いまが100%だとしたら、次はやっぱり150%求めなきゃいけないし
──そうして出来た新作アルバムですけど…タイトルが『Still Can't The Dead』。コレは“まだ死ぬワケにはいかないぞ”とか、そんな意味ですか?
藤田:そうですね。本来の文法だと、Can'tの後に動詞のBeが入るんですけど、でもここは語呂的に…。
──凄くいまのDOOMが出たアルバムになったと思うんですね。
藤田:うん…自分でも気に入って、今回のアルバム、何回も聴いてるんだけど、緊張感とか、懐かしさとか、それらが上手い具合に表現できたアルバムになったかなって。それがDOOMらしいかDOOMらしくないかは分かんないですけど。いまの3人が、いま表現できるアルバムにはなったんじゃないかなっていう。
──DOOMって、80年代から90年代にかけて活動してる間に、いろいろと音楽性の幅を広げていったバンドだったと思っているんですけど。今回はいまのDOOMの幅広さっていうのが、凄く出ているアルバムだと思うんですね。
藤田:はい。
──往年を思わせるスラッシュ・チューンあり、また全然違ったテイストのモノもある。
藤田:よりロックっぽくなったかなっていうような気がしますね、自分ではね。
──それは、昨年リリースされたCASBAHの新作もそうでしたけど、“大文字のロック”みたいな。ジャンルとしてのへヴィ・メタルじゃなくて、大きな括りとしてのロックみたいなところが、それぞれあると言うか。
藤田:時代が回る、じゃないですけど、基本姿勢に戻るんじゃないかなって。どのバンドも。それが、時代が回って新しいモノに感じたりとか。
──特に今回のアルバムは「Siesta…」とか「Ibiza」とか、かつてのDOOMになかったようなテイストがあって、それがアルバム全体のダイナミズムを広げていると言うか、そういう印象があるんですね。
藤田:うん。「Ibiza」に関しては、他の曲の間奏に入る予定だった部分なんだけど。古平くんがフレーズを持ってきて、「コレを入れたらどうですか?」って。でも、最終的にその曲間に入れると、ちょっと違うな…ってことで、ボツになっちゃったんだ。でも完全にボツにするにはもったいないから「じゃあ曲にしようよ」ってことで。
──アルバムを聴いて思うのは、スタジオで試行錯誤してとか、スタジオに入ってから作り上げたっていう感じがないですよね。バンド感とか一体感みたいなのが凄い。試行錯誤感とかツギハギ感とかが一切感じられない作りになってますよね。
藤田:もしそれが分かっちゃうようだったら、多分NGだったんだね。そうじゃないところでの合格ラインがあったんで。それが表現できるよう、各個人が頑張ってたって言うか、まぁそれなりのプレッシャーを抱えてやってたし。でも、結果は良かった。
──特に「Ibiza」みたいな、スローなパートで、古平さんのフレットレス・ベースが凄くイイんですよね。随所で、諸田さんとはまた違った持ち味みたいなのが、ちゃんと出せてると思うんです。
藤田:うん。いままでのアルバムの曲を演るにあたっても…ライブでね、「別に同じにする必要ないから」とは言ってあって。「自分の表現できる範囲で、表現しやすいフレーズにして」っていうことは、常に言ってて。高円寺の時かな、去年の11月のライブ、BAKI(ex.GASTUNK、現MOSQUITO SPIRAL)が観に来ててね。BAKIちゃんから、古平が、「諸田くん超えたね」って言われて。まぁ確かに、いいライブしてたんで。だからそういう言葉をもらったことが彼の自信になってくだろうし、いいんじゃないかなって。
──BAKIさんとは、QUATERGATEを一緒にやってましたもんね。そういう人から、「諸田さんを超えた」って言ってもらえたら、凄いですよね。
藤田:そうですね。それ以前からずっと、観に来てもらってて、ずーっとちょっと、イライラする部分があったらしくて(笑)。BAKIちゃん的にはね。だけど、ライブごとにそういう意見もらうことが、一番、彼のためにもなるし、俺らのためにもなることだから。そういう仲間ってイイですよね。悪いにしろイイにしろ言ってくれるっていうのが。悪くても、「悪い」って言ってくれる人、いないじゃないですか。悪い時は悪いって言ってくれる仲間がいるっていうのはイイからね。
──その点、いまだに進化とか成長の途上にあるというのが、凄いですね。
藤田:でも、もし進化がなくなっちゃったら、多分やんないと思うよね。いまが100%だとしたら、次はやっぱり150%求めなきゃいけないし、200%も…もっともっとっていうのは、常に、持ってなきゃいけないことだと思うし。
