2016年、8年の活動休止を経て復活したMAD3。個性的であり、かつカリスマ性もある新メンバーのBLONO・HIRUTAを迎え、オリジナルのMAD3の頃とはまた違った感性で曲作りやロックンロールと向き合っていこうとする日本を誇るギタリストEDDIE LEGENDに話を聞いた![interview:柳沢英則(新宿LOFT)・安 佳夏(下北沢SHELTER)]
8年の沈黙を破り、再結成
──MAD3は昨年2016年に再結成されましたが、2008年の解散から8年という年月を経て、なぜ今、再結成をされたのでしょうか。
EDDIE:まず第一に、メンバーが見つかったっていうのが大きいですね。今までソロでもいろんなメンバーとやってきて、最後にやったEDDIE LEGEND A GO-GO! っていうソロバンドのメンバーがあまりにも良かったので、このメンバーだったらMAD3って名乗っても良いかなと思って。オリジナルメンバーたちに会いに行って、「やろうと思うんだけど」って言ったら、「やりなよ」と。元ベースのHARUTO君なんかは、「やるんならオリジナル越えて」って言ってくれて。それで、よし、やるか! ってなりました。やるにあたって、THE WILLARDを見に行ったら、オリジナルメンバーはJunさんしかいなくて、でもウィラードはウィラードだし、THE STAR CLUBだってオリジナルメンバーはHikageさんだけだし。言い出しっぺと言うか、オリジナルメンバー、メインのメンバーがいればそのバンド名を名乗るべき、というか名乗って良いんだなと思ったんだよね。
──では、解散していた8年の間も、機会があればMAD3をやろうと思っていたんですか?
EDDIE:いや、それがね、全然やる気なかったの。もう終わったことだと思ってて。もう次に行きたくて、いろんなことに挑戦してやってきたけど、やっぱり自分の作ってきた世界というか、俺の音楽っていうのはMAD3なんだなってやればやる程に思って。そして、やってみたらみんなすごく待っててくれて、やっぱりMAD3で良かったんだなって。
音楽も人生も、なんだかんだ愛が必要
──EDDIEさんのブログを拝見したのですが、新しくなったMAD3っていうのは、破天荒でめちゃくちゃなことをしていた若い頃とはまた違って、もう「SEX&DRUG&ROCK’N ROLL」の時代は終わった、と。
EDDIE:本当にその通りで、まああのままやってたら今、俺生きてないんだけど(笑)。やっぱり今こうやって元気でやれてるのって、そういう風に考え方をシフトしてきたからで。世界的に見てもロックンロールって、黄金期には何やっても許されるみたいな、神的扱いをされたりして。やればやるほどみんな喜ぶっていうか。ある意味シリアルキラーなんかはたくさん殺した方がより英雄視されるみたいな。めちゃくちゃなロックンローラーって崇められたりしてたけど、そんなこと今やったら本当にはた迷惑で、社会の敵みたいになっちゃう。そういう時代にもなってるし、そんなことやってた人たちはみんな死んじゃったし。それはそれでロックに殉じていて良いんだろうけど、こうやって俺が今まだ生きてるっていうことは、生き方を変えなきゃなと思ったから。やっぱりなんだかんだ言って、ほら、愛がないとダメじゃないですか。音楽だって人生だって。ロックンロールもやっぱり人々を楽しませるっていうのが1番だから。愛情を持って音楽を奏でて、それでみんなで幸せになるっていうのが音楽の1番の目的だから。ロックンロールはそうあるべき。
──新しいMAD3ではそれを実践しようとしているわけですね。
EDDIE:そうだね。それが今回のアルバムに出てると思うんだよね。
──新しいメンバーの2人とは、ざっくり、どんな雰囲気でやっていますか。
EDDIE:ベースのBLONOがね、Black Leather Blitzってアルバムのツアーで福島に行ったときに見に来てたキッズなんですよ。中学生だったかな。すごい変な髪型してて。前髪パッツンでスレイドのギターみたいな(笑)。変わった子だなあと思ってなんとなく覚えてて。その子が東京に出てきて、The Shallowsっていうバンドをやってて、再会して。実は、The Shallowsの結成ってMAD3の解散ライブのときなの。だからそれもちょっと運命を感じて。で、彼のプレイを見たら、ゴールデン・カップスのルイズルイス加部みたいな、すごいハードなベースを弾くわけですよ。そういうベーシストを俺はずっと探してて、あの当時中学生だった彼がまさにそういうベーシストに成長してて。本人もMAD3が大好きで、必然的というか運命というか、一緒にやることになって。ドラムのHIRUTA君は、もともとギタリストなんですけど、ベースのBLONOの同郷の仲間で、やっぱりすごいセンスのいいドラマーで。その2人とだったら、MAD3を名乗ってもいいかなって。
──曲はだいたいEDDIEさんが作ってるんですか?
EDDIE:うん。今までもずっと、ほとんど99%は俺が作ってる。今回のアルバムは、ベースとドラムが1曲ずつ作ってて。1曲目のPROLOGUEをドラムのHIRUTA君が、MANDALANDの方をBLONOが作って。メンバーにも参加してもらって。前のMAD3からずっとワンマンでやってきたけど、やっぱりメンバー参加型でやった方が楽しいなと思って。
──ある程度、ギターで曲構成をかっちりやる感じなんですか?
