ストイックな2人
——話は変わりますが、日頃生活をしていて、職業病だなって思うことはどんなことがありますか?
卓偉:なんでもかんでも音楽にフィードバックしようとしてるってとこですかね。本当に好きで本も読んでて、本当に好きで映画も観ててっていうんだったら分かるんですけど、いい詩を書くためにとか、いい曲を書くためにとかっていう気持ちが捨てきれないんですよね。そこが情けないなと思いますね、やっぱり。かと言って、そこから影響を受けて、インスパイアが曲に活きたり、詩に活きたりすると、「あー、良かった」って思うんですけど。純粋に物事を楽しんでる感覚があるかって言ったら、ちょっと分かんないですね。
——それは結構昔からですか?
卓偉:若い頃はまだそれに気付けてなかったんだと思うんですけど。結局、何でもかんでもそっちに持っていこうとしてますね、多分。
——そうなんですね。葵さんはどうですか?
葵:僕は、何にしてもですけど、こっちに行けばきっと無難なんだろうなっていう道の逆を行こうとします。作品を作るにしても、歌詞を書くにしても、もっと沢山経験しないといけないなって思っています。ただ、普段生きている中で、なかなかそんなに沢山経験をすることって難しいじゃないですか。そういう中で、なにかないかなって普段思いながら生きているのが、職業病かなって。多分、音楽を辞めちゃったら、そういうことは一切考えないと思うんですよ。あとは、身体を鍛えたりもしますし。同年代の人に同窓会とかで会ったら、全然お父さんになってるし、そういう意味では見られることを意識するとか。あとは、今は髪の色も明るかったりもするんですけど、自分と同世代の人たちはしないようなことだったり、できるだけしないようなことを探してます。悪いことをするのではなく、自分の生活の中でできるだけはみ出ることがあったら面白いなって思いながら生きてますね。
卓偉:なるほど〜。分かります。
——今、身体を鍛えているっていうお話が出ましたが、ボーカルさんって基礎体力がすごく必要だと思うんですけど、身体作りのために、日頃どんなことをしてますか?
葵:僕はさっきもお話した通りスポーツをやってたんで、やっぱりはまっちゃうんですよ。やり過ぎないように気を付けてはいるんですけど、一応ボクシングをやってるんです。でもエクササイズ寄りのボクシングなので、あんまり試合とかはしないんですけど。
卓偉:縄跳びとか、そういう感じの?
葵:シャドウとかを練習したりとか。あとはマラソンを。これも最近、やり過ぎないようにしてるんですけど、3日に1回ぐらいは10kmくらい走ってます。
卓偉:10km!! すごいですね!
葵:走るようになってから、走りながら歌詞を覚えるんですけど、逆にそれをしないと覚えられなくなってきちゃって。なにか考えごとをする時に、動いてないとできなくなってしまって。最近はゲスト・ボーカルとして、自分が書いてない歌詞を覚える機会が多くて、なかなか入ってこなくて。
卓偉:僕なんて、自分で書いた歌詞が入ってこないからね。
一同:(笑)
葵:大丈夫です、僕もそうです(笑)。なので、走ることと、ボクシングとっていうのがあるんですけど。
卓偉:ボクシングはどれくらい続けてらっしゃるんですか?
葵:まだ1年弱です。
卓偉:それまでは全然やってなかったんですか?
葵:やってなかったです。数年前まではあんまり鍛えてなかったです。
卓偉:あっ、そうなんですか!
葵:あとは自転車をやったりとか。
卓偉:へー。筋トレとかもやったりするんですか?
葵:筋トレはあんまりやらないです。筋肉がすごいついちゃうんです。なのでボクシングも出来るだけ、腹筋とか背筋を鍛えるようにしてます。またライブのお話になっちゃうんですけど、卓偉さんのライブを観ていて、卓偉さんの体力ってすごいなって思いました。
卓偉:自分で言うのもなんですけど、デビュー前から僕も走ってるんですよ。やっぱりロックだっていう自分の意識があるので、太りたくないとか、見られてる商売だっていうことで、自分が鏡を見たときに驕りがないようにしたいと言うか。やっぱり細いパンツを、細いスーツを着たいっていう気持ちもあって。あとは自分が10代の時に、洋楽でもなんでも好きだったバンドの人たちが、歳をとってから思いっきり太っちゃったりとか、声も出なくなったりとか、ライブのMCで息が切れてたりとかして、それを見て、結構残念だったんですよね。そういうのもあって、やっぱり自分が、13〜14歳の多感にいろいろと物事を感じていた時の自分の感性を裏切りたくないっていう感覚がずっとあってですね。自分のためにやってるんですけど…。僕も10kmは走れないけど、多いときには7kmとか。ただここ3年くらいの間で、腰をやっちゃって。最近は、この間2ヶ月くらいジョギングを止めたりはしてたんですけど、やっぱりコンスタントにやってますね。
葵:僕、曲が終わってからのMCの前の長いのが嫌なんですよ。客席に背を向けちゃうじゃないですか。あれをできるだけしたくないなと思ってて。運動をする前は、結構息が上がっちゃってる状況で、それでしゃべるのが僕も嫌だったので、息を整えるために、水を飲んだりとかして、結構後ろを向いちゃってて。そのスパンが長いのが嫌で。出来るだけそこのオフの部分はステージ上では見せたくなくて。
卓偉:ドリンクは飲まないってことですか?
