2014年、まさかの復活を果たしたジャパニーズ・スラッシュ・オリジネイターの一角・DOOM。昨年、CD2枚組で再発された1stアルバム『NO MORE PAIN 〜COMPLETE EXPLOSIONWORKS SESSION〜』も大きな話題となったが、何より注目なのは現在進行形の彼らだ。そこに登場するのが実に16年ぶりとなる新作アルバム『Still Can't The Dead』。現在の編成はオリジナル・メンバーである藤田タカシ(g, vo)を中心に、後期DOOMを支えたPAZZ(ds、GASTUNK他でも活躍)、元CASBAHの古平崇敏(b)の3人。藤田に話を聞いた。このWeb版インタビューは"完全版"として、紙で出たRooftop本誌の約3倍のボリュームでお届けします。(interview:大越よしはる/photo:菊池茂夫)
メタルあんまり聴かなかったんですよ、実際は
──16年ぶりの新作ということで。
藤田:そうですね。
──DOOMというバンドは…グニョングニョンのフレットレス・ベースをフィーチュアしてスラッシュ・メタルを演るという、当時、世界的にも類を見ないバンドでしたね。
藤田:それ、他のインタビューでも言われたんですけど(笑)、まぁ、諸田(諸田コウ:オリジナル・ベーシスト。1999年死去)がジャコ・パストリアスとかミック・カーンが好きでしたからね。
──ただ、諸田さんのフレットレス・ベースがよく特徴として挙げられますけど、藤田さんと広川さん(広川錠一/オリジナル・ドラマー)もかなり異常なことをやってましたよね。
藤田:三人三様って言うか、みんな、お互いがお互いで信頼してやってた部分、それを表現した最終形がああいう形になったって言うか。
──藤田さんは70年代からバンドをやってらしたと聞きますけど、元々どの辺のギタリストから影響を受けて、ギターを弾き始めたんですか?
藤田:初めは…ウチ、お姉ちゃんがいたんですよ、8つ上の。元々は、フォークって言うか…(井上)陽水さんから入って。それから、SANTANAとか、GRAND FUNKとか、お姉ちゃんが好きな音楽を、家で耳にしながらも、中学校、高校と上がるにつれて、先輩に「カッコいいから聴け」って、いろいろ… ジミ・ヘンドリックス然り、BEATLES然り。で、中学ぐらいからLED ZEPPELINのコピー・バンドをし始めて、中学の文化祭や発表会でやり始めたり。あと、16歳で福生のライブハウスでデビューしてるから、その辺りから割と本格的に…。まぁそれをプロって言うかどうかは分かんないけど。16歳くらいから基地の中に出入りするようになったり、基地周りのライブハウスに出るとか。一番大きかったのは、そういう環境があったり、付き合う人間がやっぱり、先輩が多かったんで。福生なんかは特に、そういう諸先輩方がけっこういたんで、そういった環境が自分に刺激を与えてたし、自分の元になるモン作ってくれたって言うか。環境って大きいよね。
──そんな中でも、独特のノイジーさがあるギターっていうのは…どこら辺からああいうふうになっていったんですか?
藤田:ノイジーさ…どの辺ですかね?(笑)
──いま名前が出てきたような、70年代のロックとかにはなかった要素じゃないですか。80年代…New Wave Of British Heavy Metalとかが盛り上がってきた辺りから、ああいうふうになったのかなと。
藤田:あのね、メタルあんまり聴かなかったんですよ、実際は。
──あ、そうなんですか?
藤田:うん。どっちかって言うとニュー・ウェイヴとかパンクとか。あとはオールド・ロック…日本だったらFLOWER TRAVELLIN' BANDとか、その手の音のほうが好きだったし。NWOBHMって言うけど、新しいモノに感じない部分もあったんで、割とメタルのほうを追いかけた覚えないんだけど。まぁ、コレいいよ、アレいいよって言われて、聴いたことはもちろんあるし、観に行ったこともあるし。でもどっちかって言ったら、ニュー・ウェイヴとかパンクとかオールド・ロックのほうが… あとはプログレ? なんでも、いいモノは聴くっていう体勢でいたから。それももちろん先輩の方々に教えてもらって、耳にしてって習得したっていう。いまみたいにネット社会じゃないんで、結局、自分で探っていくしかなかったっていうのもあります。
──DOOMというバンドは、ハード・ロックがあり、パンク的な要素があり、一方でプログレもあり。不可分に、ごっちゃになってたバンドだと思うんですけど。
藤田:うん。
──誰それがそっちのジャンルが好きだとかじゃなくて、割と3人ともが雑食だった?
藤田:基本、諸田コウはジャズだったり。その反面VENOMだったり、MOTORHEADだったり。当時のドラマーの広川は、POLICEだったりKISSだったりっていう、割とメジャー的な音を使うバンドが好きだった。俺は、どっちかって言うとアヴァンギャルドだったりニュー・ウェイヴだったり、ポジパンだったりハードコア…俺が一番ヘンだったのかもしれない(笑)。
──白塗りメイクも、よくKISSの影響って言われていることが多かったですけど、実際にはゴスとかポジパンとか…?
