプリット・ツアーは『THE MODS×THE COLTS TOUR 2018 “GOOD-BYE SCARFACES”』というタイトルでしたが、スカーフェイス(モッズが1991年から1994年まで主宰していたレーベルで、コルツも所属していた)としての活動はこれで終了ということなんですか。
KOZZY:そうだね。森山(達也)さんの中ではずっとスカーフェイスが完結していなかったんだと思う。森山さんは過去に何度も話していたからね、ずっと煮えきらないままでいたスカーフェイスをいつかきちんとした形で終わらせたいって。
──去年のスプリット・ツアー『LITTLE SCARFACE FESTA 2017』で落とし前がついたわけではなかったんですね。
KOZZY:やっぱり有終の美は野音で飾りたかったんだと思う。野音は抽選だから、運よく取れたらそこで終わりにしようとしたんじゃないかな。それでいざ取れたらまさかの集中豪雨だったっていうさ(笑)。
TOMMY:それもきっかりライブの時間帯だけでね(笑)。
KOZZY:でも僕は若干期待してた部分もあったね。僕らの後のモッズで大雨になって、最後に「TWO PUNKS」をやらないかなって(笑)。
──まさに期待通りの展開でしたね。
KOZZY:モッズはやっぱり神懸かり的だなと思ったね。あんな大雨の演出、狙ってできることじゃないからさ。僕らはお客さんを温めて盛り上げておくのは得意だし、今回もその役は喜んで買って出たけど、コルツには「TWO PUNKS」みたいに雨が降ったら急遽差し替えて盛り上がる曲なんてないからね(笑)。
──コルツとしても今回のスプリット・ツアーでスカーフェイスをしっかり成仏させたい気持ちがあったんですか。
KOZZY:そもそも僕がコルツを結成したのはスカーフェイスに入るためだったし、コルツというバンド名も森山さんが名付け親だったからね。森山さんに1年間付いてまわって、その間にメンバーを見つけてスカーフェイスを一緒に始めたのがコルツのスタートラインだったから、自分たちのスピリットとしてはモッズと一緒に有終の美を飾れたのが嬉しかったよ。
再録を考えたことがなかったメジャー時代の楽曲
──野音のライブで先行発売された『MORE BASTARD!』は、前作『BASTARD!』の制作時から二部作でいこうと考えていたのか、今回のモッズとのスプリット・ツアーに合わせて制作されたのか、どちらなんでしょう?
KOZZY:まず、前作の『BASTARD!』はスカーフェイスのツアーがあったから作ったわけじゃなくて、コルツの新作を出そうと考えていたタイミングがたまたま重なっただけなんだよね。『BASTARD!』は自分たちの予想以上にいいものが作れた手応えがあって、できてすぐにA&Rの川戸(良徳)から「この続編をぜひお願いします」と言われてさ。去年の単独ツアーのタイトルが『MORE BASTARD!』だったから、それをそのままタイトルにしたアルバムを作ろうと思ってね。
──「コルツをちゃんとやろうとすると、マックショウの3倍くらいの時間がかかる」と岩川さん自身も話していたし、前作から約1年半でよくこれだけ充実した作品を作れたなと思ったのですが。
KOZZY:それなりに時間はかかったけどね。コルツは大所帯なので、まず最初に全員がスタジオに集まるのに時間がかかるから(笑)。今回は続編という位置づけだったので前作と同じく新曲とセルフカバーを織り交ぜた構成にしたんだけど、セルフカバーよりも着想がすでにあった新曲のほうが仕上がるのは早かったかな。コルツはわりと初期の段階でずっと大事にしていくような曲を作って、そういう曲は事あるごとにセルフカバーしてきたんだけど、今回は今まで再録しようとも思わなかったメジャー時代の曲を川戸からリクエストされてさ。「いい曲だからぜひ録り直してください」って。聴き直してみたらたしかに意外と良くてね。
──「WALKIN' IN THE RAIN」や「天国と地獄」といったBMG時代のナンバーですね。
KOZZY:うん。あの時代の曲はもちろんナシではないんだけど、もう過ぎた話って言うか(笑)。
TOMMY:過ぎた感はあるよね(笑)。その前のフライハイト時代よりも印象が薄いし。
KOZZY:フライハイト時代は1日に3曲くらい作っててさ。当時の曲は今聴いてもなかなか味わい深いんだけど、いい曲はすでにセルフカバーもしちゃったし、ライブでも定番化してるので、今回はそうじゃないところを探してみたわけ。それが「MAMMA MIA」だったり「KANEMAWASE」なんだよね。
──コルツに対して深い思い入れを抱くファンは多いし、セルフカバーはヘタなものにできないという理由から時間がかかったわけですね。
KOZZY:僕らの思い入れとはまた違う思い入れがファンにはあるからね。自分たちとしてはメジャーよりもフライハイトでやってたインディーの頃のほうが思い入れは深いし、期間的にも長いんだよ。メジャー時代は2年くらいしかないからね。ただ、メジャーの頃はインディーの頃の10倍はCDが売れたんだよ。生々しい話だけどその差は歴然とあったし、やっぱりポンキッキやマクドナルドのCMに出ると全然違うんだなと思ったね(笑)。だけど、CDが10倍売れてもテレビに出ても全然カネにはならないんだってことをメジャー時代に明確に理解して、それなら全部DIYでやったほうが自分たちのためにもなると思ってメジャーから離脱したわけ。
──今回再録された「LOVE KILLS THE CAT」は、メジャー撤退後に“B.A.D RECORDS UNITED”を立ち上げた最初期の作品『SPARKED PLUG EP』に収録された思い出深い楽曲ですよね。
KOZZY:実を言うと、「LOVE KILLS THE CAT」はコルツを結成して一番最初に作ったオリジナル曲なんだよ。「銀行強盗」とかと一緒にね。ちゃんとした形で収録したのは『SPARKED PLUG EP』が最初だったんだけど。
TOMMY:「HEY! DILLINGER」は?
KOZZY:あれは結成してから何曲目かにスカーフェイスありきで作った曲で、「LOVE KILLS THE CAT」のほうが先。