EDDIE:オリジナルのMAD3のときはベースラインもドラムのフレーズも全部作ってたけど、今は枠組みだけを持ってって、みんなでセッションしながらやってる。だから今のMAD3の方が俺はやりやすいかな。こういう感じでやろうよってアレンジをして、それが自分が思ってる以上にかっこよかったり。化学反応というか、そういうのは楽しいですね。
──そういうところも、若い頃にはなかった感性というか、今のやり方になっていっているのかもしれないですね。
EDDIE:自分もだんだん歳をとって、感受性が鈍ったり、ロックンロール的な感性だってどんどん鈍ってるけど、BLONOは30、HIRUTA君はまだ20代で、パワーも全然違うし感性も豊かだし、すごく刺激になるっていうか、忘れてたものを思い出させてくれる。初期衝動とか、そういうのがまだあるので。
ニューアルバムはロックの歴史に対するオマージュ
──再結成から1年を経て、今回のアルバムが出るわけですが、どんな思いで制作したのか、またどんなアルバムになっているのかをお聞かせください。
EDDIE:バンドが現在進行形であるっていうことが1番感じて欲しいところなんだけど、あとはさっき言った、愛というか、聴く人に対する愛。若い時って、俺は人と違うんだとか、こんなにマニアックでかっこいいことやってんだぜ、っていうつっぱった感じがあると思うけど、今回はそういうのではなくて、タイトル曲で歴代のギターヒーローのメドレーを曲にしてるんだけど、ロックンロールの歴史に対するオマージュというか、敬意というか、そういうものをみんなで分かち合っていきたい。クリス・スペディングの曲で「ギタージャンボリー」っていう曲があって、それがやっぱりチャック・ベリーとかジミ・ヘンドリクスとかエリック•クラプトンとかいろんなギターヒーローのフレーズがメドレーで出てくるんだけど、それにインスパイアされてるんだよね。ここ何年かクリス・スペディングが来日した時にサポートをやって、「ギタージャンボリー」に対するアンサーソングというか、オマージュでもある。
──今回のアルバムはPINK FLOYDやSTEVIE RAY VAGHANなどカバーも入っていますが。
EDDIE:そうそう、カバー曲も元の曲をものすごくアレンジしながら作った。FOOD BRAINなんかは超マニアックでしょ(笑)。それはね、さっき言った元ゴールデン・カップスのルイズルイス加部が、俺が考えるに日本のロック史上最高のベーシストだし、この曲のベースのイントロのフレーズは世界的に見てもこんなに素晴らしいフレーズはないと思ってるから。MAD3のマニアックな面はこの1曲のカバーですごい表してるんじゃないかな。あと8曲目でPINK FLOYDの「INTERSTELLAR OVERDRIVE」っていう曲のカバーをやったけど、これもまあマニアックだけど、ポストパンク的な解釈でちょっと踊れる感じ、ノレる感じでやってみようって言って。ガレージっぽい解釈でプログレをやってみたんだよね。PINK FLOYDのファンって、ロックンロール目線であんまり見てないかも知れないけど、俺的にはシド・バレットってシド・ビシャスと同じくらいの存在で、すごいかっこいいロックンロールだと思ってるから、そういう感じでカバーしたんだよね。
愛しのSHELTERって曲を作りたい(笑)
──このアルバムを引っさげて、10月1日にはSHELTERでワンマンがあるわけですが、MAD3はSHELTER1年目から出ていただいています。思い出や印象に残っている出来事があれば教えてください。
EDDIE:SHELTERは青春が詰まってますね~。本当に楽しかった。美輪明宏の曲で「愛しの銀巴里」って曲があって、銀座の銀巴里っていうシャンソン喫茶店に16歳の時からずっと出ててそういう曲を作ったんだけど、俺もいつか「愛しのSHELTER」って曲を作りたいですね(笑)。印象深かったことは、もうありすぎてね~。いろんな恋愛もあったし、喧嘩もあったし、仲間と出会ったし、ハチャメチャだったけど楽しかった。去年、SHELTERに出た時は、俺の誕生日が近くてケーキまで用意してもらっちゃって、泣けてきちゃったよ(笑)。なんかSHELTERって、生き物みたいだよね。古い友達みたいな。久しぶり~、元気? って(笑)。
──去年使ったあの棺桶は捨てちゃったんですか(笑)?
EDDIE:いや、とってある(笑)。いつか黒に塗ってドラキュラバージョンをやろうと思って(笑)。あとは……もしもの時に使えるかな(笑)。
──10月のワンマンライブへの意気込みをお願いします。
EDDIE:持てるもの全てだそうかなと。ちょっとゲストミュージシャンも用意してて。ロックンロールの歴史を一晩で再現しようと思います。みんなの前でギターを弾けることが幸せでしょうがない。それを支えてくれるファンのみんなに感謝しかないです。感謝の気持ちを糧に、これからもギターを弾いていきたいですね。