Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューDOOM(Rooftop2016年3月号)

以前のDOOMを超えなきゃいけないし、アルバム作るにしても前作を超えなくちゃいけないし…っていう部分では、もの凄く考えた

2016.03.01

 2014年、まさかの復活を果たしたジャパニーズ・スラッシュ・オリジネイターの一角・DOOM。昨年、CD2枚組で再発された1stアルバム『NO MORE PAIN 〜COMPLETE EXPLOSIONWORKS SESSION〜』も大きな話題となったが、何より注目なのは現在進行形の彼らだ。そこに登場するのが実に16年ぶりとなる新作アルバム『Still Can't The Dead』。現在の編成はオリジナル・メンバーである藤田タカシ(g, vo)を中心に、後期DOOMを支えたPAZZ(ds、GASTUNK他でも活躍)、元CASBAHの古平崇敏(b)の3人。藤田に話を聞いた。このWeb版インタビューは"完全版"として、紙で出たRooftop本誌の約3倍のボリュームでお届けします。(interview:大越よしはる/photo:菊池茂夫)

メタルあんまり聴かなかったんですよ、実際は

──16年ぶりの新作ということで。

藤田:そうですね。

──DOOMというバンドは…グニョングニョンのフレットレス・ベースをフィーチュアしてスラッシュ・メタルを演るという、当時、世界的にも類を見ないバンドでしたね。

藤田:それ、他のインタビューでも言われたんですけど(笑)、まぁ、諸田(諸田コウ:オリジナル・ベーシスト。1999年死去)がジャコ・パストリアスとかミック・カーンが好きでしたからね。

──ただ、諸田さんのフレットレス・ベースがよく特徴として挙げられますけど、藤田さんと広川さん(広川錠一/オリジナル・ドラマー)もかなり異常なことをやってましたよね。

藤田:三人三様って言うか、みんな、お互いがお互いで信頼してやってた部分、それを表現した最終形がああいう形になったって言うか。

──藤田さんは70年代からバンドをやってらしたと聞きますけど、元々どの辺のギタリストから影響を受けて、ギターを弾き始めたんですか?

藤田:初めは…ウチ、お姉ちゃんがいたんですよ、8つ上の。元々は、フォークって言うか…(井上)陽水さんから入って。それから、SANTANAとか、GRAND FUNKとか、お姉ちゃんが好きな音楽を、家で耳にしながらも、中学校、高校と上がるにつれて、先輩に「カッコいいから聴け」って、いろいろ… ジミ・ヘンドリックス然り、BEATLES然り。で、中学ぐらいからLED ZEPPELINのコピー・バンドをし始めて、中学の文化祭や発表会でやり始めたり。あと、16歳で福生のライブハウスでデビューしてるから、その辺りから割と本格的に…。まぁそれをプロって言うかどうかは分かんないけど。16歳くらいから基地の中に出入りするようになったり、基地周りのライブハウスに出るとか。一番大きかったのは、そういう環境があったり、付き合う人間がやっぱり、先輩が多かったんで。福生なんかは特に、そういう諸先輩方がけっこういたんで、そういった環境が自分に刺激を与えてたし、自分の元になるモン作ってくれたって言うか。環境って大きいよね。

──そんな中でも、独特のノイジーさがあるギターっていうのは…どこら辺からああいうふうになっていったんですか?

藤田:ノイジーさ…どの辺ですかね?(笑)

──いま名前が出てきたような、70年代のロックとかにはなかった要素じゃないですか。80年代…New Wave Of British Heavy Metalとかが盛り上がってきた辺りから、ああいうふうになったのかなと。

藤田:あのね、メタルあんまり聴かなかったんですよ、実際は。

──あ、そうなんですか?

藤田:うん。どっちかって言うとニュー・ウェイヴとかパンクとか。あとはオールド・ロック…日本だったらFLOWER TRAVELLIN' BANDとか、その手の音のほうが好きだったし。NWOBHMって言うけど、新しいモノに感じない部分もあったんで、割とメタルのほうを追いかけた覚えないんだけど。まぁ、コレいいよ、アレいいよって言われて、聴いたことはもちろんあるし、観に行ったこともあるし。でもどっちかって言ったら、ニュー・ウェイヴとかパンクとかオールド・ロックのほうが… あとはプログレ? なんでも、いいモノは聴くっていう体勢でいたから。それももちろん先輩の方々に教えてもらって、耳にしてって習得したっていう。いまみたいにネット社会じゃないんで、結局、自分で探っていくしかなかったっていうのもあります。

──DOOMというバンドは、ハード・ロックがあり、パンク的な要素があり、一方でプログレもあり。不可分に、ごっちゃになってたバンドだと思うんですけど。

藤田:うん。

──誰それがそっちのジャンルが好きだとかじゃなくて、割と3人ともが雑食だった?

藤田:基本、諸田コウはジャズだったり。その反面VENOMだったり、MOTORHEADだったり。当時のドラマーの広川は、POLICEだったりKISSだったりっていう、割とメジャー的な音を使うバンドが好きだった。俺は、どっちかって言うとアヴァンギャルドだったりニュー・ウェイヴだったり、ポジパンだったりハードコア…俺が一番ヘンだったのかもしれない(笑)。

──白塗りメイクも、よくKISSの影響って言われていることが多かったですけど、実際にはゴスとかポジパンとか…?

藤田:もちろんポジパンだし…あの…寺山修司さん。

──ああ!