藤田:もちろんポジパンだし…あの…寺山修司さん。
──ああ!
藤田:…とか、あと山海塾とか。どっちかっつったらあっちなんです。KISSじゃない。
──KISSじゃないんじゃないかと思ってたんですけど(笑)。
藤田:(笑)。KISSのワケがないですよね、あんなヘンなのがね。
諸田コウを超えるっていう話をしてしまうと、重荷になってしまう
──復活の際に、まずやっぱりベースはどうなる? っていうのは大きかったですよね。さらに、ドラムにしてもPAZZさんなのか広川さんなのかっていうのはあったと思うんですけど。その辺の人選って言うか、流れは自然なものでした?
藤田:やっぱりちょっと考えましたけど、広川にも「DOOMの再結成しないの?」みたいな話もされてたし、PAZZからももちろんあったんです。そこで、どう選ぶかっていうのは、いまどう動いてるかっていうのがまず大事だなと思って、実際、現役として経験が多かったPAZZにお願いして。まぁ、奴はイヤだと言うワケないんで(笑)。じゃあベースをどうしよう…と。それは一番悩んだところではあるけど。実際、“諸田コウを超える”っていう話をしてしまうと、重荷になってしまうから。まず、フレットレスでもフレッテッドでもいいんで、“自分のベース”が弾ける人間、っていう考え方…で、CASBAHでも観てるし、DOOMのトリビュート・バンドとしても活動してた、古平っていう名前が挙がって。
──古平さんは、二つ返事でした?
藤田:「嘘でしょ!?」って言ってましたけど(笑)。信じられなかったみたいですね。彼も、お客さんで観に来てたんです。諸田コウでベースを始めたっていうところもあるんで。だから、まず彼の口から出たのは「嘘でしょ!?」って言葉と、「今回のDOOMはいつまでやるんですか?」っていう話をされて(苦笑)。「いや、ずっとやろうと思ってんだけど」って話をして。「分かりました」という…。
──復活するにあたって、意識した…新たな方向性って、あったんじゃないかと思うんですけど。
藤田:方向性はね…以前のDOOMを超えなきゃいけないし、アルバム作るにしても前作を超えなくちゃいけないし…っていう部分では、もの凄く考えた。それは、自分だけじゃなく、ドラマーにしろベースにしろ、けっこうプレッシャーになったのかもしれないです。
──それは、いい意味でも悪い意味でも。
藤田:結果が良ければ良かったんで、多分良かったんだと思うんです。ただ、ベースの古平にしてみれば、凄く重荷になったのかなぁと思う(笑)。常に奴は、“諸田コウ”っていう存在と闘っていると思うし。まぁそれが彼を育てていくっていうか…偉そうだけど(笑)。
レコーディングやりながら組み立ててってる
──…さて、いよいよ新作の話ですけど。実際の制作期間って、どれくらいだったんですか?
藤田:実際、ミックスまでは20日間くらい。
──早い!
藤田:多分、長くてもダメだと思うんですよ、俺らみたいなのは。甘えちゃうだけで(笑)。『KILLING FIELD…』作った時も、2週間だったし。
──そんなもんですか!
藤田:そうです。でも実際、多くの時間や期間を与えられても、いいモノが出来るかって言うと…(今回も)与えられた時間でやろうとは思ってて。でも実際、(予定より)ちょっとはみ出した…。与えられた期間でやるのが、まぁ仕事としての、当たり前のことで。そこは割と仕事として捉えるって言うか。まぁはみ出してしまったっていうのはあるんだけど、そこは結果出しますよっていうことで、お応えするしかない。それ以前に、曲作るのがやっぱ凄く難しいって言うか…まぁ毎回なんですけど。今回も、去年の3月から、ぼちぼちやり始めてはいたんだけど、その間にツアーやそのリハーサルも重なってくるし、『NO MORE PAIN…』の再発に関しての計画などで、いろいろ考えることがあって、時間だけがどんどん経っていって。実際、さぁレコーディング…って、去年の8月のお盆近くだったんですけど、曲は上がってないんですよ。
──上がってなかったんですか?
藤田:上がってないんですよ。大枠はもちろん出来てたけど。曲にしてったのはレコーディングの最中ですよ。
──そうなんですか!
藤田:うん。でもコレは、毎回そうなんですよ。レコーディングやりながら組み立ててってるって言うか、それぞれが考えたモノを、アイディア出しながら組み立てていくっていう作業が。レコーディングのエンジニア的には凄く大変な作業だと思うんですよ。何をやってんのか分からない、みたいな(笑)。DOOMが、やっぱ特殊なんで…。変拍子だとか、起承転結があったりとか。俺だけがその最終的な情景って言うかを、うっすら分かってるワケ。
──頭の中にしかない。
藤田:そう。他のメンツには分からない。
──本当に、スタジオの中で作り上げられていったんですね。
藤田:うん。