石膏4人を主役にしかもアイドルで、という誰も想像がつかない作品がまさかのアニメ化。このシュールで斜め上をいく作品はどのように作られているのか?アニメファンでなくとも気になるこの"石膏ボーイズ"の制作裏側を監督・プロデューサーに語っていただきました。
(interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A)
© ザリガニワークス・KADOKAWA・ホルベイン画材/石膏ボーイズ製作委員会
全然想像できなかったんです
——まずはこの企画が動き始めた経緯を伺えますか。
柴(宏和):昨年2月頃に宅野(誠起)さんに新しく監督してもらう作品を決めたいなと思っていた時、いくつか魅力的な作品を頂いていたんです。その中にまだ企画書段階のものがあって、石膏像がアイドルをする話ですと書いてあったので、コレ面白いなと名乗りを上げたのが始まりです。ホルベイン画材という老舗画材メーカーが自社の商品を売る時に新しく立ち上げた企画をKADOKAWAさんとザリガニワークスさんと組んで知恵を絞って「アイドルにしちゃえばいいじゃん」と思いついたのが元々の企画だと伺っています。
——すごい発想の企画ですね(笑)。企画を持ってこられた時の第一印象はどうでした。
宅野:最初に聞いたときは全然想像できなかったんです(笑)。先方に最初お話を伺ったときもまだ企画段階ということもあってフワッとしていました。
——画材メーカーですとこういった経験がないですよね。
宅野:どういうものを求められているかがわからない中、我々ができるのは普通のアニメーションなのでその技術を使って進めていこうと決めました。
——石膏にはモデルとなる人物もいますし、よくある擬人化に寄せることも多いと思うんですけど、そうしなかったのはなぜなんですか。
柴:確かに石膏像をSDキャラにする案や擬人化も手段としてありました。
宅野:石膏だともとに戻す形ですから擬人化じゃないですけどね(笑)。ただ、石膏に一番馴染みがあるのは美大生だと思うんです。その馴染みある石膏から離れてしまうのは違うんじゃないかということで今の形になりました。そうやって企画を進めていく中でフックとなったのがマネージャーの石本(美希)が石膏に嫌気がさしてココに来たという部分だったんです。
——そこでフックを見つけるというのがすごいです。それでもアイドルは歌って踊って笑うという真逆の存在ですが、どのようにその点をクリアーされたんですか。
宅野:アニメは動いて色や表情があるものなのに石膏は動かしようがなく画面も活気づかないので、本当に難しかったです。ほかにできることといえば背景を漫画のようにイメージシーンで表現する方法です。そういう事をやっていく中で作品が見えてきたというのはあります。それでも動かないぶん声の力が大きいので、重要なのはキャストだろうと思いました。
——選ばれるときはどういった点を重視されましたか。
柴:昨今こんなとんがった作品がないからなのか、ありがたいことに多くの声優の方にオーディションへ来ていただけました。
宅野:そんな中で決め手になったのは、演技力とギャグセンスです。主役の杉田(智和)さん、立花(慎之介)さん、福山(潤)さん、小野(大輔)さんとは私と年が近いという事もあり、良いチーム感ができました。ほかにも上手い方にたくさん参加していただけたんですけど、大御所の方が入ると気を使ってしまうので、求めていたチーム感がなくなってしまうという事で、この4名にお願いすることになりました。
——実際にアフレコになるとキャラクターが石膏ですし演技力が相当必要だと思います。この世界で受け入れられているというのを表現する事にキャストの皆さんは悩まれたりとかはなかったんですか。
宅野:各キャラクターを掴むのに悩まれたというのを小野さんはおっしゃっていました。でも最初から面白かったんですよ、4名揃った時の相乗効果なのかもしれないですね。掛け合いによって出来上がっていく感じでした。キャストの皆さんが自分で作ってきてくれたものが、私たちの考えていたものから斜めの方向だったりしたんですがそれが逆に面白いくらいに転がっていきました。この作品はキャストのみなさんのおかげで出来上がっていっていると感じました。
ずっとこの作品を続けたい
——石膏ですと口の動きがないですから、アドリブなどもあったりするんですか。
宅野:台本があるのでその範囲内ではありますが、ほかの作品に比べると自由度の高い作品になっています。
——シナリオもアフレコから影響を受けたりも
宅野:そういったところもあります。
——ライブのようなアニメ制作ですね。
宅野:本当にあの4名で良かったと思います。
——ゲストの方々はその中にうまく入っていけたんですか。
宅野:ゲストの皆さんも演技の上手い方ばっかりなので、すごくいいものを上げていただけました。主役4人がああなので役者魂に火がつくのか色々やっていただけて、ずっとこの作品を続けたいと思うモノになっています。
柴:初めてご一緒させていただいた木村昴さんは、こんなことをやる人がいるんだという想定外のことをやってくださってすごく良かったです。ほかにも色々と仕込んでいるので、楽しみにしていただきたいなと思ってます。
——シリーズ構成では経験豊かな横手美智子さんがはいられていますが、どういった感じでしたか。
宅野:すごく乗り気で、楽しんでやっていただいてます。
柴:石膏がアイドルをやる作品なんて誰もやった事がないので、内容的に適任な脚本家かどうかというよりも宅野監督と合うかを重視して前作の“山田くんと7人の魔女”に引き続き横手さんにお願いをしました。
——アイドルものですと楽曲も大切ですが、楽曲はいかがですか。
柴:主題歌は石膏4人が歌ったキャラクターソングですが、すごくいい曲だなと思っています。
宅野:作詞をボンジュール鈴木さん、作曲を満寿田ムーブマンさんに担当していただいてます。
柴:お名前を聞いただけだと胡散臭いですけどね(笑)。「星空ランデブー」という曲で、アイドルソングとしてもいい曲にしていただけました。まずはアニサマでその次には紅白に出たいと本気で思っています。
——ライブの時はどんな衣装で出てもらうんですか。
柴:あのままかな、あれ正装ですから(笑)。
宅野:ネクタイくらいはするかもしれないです(笑)。1話の冒頭に彼らが最終的なビッグアイドルになった時のイメージシーンとして東京ドームを入れています。
柴:本編ではまだ駆け出しのアイドルですけどね。