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INTERVIEW

トップインタビュー鈴木エイト(『やや日刊カルト新聞』主筆)-「特殊な人たち」ではなく身近な問題、様々な現状を紐解いていきたい

『やや日刊カルト新聞』主筆・鈴木エイト!
「特殊な人たち」ではなく身近な問題、様々な現状を紐解いていきたい

2018.10.03

 宗教二世の問題や、反ワクチン問題の取材を続けるジャーナリスト・鈴木エイト。『やや日刊カルト新聞』主筆として様々な宗教団体に日々突撃取材をしている中、取材を通じ一般の信者や二世と交流するようになって感じた宗教二世問題とは? そして様々なワクチンに反対する反ワクチン運動の問題点とは? 扱いの難しい2つのイベントを主催する鈴木エイト氏に直撃インタビュー! [interview:幸進伍/構成:石川美帆(Naked Loft)]

“趣味”の活動から、善意で人を騙してしまう構造に気づいた

──まずはご自身の活動についてお聞かせください。

鈴木:肩書きはフリーのジャーナリストで、文筆活動などを行っています。

──以前、音楽活動をされていてアーティストとしてLOFTに出られたこともあるとか…。

鈴木:20代のときにバンド活動をしてまして…。今はバンドからは足を洗っていますが、「カルト新年会」というトークイベントを毎年やっていて、違った形でお世話になっています(笑)。

──こんな風にご縁があって嬉しいですね(笑)。

鈴木:お世話になっています(笑)。16年前に街頭のカルト宗教団体の偽装勧誘阻止活動というのを始めて、その後『やや日刊カルト新聞』というネット新聞に参加してジャーナリスト活動を始めます。最近は一般紙からも依頼が来て、取材や執筆活動をしています。最初に対峙した宗教団体が統一教会だったので、そことのやりとりが多く、全国に顔写真付きで指名手配されたこともあります(笑)。

──このような活動に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

鈴木:単純にテレビです。「手相勧誘の実態」っていうのを見た翌日に、渋谷の駅前でやってるのを偶然見たので割って入って「これ宗教の勧誘だよ!」と。

──テレビで見たぞ! と(笑)。

鈴木:そうです(笑)。30人くらい片っぱしから。

──ただの一般人としてですよね? それは正義感からですか?

鈴木:正義感…というよりは、嘘ついている奴を論破したいというか…(笑)。その日からほぼ毎日、新宿 渋谷あたりを回るのがルーティーンでした。5年経った頃からブログで注意喚起をするようになりましたが、それまでは完全に“趣味”でしたね。でもやっていくうちに、勧誘している信者も悪意を持っているとは限らないということに気がつき始めたんです。マインドコントロールのからくりが見えてきて、そういう面で信者に興味を抱くようになりました。そこから信者の方と話して仲良くなり、複雑に関係を持っていくようになりました。

──徐々に興味が広がっていったんですね。

鈴木:善意で人を騙してしまうという構造が面白いなと感じました。

──それから『やや日刊カルト新聞』に参加したわけですか。

鈴木:『やや日刊カルト新聞』は“総裁”の藤倉さんにスカウトされました。

──確かに即戦力ですね(笑)。

鈴木:入ってからも現場主義で楽しかったです。絵画販売の詐欺やデート商法の現場だったり、街頭の怪しい現場は片っぱしから突っ込んで行きましたよ(笑)。逆に殴られたりもしましたが…。

 

宗教の話は身近で誰もが関わっている

──宗教二世の問題にも関心があると伺って、今回イベントをしていただきます。

鈴木:弁護士の集会で二世の方が発表していて、涙が出るくらいに過酷な生い立ちを聞いたんです。合同結婚問題があった頃に生まれた子供たちが、今ちょうど成人を迎えていろんな歪みが出ている時期でもあります。ここ数年は二世の方がどんどん街頭での偽装勧誘に出ていますし、政治活動に参加している二世の方も結構いるんですが、それって本人が気づかないうちに人権侵害に遭っているんじゃないかと思っていて。貧困問題やネグレクトとも関わりがありますし、単なる「特殊な人たち」の問題という捉え方ではなくて、もっと身近な問題として語るべきだと思っています。

──自分自身が二世なのですが、二世同士ってめちゃくちゃ話が盛り上がるんです。普段は話しづらいことでも、意外と身の回りに溢れているのかもしれませんね。

鈴木:本来宗教の話って身近なはずで。例えばクラスに一人はそういう噂をされている子がいたり、うちにも子連れで勧誘に来たよって話があったり…。必ずどこかで誰もが関わっているはずなんです。そんな中でむしろ上の世代が二世に対して宗教への偏見をぶつけていて、それは違うだろと思うことも多々あるので、その辺りはもっと発信していきたいですね。