基本の姿勢って言うか、根本は変わってない
──オリジナルのDOOMがやってた80年代後半とは、もうシーンがまったく変質してるワケじゃないですか。いまは、バンドはむしろ当時より多いかもしれないですけど、なんかカジュアルになっちゃったと言うか…。
藤田:カジュアル…うん。なんか、皆さんユニクロになっちゃったなって言うか。
──言い得て妙ですね(笑)。
藤田:いい意味でも悪い意味でも、音楽って既製品じゃいけないんじゃないかな、くらいなことは思ってて。もっといろいろなことやっていいはずだし、敷かれたレールの上だけ走っている必要はないし。音楽って、教習所とは違うと思うんで。…とか、偉そうに、親父の愚痴みたいに言ってるけど(笑)、でも実際、なんかあまりにも教則本に沿い過ぎてて…音楽って、ハプニングが面白いし、緊張感があったほうが、もっと実感としてお客さんに伝わりやすいんじゃないかなとか。CD聴いててもライブ観てても、同じようなバンドが多過ぎちゃって、イベント観ると仲良しこよし過ぎるっていう…。
──80年代のインディーズ・ブームの頃にやってた人に何回かインタヴューしたことありますけど、同じようなことを言っている人は、いましたね。狂気がなくなった、みたいな。
藤田:うん。
──DOOMは特に、当時のメタル勢の中でも…僕はライブ観てないですけど、雑誌でライブ・レポート読むだけでも、殺気立った感じってのは凄く伝わってくるバンドだったので。
藤田:もちろん、ライブハウス自体が、もっと怖い場所だったっていうのも確かだしね。音楽やるにあたって、凄くいい状況って言うか、いい時代にはなったと思う。ただ、便利が邪魔しちゃってるって言うか…便利さが逆に音楽を壊しちゃってる部分って、かなりあると思うし。
──昔、パフォーマンス抜きに流血してる人とかよくいましたよね(笑)。
藤田:そうそう(笑)。訳もなく殴られてる人間とか。ライブ始まってないのになんか血を流してる奴とか(笑)…不条理なこといっぱいあったからね。
──ステージにいろんなモノが飛んできたりとか。
藤田:そうそう(笑)。…みんな、そんな中で自分探しって言うか、自分の位置決めって言うか、ファン一人をとっても、そういう位置を探していたり、バンドのメンバーだって探してたし。ステージに上がる以上、闘いだと思わないといけないと思うんだよね。(いまは)あんまりにもなぁなぁ過ぎるって言うか…なんか、伝わってくるモノがない。それが一番問題だな…というところに、気がついてないって言うか…。
──シーンは変わりましたし、やってる本人たちもそれなりに歳もとって、自分自身も変わってるっていうのは…。
藤田:うーん…もちろん、姿形は変わったけど(笑)、でも基本の姿勢って言うか、根本は変わってないよ。
──あの頃といまで、バンド活動に対するモチベーションとか取り組み方って、基本変わってないですか。
藤田:変わってないです。まぁ、年相応に守るべきモノは増えたかもしれないけど、でも、それはそれ、コレはコレ? いまはいまで、やるからにはやんないと、自分が納得しないし、ケツ叩いてくれた周りのスタッフも、バンドのメンバーも納得しないだろうし。もちろんそれに応えなきゃいけないからね。
──DOOMっていうのは、特にある意味“昔の名前で出ています”みたいな復活は絶対に許されないバンドになっちゃってる感が。
藤田:なっちゃったんですかねぇ?(笑)
──僕はそう思います(笑)。
藤田:…凄く重く考えちゃうと、幾らでも重くなっちゃうじゃない? …ましてやメンバー一人亡くなっちゃってるし。でも、いろんなことがあるのはみんな同じだし。それをどう活力にするかの問題で。…だから、俺は俺のスタイルで考えて、やればいいことだし、それを音にして伝えられれば一番いいことだと思う。多分今回のアルバムも、「DOOMらしくねぇ」と思う人たちもいるかもしれないし。それはそれで、俺はちゃんと意見聞くし。逆に意見聞きたいと思うし。もっとこうしたらいいよ、ああしたらいいよっていう…もしあれば。それを聞いたからって、多分直さないと思うけど(笑)。
(一同笑)
藤田:「へ〜」ぐらいにしか聞かないと思うんだけど(笑)。でも、個人的には凄く…何か言ってくれることが嬉しいんですよ。それが批判にしろ。言って欲しいっていうのは、常々思ってる。いいことだけじゃなくて。けっこう昔から何誌もインタビュー受けたりして、「あのライブは良かったですね」っていうのはよくあるけど、「あのライブ最悪でしたよね」って言う人は、いないじゃないですか(笑)。でも、そういうのを聞きたいんです(笑)。言ってもらえることが俺らの力になるし。いいにしろ悪いにしろね。