藤田:…とか、あと山海塾とか。どっちかっつったらあっちなんです。KISSじゃない。

──KISSじゃないんじゃないかと思ってたんですけど(笑)。

藤田:(笑)。KISSのワケがないですよね、あんなヘンなのがね。

 

諸田コウを超えるっていう話をしてしまうと、重荷になってしまう

──復活の際に、まずやっぱりベースはどうなる? っていうのは大きかったですよね。さらに、ドラムにしてもPAZZさんなのか広川さんなのかっていうのはあったと思うんですけど。その辺の人選って言うか、流れは自然なものでした?

藤田:やっぱりちょっと考えましたけど、広川にも「DOOMの再結成しないの?」みたいな話もされてたし、PAZZからももちろんあったんです。そこで、どう選ぶかっていうのは、いまどう動いてるかっていうのがまず大事だなと思って、実際、現役として経験が多かったPAZZにお願いして。まぁ、奴はイヤだと言うワケないんで(笑)。じゃあベースをどうしよう…と。それは一番悩んだところではあるけど。実際、“諸田コウを超える”っていう話をしてしまうと、重荷になってしまうから。まず、フレットレスでもフレッテッドでもいいんで、“自分のベース”が弾ける人間、っていう考え方…で、CASBAHでも観てるし、DOOMのトリビュート・バンドとしても活動してた、古平っていう名前が挙がって。

──古平さんは、二つ返事でした?

藤田:「嘘でしょ!?」って言ってましたけど(笑)。信じられなかったみたいですね。彼も、お客さんで観に来てたんです。諸田コウでベースを始めたっていうところもあるんで。だから、まず彼の口から出たのは「嘘でしょ!?」って言葉と、「今回のDOOMはいつまでやるんですか?」っていう話をされて(苦笑)。「いや、ずっとやろうと思ってんだけど」って話をして。「分かりました」という…。

──復活するにあたって、意識した…新たな方向性って、あったんじゃないかと思うんですけど。

藤田:方向性はね…以前のDOOMを超えなきゃいけないし、アルバム作るにしても前作を超えなくちゃいけないし…っていう部分では、もの凄く考えた。それは、自分だけじゃなく、ドラマーにしろベースにしろ、けっこうプレッシャーになったのかもしれないです。

──それは、いい意味でも悪い意味でも。

藤田:結果が良ければ良かったんで、多分良かったんだと思うんです。ただ、ベースの古平にしてみれば、凄く重荷になったのかなぁと思う(笑)。常に奴は、“諸田コウ”っていう存在と闘っていると思うし。まぁそれが彼を育てていくっていうか…偉そうだけど(笑)。

 

レコーディングやりながら組み立ててってる

──…さて、いよいよ新作の話ですけど。実際の制作期間って、どれくらいだったんですか?

藤田:実際、ミックスまでは20日間くらい。

──早い!

藤田:多分、長くてもダメだと思うんですよ、俺らみたいなのは。甘えちゃうだけで(笑)。『KILLING FIELD…』作った時も、2週間だったし。

──そんなもんですか!

藤田:そうです。でも実際、多くの時間や期間を与えられても、いいモノが出来るかって言うと…(今回も)与えられた時間でやろうとは思ってて。でも実際、(予定より)ちょっとはみ出した…。与えられた期間でやるのが、まぁ仕事としての、当たり前のことで。そこは割と仕事として捉えるって言うか。まぁはみ出してしまったっていうのはあるんだけど、そこは結果出しますよっていうことで、お応えするしかない。それ以前に、曲作るのがやっぱ凄く難しいって言うか…まぁ毎回なんですけど。今回も、去年の3月から、ぼちぼちやり始めてはいたんだけど、その間にツアーやそのリハーサルも重なってくるし、『NO MORE PAIN…』の再発に関しての計画などで、いろいろ考えることがあって、時間だけがどんどん経っていって。実際、さぁレコーディング…って、去年の8月のお盆近くだったんですけど、曲は上がってないんですよ。

──上がってなかったんですか?

藤田:上がってないんですよ。大枠はもちろん出来てたけど。曲にしてったのはレコーディングの最中ですよ。

──そうなんですか!

藤田:うん。でもコレは、毎回そうなんですよ。レコーディングやりながら組み立ててってるって言うか、それぞれが考えたモノを、アイディア出しながら組み立てていくっていう作業が。レコーディングのエンジニア的には凄く大変な作業だと思うんですよ。何をやってんのか分からない、みたいな(笑)。DOOMが、やっぱ特殊なんで…。変拍子だとか、起承転結があったりとか。俺だけがその最終的な情景って言うかを、うっすら分かってるワケ。

──頭の中にしかない。

藤田:そう。他のメンツには分からない。

──本当に、スタジオの中で作り上げられていったんですね。

藤田:うん。

 

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Still Can't The Dead

diskunion/13th REAL RECORDINGS 13RR-1003
定価:2,700円+税
2016年3月2日(水)発売

【収録曲】
1. Introduce 99s Life... Getting Lies
2. All Your Fears
3. The Folly and Slice
4. Still Can't The Dead
5. Siesta...
6. Which One...!?
7. All That is Gone
8. Ibiza
9. Never Seen... The God

LIVE INFOライブ情報

DOOM///S/C/T/D TOUR 2016
3月6日(日)千葉 LOOK
3月20日(日)札幌 KLUB COUNTER ACTION
4月3日(日)仙台 BIRDLAND
5月1日(日)名古屋 APOLLO BASE
5月3日(火・祝)福岡 KIETH FLACK「TWEAK FREAKS」
5月4日(水・祝)広島 MUGEN5610「HOWLING COMMUNICATION special」
5月5日(木・祝)大阪 KING COBRA
5月29日(日)新代田 FEVER(ワンマン)

J Birthday LIVE 2016 -Special 2 Nights-
8月11日(木・祝)赤坂 BLITZ

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