少子化が進み対策として政府によって結婚相手を紹介され、半ば自由恋愛が禁止になった世界。というショッキングな世界での恋愛を描き男女問わず多くの支持を集める『恋と嘘』がアニメ化!! この難しい題材をどのようにして映像として表現したのかを監督"宅野誠起"さん、プロデューサー"柴宏和"さんに伺いました。[interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A]
キャラクターの心情をきっちり追って映像を作る
――まずはアニメ化に至った経緯を伺えますか。
柴:僕がコミックを読んで、面白いなと思って講談社さんに連絡したのが始まりです。あれはいつでしたっけ。
宅野:2016年にはシナリオ打ち合わせに入ってますから、2015年からですね。
――時間をかけて作られているんですね。宅野さんも早い段階から企画に入られていますが原作を読まれていかがでしたか。
宅野:恋愛モノをやれるかなと最初は自信がなかったですね。
――以前に監督された『山田くんと7人の魔女(以下、やまじょ)』も恋愛ものじゃないですか(笑)。
宅野:『やまじょ』はコメディー要素が強いですけど、今回はガチのドラマですから。微妙な気持ちの変化を描く繊細さを要求される作品なので、最初はどうかと思ったんですけど、なんとか頑張っています(笑)。
――こうおっしゃっていますけど、宅野さんにお願いしようと思ったのはなぜですか。
柴:宅野さんはキャラクターの心情をきっちり追って映像を作る方なので、そこを大事にしてもらえるだろうというのが1つ。あと、宅野さんの監督作品にはいつも助監督に臼井(文明)さんに入ってもらうのですが、臼井さんは女の子を可愛く丁寧に描くのが得意な方なので、この二人だといけるなと思ったのがありました。なので、臼井さんの存在も大きいです。今作でもいい仕事をしていただいています。
――脚本には宅野作品ではお馴染みの高橋(ナツコ)さんも入られていますね。
柴:高橋さんはドラマが得意な方なので、今回もお願いしました。
――宅野さん自身は不安もあったということですが、実際に制作はいかがですか。
宅野:人間ドラマが魅力の作品なので、キャスティングで決まる部分も大きいと思うんです。役を預けた方がみなさん上手いので、すぐにものにして、演技修正にもすぐに対応していただけて助けられています。
――実際に見させていただきましたけど、すごかったです。
柴:どうでしたかアフレコは。
――ガラス越しに、目の前にはキャストのみなさん、後ろは監督たちに挟まれて変な緊張をしました(笑)。
柴:あそこは一番前で見やすい席ですからね(笑)。せっかくなのでアフレコを見ていただければと思って。
――ありがとうございます。素直にみなさんすごいなと思いました。演技修正もその場ですぐに対応されて。
柴:『恋と嘘』は人間ドラマを丁寧に描く作品なので、演技力のある方にお願いをしました。
宅野:演技は皆さんに任せれば大丈夫だというのはキャスティングの段階で分かっていましたし、とても助けられています。
――キャストのみなさんは『やまじょ』にもご出演されていますが、どのようにして選ばれたのですか。
柴:オーディションです。キャラクターイメージが近い方ということで選ばせていただきました。根島由佳吏(以下、ネジ)役の逢坂(良太)さんは満場一致でしたし、他の方々も難航せずにスムーズに決まりました。
宅野:あとは演技力です。作品の重要なモチーフが“気持ち”なので、その繊細な部分を声の演技や絵の表情で表現をしていかないといけないので、そういった繊細な表現できる役者さんを選ばせていただきました。
――確かに、アクションなどの派手さはない人間ドラマをしっかりと描くのは、役者の方々の力も大きいですね。
宅野:あとはタイトルにもある“嘘”の要素です。顔は笑顔なんですけど、その裏には別の部分があって嘘の部分を表現するというのは大変だなと思っています。
言葉選びのセンス・ニュアンスを殺さない
――各キャラが心に秘めている部分がありますからね。
宅野:(真田)莉々菜も初めはピュアでまっすぐなキャラクターですけど、話が進む中で変化していって。そこはまだ話せない部分ではありますけど、嘘のないキャラに嘘の部分が芽生えてくるというのは1つの見所だと思います。
――友達づきあいがうまくいっていなくて、(高崎)美咲と友達になった時に「友達ができた」と泣く場面もありましたね。
宅野:彼女にとってはそれが初めてのことで。でも友達を裏切るような形でネジに惹かれてしまう部分もあって、そのせめぎあいで嘘が少しずつ生じてしまうということでしょうか。そこはこれからの展開を楽しみにしていただきたい部分です。
――これだけ人間ドラマをしっかりと描くということですと、物語の間の表現も重要なのかなと思いますが。
宅野:そうですね。例えばあるキャラクターがセリフを言って、それを受け止めた上で返すので、そこにすごく間が必要になります。TVだと尺も限られますが、原作の言葉選びのセンス・ニュアンスを殺さない形で作りこんでいます。
――アニメ化に際してムサヲ先生からリクエストはあったりしましたか。
柴:アニメの終わらせ方にはご希望をいただきました。TV放送は終わっても、原作が続いていきますから。
宅野:本当にそれくらいですね。
――かなり信頼をされているんですね。
宅野:もちろん、デザインなどのチェックは随時していただいてます。
――絵作りも難しそうな作品ですね。
柴:そうですね。先生のイラストは実景がないものが多いので、そのまま持ってくるとアニメの背景に乗らなかったりするんです。そこは映像化の際に苦労した部分でもあります。
宅野:前髪の透け感や瞳のレンズ感は何度もテストを重ねました。
柴:シナリオもそうですけど、絵作りも通常の作品よりは確実に時間がかかってますね。