太陽に噛りつき出血させているライオンのアートワークが意味するもの
──今現在、あなたは自分自身が悲観主義者だと思いますか。それとも楽観論者だと思いますか。
ティム:僕自身は楽観主義者だと思うけれど、シニカルでもあるね。シニシズムが歌詞に悲観的な要素を持ち込むわけだけれど、お互いに希望の手を差し出そうと試みてはいるよ。
──そうして完成したアルバムに、『ヴィトリオーラ』というタイトルをつけたのは、どういう理由からですか。「こきおろし / 痛烈な皮肉」という言葉を女性形っぽくしたことの意図を教えてください。
ティム:もともとは、レコードプレーヤーのブランド=ヴィクトローラをもじったものなんだ。《ヴィトリオル》と《ヴィクトローラ》を組み合わせて、痛烈な皮肉に満ちたレコードだと連想させようとしてね。でも、ヴィトリオーラという言葉をもっと調べてみたら、イタリアではある種の毒という意味で使われていて、このアルバムのタイトルにぴったりだと思えたんだ。
──アルバム・ジャケットの、太陽に噛りついて出血させているライオンのイラストレーションを使ったアートワークは、どのようにして決まったのでしょう?
ティム:これは古い錬金術の世界におけるひとつのシンボルなんだ。アメリカでもあまり知る人はいないんだけどね。ヴィトリオーラという言葉を調べているうちに見つけた絵で、緑のライオンが太陽を食べるという絵柄は《ヴィトリオル》、つまり硫酸鉄を表している。さっき言ったように、イタリア語でヴィトリオーラが毒という意味なのと語源は同じなんだ。
──このあと年内は本国でのツアーが予定されていますが、ツアーにクリントは参加せず、レディフィンガーのパット・オークスが代わりを務めるようです。このあたりの事情も教えてくれますか。今後、スタジオではクリントがパーマネントなメンバーだけれど、ライヴではその都度サポートを頼むような形での活動になるのでしょうか。
ティム:この先どんなことになるかは、アルバムを作ったばかりだから、まだなんとも言えないな。正直、自分たちでもよくわからないんだよ! 新作のあとすぐに次のアルバムについて考えることはほとんどなくて、とにかく今のアルバムに集中したいからね。時期が来たと思ったらもう1枚作るかどうか決めることになるだろうし、またクリントが参加してくれればいいなとは、もちろん思ってるよ。
──前任ドラマーのカリィ・シミングトンは現在、元アット・ザ・ドライヴ・インのジム・ワードが現在やっているスパルタというバンドに参加してますが、もし時間が合えば、彼もまだカーシヴのライヴに復帰する可能性はありますかね? 最近、友人がカリィ本人に会って、彼自身はカーシヴでまた叩きたいと話していたそうですよ。
ティム:カリィはいいヤツだし、ドアはいつでも開いているよ。とにかく今はスパルタがうまくいくといいなと思ってる。少し前に彼らのライヴを観て、カリィと一緒に作っている新しい音楽には本当に興奮させられた。
──では最後に、サドルクリークを離れ、15パッセンジャーで独立しようと考えた経緯と、実際に運営してみて現在までどんな調子か教えてください。15パッセンジャーズとしての今後の計画に関しても、たとえば、どういうアーティストの作品をリリースしたいとかイメージを持っていたりしますか。
ティム:僕たちは、ただ自分たちの作品を所有すること、自分たち自身の力で音楽を発表することを望んだだけなんだ。マットは、サドルクリークやチームラヴで長年レーベルの運営経験があって、その手腕はなかなかのものさ。まぁ、でも大変な仕事だよね! 将来的には、僕たちに刺激を与えてくれるようなアーティストを発表し続けたい。ただ、ゆっくりやるよ。1年に数枚のアルバムしか出さないつもりなんだ、一枚一枚に集中する時間が必要だからね。
(web Rooftop2018年10月号)