いいロックンロールをやるのが僕らの使命
──『狂騒天国』以降のモードですね。
KOZZY:うん。原点に戻ってまたこの3人で活動して、必要最低限の荷物だけでやっていける形のほうがいまの時代に即してると思って。『狂騒天国』と『スリー・ホット・ミニッツ〜3人はアイドル〜』で身軽に戻れたし、いまやアメリカにだって身軽で行ける。沖縄や北海道へ行くのと同じ感覚でアメリカへ何度も行ってレコーディングしたり、ライブをやれてるからね。いまのマックショウならアメリカに限らず、どこにだって余裕で行けるよ。それがシンプルなロックンロール・バンドの本来の良さであり、役目なんじゃないかと思ってる。そんな意識で作ったのがここ3作のアルバムなんだよね。3人だけでシンプルにやるには強力な楽曲ときちんとした演奏が必要だってことで根詰めてレコーディングしたものの、こんなレベルじゃダメだって一からやり直してさ。それくらいの突き詰めた覚悟がないといけないっていうのは、初期とは全く違うところだよね。
──皆さんほどのキャリアと技量があれば、余興である程度のものはすぐに作れてしまいますしね。
KOZZY:この3人の名前で出せば何でもいいっていう初期みたいなシャレではもはや済まされないし、ちゃんとした責任を持った活動と楽曲作りをして若い連中の見本にならなくちゃいけないと思ってるからね。そんなことを言うガラじゃないのは重々承知の上でさ。若いヤツらの手本になるような活動ができないようじゃ人前に出るべきじゃないと思うし、生半可な気持ちで音楽をやってる地に足がついてないヤツらは自ずと淘汰されていくだろうしね。まぁそうは言っても、こんな歳にもなってこれだけキツい思いをしなくちゃいけないの!? って思うことは正直あるよ。他人から見ればただ遊んでるようにしか見えないだろうけどさ(笑)。
TOMMY:楽しそうにカープを応援してるだけにしか見えないかもしれないよね。カープの応援は実際楽しいけど(笑)。
──二度目の野音の公演プランはもう固まっているんですか。
KOZZY:ステージのセットとか構成がいつもとはちょっと違う程度で、やることはいつもと変わらないね。セットリストは今回のライブ盤と似たようなものになるだろうし、それにフルマックとか+αの要素が入る感じかな。時間の許す限り精一杯のことをやるつもりだけど、やっぱり第二期の集大成みたいなライブにはなるだろうね。それ以降はまたマックショウとして新たな形を模索していく段階になると思う。
──コージーさんの師匠にあたる森山達也さん率いるザ・モッズがマックショウの前日に同じ野音でライブをやるというのも象徴的なことだと思うんですよね。
KOZZY:モッズのほうで野音が2日連続で当たったので、森やんから「1日どうだ?」って誘われてね。僕らは僕らで何年かぶりに野音が当たって、最初は別の日にやる予定だったんだけど、せっかくの師匠からのお誘いだったので日にちを交換してやることにした。違うタイプかもしれないけど、老舗のロック・バンドを2日続けて見るのも面白いんじゃないかな。野音を聖地にした張本人の後にライブをやるプレッシャーはあるけどね(笑)。
──雨の野音、「TWO PUNKS」ですからね。
KOZZY:「野音という伝説の場所でライブをやるのはどんな気分ですか?」なんて訊かれても、僕らとしてはいつも通りにいいロックンロールをやって踊らせて、お客さんに楽しんで帰ってもらうしかないんだよ。それが僕らの使命だし、すべてはそれに向けて生きてるって言うかさ。いまさらカッコつけたところでカッコもつかないし、ただ純粋にいいロックンロールをやるだけ。
──こうなったらもう、マックショウもカープにならって野音で優勝あるのみですね。
KOZZY:カープみたいに地道にコツコツと鍛錬を重ねて優勝するしかないね。今回の優勝の原動力は黒田(博樹)と新井(貴浩)、それと緒方(孝市)監督というベテラン勢の頑張りだったのが僕らも励みでさ。みんないい歳でいつ野球をやめてもいいはずなのに、わざわざカープみたいな弱小球団一筋で孤軍奮闘するからシビレるんだよ。
──その一途な姿勢はロックンロールにも通じるものですよね。
KOZZY:そう思うし、だからこそシンパシーを感じるね。いまの時代、野球なり音楽なりに情熱を傾けるのは熱いどころか暑苦しいと思われる部分もあるだろうけど、そうやって生きていくのも一つの大事な選択肢だと僕は思う。「情熱を持って生きる」なんて、口にするとダサいけどさ。でも、僕らが見習うべきは黒田や新井みたいに一本気な生き方だからね。
──アスリートと違って、バンドマンには現役を引退するべき年齢の明確な線引きがないからハードですよね。
KOZZY:そうなんだよね。たとえば森山師匠もここ数年はコンディションの不調に悩まされて、ファンに対して思うようなライブを見せられないジレンマがあると思うんだよ。師匠はこれまで何度もピークを体験してきたし、僕なんかはもういつやめてもいいんじゃないですか? とすら思うけど、それでもやっぱり突き動かされる何かがいまだにあるんだよね。理由なき何かがさ。だからどれだけ体が故障してもステージに立とうとする。それは僕らも一緒、って言うとおこがましいけど、待ちわびるお客さんの前に立って演奏しなきゃいけないって気持ちは常にある。まぁ、僕らには師匠みたいなメッセージ性はないけどね。「ツイスト踊れば ロックンロール」なんて唄ってるだけだから(笑)。でも、それこそが僕らの役目だし、その役目をこれからも精一杯果たしたいと思ってるよ。