葵:一応飲むんですけど、あんまり背を向けないように最近は特に意識してます。
卓偉:お客さんの方を向いて、水を飲んでる感じ?
葵:そういう感じか、時間を短くしたりとか。
卓偉:なるほどね〜。
葵:そういうことを意識していくと、最終的には体力になっちゃうんで。そういうとこばっか、僕は見ちゃうんですけど。だから卓偉さんがすごい、僕の理想な感じだったんですよ。
卓偉:そんなに短かったですか?
葵:すっごい短かったです。
卓偉:ほんとですか! じゃあ、もっと長い人がいるってことですね。あんまり意識してないんですよ。
葵:自分が長いのかもしれないですけど。いやもう、すごかったです!
卓偉:いやいや、もう、とんでもないです。
葵:展開がすごい早かったです。
卓偉:いやいや、せっかちなだけなのよ(笑)。
葵:すっごい失礼なんですけど、僕もせっかちなんですよ。で、せっかちな人って、しゃべる時にいろいろな場所を触ったりしないですか?
卓偉:落ち着きがないよね。
葵:あっ、そうです! 落ち着きがないですよね。すごい似てるって思って。
卓偉:あー、なるほど。僕もいろんなところを触っちゃうから、後ろで手を組んでんのよ。何もしないように(笑)。
一同:(笑)
葵:組んでました(笑)。
卓偉:でも確かに、曲がバーンって終わって、「ありがとう!」って言って、すぐ次の曲に行かない場合の、次にMCが来るんだろうなっていう時があるじゃないですか。あの時の間が長いのは、確かに僕も嫌だなって思う部分はありますね。すごくそれは分かりますね。あと、ここのタイミングでボーカルがしゃべった方がいいっていうのがあるじゃないですか。そういうタイミングをつかないライブは、「あれ?」って思うことは確かにあるかもしれないですね。
葵:ちょっと話が戻っちゃうんですけど、ソロとバンドの違いって、そういう部分も多くある気がしていて。例えばバンドだったら、お客さんの目線は、僕がやっていたバンドは5人いたんで5分割されるじゃないですか。
卓偉:そうですね。好きなメンバーを見てますよね。
葵:ソロになると、たとえバンドスタイルでも自分が見られるじゃないですか。だから見られる意識が前より強くなったのかなって。例えば自分が休憩する部分があったとしたら、バンドだったら他のメンバーが補ったりもするじゃないですか。サポートの方にそれを頼むのもちょっと違うなって思うと、そういうのも意識してるのかなって思ったり。
卓偉:う〜ん、もう17年もやってきちゃったんで、そういう意識が今あるかって言ったら、もう染み付いているのかもしれないですけど、確かにバンドの時をもう思い出せない感覚にもなってますね。やっぱりそこは堂々と自分を観に来てくれてるから、自分を見せるためにっていう。だからギターソロとかも別に休みじゃないっていう感覚が、やっぱりソロだとありますね。そういうタイミングってありますね。
葵:そこは、他のバンドのライブを観る時と違う目線で、僕は勉強させてもらってます。
——お2人のお話を聞いていて、私もそういう目線でライブを観てみたいなって思いました。
卓偉:やっぱり空気感とか、間ってあるんですよね。
葵:そう思ってライブを観ていただくと、結構面白いと思いますよ。いろんなアーティストさんの考え方とかが見えたりとか。
——そうですね。新しい部分の発見とかがありそうですね。
卓偉:そこもひっくるめてエンタテイメントっていう風に思ってますよね。そういう感覚ですね。だからなかなか難しいですけど、本当はそういう照明が切れるタイミングとか、インになるタイミングとかも、実を言うとワンマン・ライブの時はもっと拘ってるんですけどね。そこがはっきりすると、より歓声が大きくなったりすることってあるじゃないですか。イベントだと、なかなかね、そこまで詰めれないっていうのはあるんですけど。