──話をしてみると意外と楽になることもありますよね。

鈴木:悩んでいる二世、悩んでいない二世、そして、悩んでいる一世、三世も既に現れています。興味がある人も含めて、いろいろな立場から二世問題を考えていきたいです。単純に親との問題でもあるので個別のケースとしても考えられるんですよ。視野を広げてもらえればなと思います。

──『やや日刊カルト新聞』でも、事実の提示が基本のスタンスで、それを読者に投げかけているところに共感しています。

鈴木:ある宗教をやめて、なお悩み続けていた牧師さんがいるんですが、その方がカルト新聞を読んでゲラゲラ笑って、初めて「笑っていいんだ」と思えたと言ってもらえたことがあるんです。そうやって気が楽になる人がいればと思って『カルト新聞』を続けているんですよね。

 

悩んで苦しんでいる方の存在を否定しない

──もうひとつ11月にイベントが控えていて、それは反ワクチン運動に関するイベントになります。

鈴木:何の問題も無いはずのワクチンに対して、有名なお医者さんなどを含めて異を唱える人たちがいるんですが、そういった問題についてです。今回は、かなり著名な専門家の方々をお呼びしてイベントができることになりました。まだ議論がなされている問題も当然あるんですが、とにかく、このまま偏った情報がまかり通っている現状に一矢報いたいと思っています。誰が被害を受けるかというと、それはワクチン接種を受けられなかった子供なんです。下手すれば死んでしまうわけで。ホメオパシーや代替医療、民間療法の問題ともつながっているので、その辺とも一緒に論じていきたいなと思っています。

──本当にすごい出演陣ですよね。逆に不安になってきます(笑)。

鈴木:興味がある人はたくさんいると思いますよ。やる意義もしっかりありますし。実際のところ医者が医者に問題提起するわけですから、同業者の悪口を聞けちゃうわけです。

──こういうものって、声を上げると訴訟の対象にされたり集中攻撃を受けたりしてしまうものですよね。

鈴木:そのせいで声を上げられなくなってしまう方はたくさんいると思います。けど今回はそれに屈せず、ガンガン発信されている方を呼んでいるので僕自身もどんな話が出てくるのか非常に楽しみです。いずれは直接、バトルを繰り広げてもらいたいですね…。

──今回は平日夜のイベントになりますが、今後は週末昼間に開催して、小さなお子さん連れでも気軽に参加できるイベントもいいなと考えています。

鈴木:このイベントをやるにあたって気をつけたいのは、これもやはり頭ごなしに否定をしたくなくて。実際問題として悩んで苦しんでいる方々の存在を否定することはしたくないんです。どうしてその選択をしてしまったのか、複雑なものがあると思うんですが、そういったことも踏まえて議論をしていきたいです。明らかにおかしい言説にはきちんと批判をしつつ、様々な現状を紐解いていきたいですね。


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様々な立場の方のプラットフォームとして「本当の自分を出せる」楽しいイベントに

──今回10月、11月と2つのイベントを控えていますが、それぞれどういうものにしていきたいでしょうか?

鈴木:宗教二世イベントに関しては、立場を問わず、二世のプラットフォームになるようなイベントにしていきたいなと思います。壇上から偉そうにどうこう言うなんてことはせず、様々な事実と向き合った上で「あそこに行けば本当の自分を出せる」と、楽しみにしてもらえるイベントにしていきたいですね。反ワクチン運動に関しては、当事者としてお子さんをお持ちの方や、反ワクチンに少し興味があって揺れている人にむしろ来てもらいたいです。よくある陰謀論の背景もわかりやすく伝えていければと思います。どちらも様々な立場のある問題だと思うので、より開かれた場所を提供していければと思っています。

──楽しみにしています。

 

 
 
(Rooftop2018年10月号)
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LIVE INFOライブ情報

2018年10月22日(月)
「宗教2世だョ!全員集合!」 ~信仰のある人もない人もみんな集まれ~
OPEN 18:30 / START 19:30
前売¥1800 / 当日¥2300 (1オーダー500円以上必須)
チケットe+にて販売中!
【出演】
鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)
ニポポ(exトンガリキッズ)
ネイキッドスタッフ幸(創価学会2世)
【スペシャルゲスト】
宗教二世の方々(エホバ2世、創価学会3世、統一教会2世)
※変更の可能性あります。
藤倉善郎(やや日刊カルト新聞社被告人兼総裁)
 
2018年11月14日(水)
ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥1800 / 当日¥2300(1オーダー500円以上必須)
チケットe+にて販売中!
【出演】
鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)
久住英二(ナビスタクリニック理事長)
ナカイサヤカ(翻訳家)
森戸やすみ(さくらが丘小児科クリニック)
 
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