追悼集会なのかと言われれば、まったく違う
──たくさんゲスト呼んで、しかも新宿ロフトで、いったいあなたは何がしたいのでしょう?
春美:どうやろか。うーん。わからない。一般的な意味合いとはまるで違うけど、きっとこんな世界になった、そこには、僕の責任だってあるかもしれない。
ただ、とんでもなく理不尽な理由から世界中でいまもヒトが死んでいる。殺されたり放射能を浴びたり自殺してるのが、僕のせいでもあり得る、とかじゃなくて、そういう現実そのものは、いまも昔も同じなんだ。
ただ決定的に違うのは、いまのほうが絶対的に、それこそ絶望的に「悪い」「たちが悪い」「論外、埒外」「話にならん」ってことだ。
──それが「現在時制でのいま」への批判的回答と受け取って間違いないですか?
春美:いや。…いやいや違うね。ただ、前言は撤回しない、すなわち、現代は史上最悪な暗黒大陸で見る影すらない。これは紛れもなく真実だ。でも、だからって一足飛びに、どっかで耳にしたことがあるくらいの、素性も詳らかでない行き当たりばったりの下衆野郎の軍門に下らなければならないなんて、いったいどうかしている…。
──今回、竹田賢一さん率いるA-Musikも出演ですね。
春美:ドイツ在住の千野秀一も駆けつけてのフルメンバーでのライブは滅多に見られない。しかもこの追悼的な状況に呼応して「怒り」がどこまで伸び得るかはきっと体験してもらえると思う。
──はてさて、どんなライブになるんでしょうか? あるいは、どんなふうになさるおつもりなのか。2011年秋の高円寺HIGHから、2012年6月大阪コンパス、8月FREE DOMMUNE、ベアーズや直近の黒光湯、数え上げればきりがないくらい、ハルミさんは、やれ寸劇を採り入れてみたり、ご自身自らが暗黒劇やダンス公演に出演したりしていて、シアトリカル(演劇的)なステージを演出するんじゃないかという…。
春美:今年が大里俊晴七回忌であるということは間違いないし、となればこの『SHINDACO』は法事になるわけだけど、さらに言うなら、死後一度たりとても、まともに悼んでもらえていない哀れな魂がたくさんそこいらに浮遊してるはずで…でもそこで、そやつはTACOのメンバーかどうか、さらに、かつては? なんてまるで茶番だ、無意味だ。付け加うるに、「素のトーク」や「演技による小芝居」も大概にしないと、いいかげん、ひどいことになろう…。
──では、追悼するわけでは、必ずしもないわけですね?
春美:追悼集会なのかと言われれば、まったく違う。むしろ哀れまれ、悼まれなければならないのは、生者である我々の側なのかもしれない…。
──そんな物言いは卑怯だな…。でもわかりました。それでは、今回のタイトルにもなっている『SHINDACO』、死んだ子、亡くなったヒトについて教えてください。
春美:冠誠さんがでっかいお寺のお坊ちゃんなのを知ったのは、或る朝、起きてこない彼を御母堂が見に行ってみたら死んでいた、いわゆるぽっくり死のまさに典型で、酒・煙草・女・薬・賭事一切せずとも20代で原因不明死した、その葬式のまた盛大なこと! 一斉に坊さんたちが精一杯声を張り上げたら、それは凄かった!
──どういう方ですか? お名前を初めて聞きます。
春美:この方は雑誌『DECODE』の発行人でスポンサーでもあったし、彼の死がなければ、いろんな局面が変わっていたんじゃないかとも言われたりした…。
みんな早死にしすぎ、これは戦争だよ
──ハルミさんと関わった女性で、亡くなった方も複数いるようですね?
春美:佐藤隆史の奥さんである渡辺敏子さんについては、何も知らないし、何も言えません。…彼女がいなければそもそも「マイナー」なる店も、成り立たなかったのかもしれないわけなんだけど…。
──ロリータ順子さんについては?
春美:戸川純さんに、今度という今度はお願いしました。過去というのは、放っておいても次第に薄れる性質のものだし、純粋なプラトニックのあまり彼女=順子が、純さんに憧れて惚れて依存して、彼女は実際はまだまだ幼かったのに、純さんのようになりたい一心で…。しかも僕から見ると道はふたつしかなくて、内ひとつは言いなりになることだったし…、ね。
鈴木いづみについても、僕からしたらどういう意図があったのか、まるではかりかねたけど、随分と(ロリータ順子が鈴木いづみに)接触していたみたいで、自立した女性への憧憬が、でもなぜ倒錯して、ねじ切れなければならなかったのかまでは、わからない。
GIGIさんってのが、先に言った生方さんと同一人物で、てなことを知らない向きも大勢いて、しかもこの人ときたら、婚姻関係のように見える旦那?までいて、その目を掠めもせずにかいくぐっては、何とかなろうとしてた…。
まぁまだ生きてて、たとえばノン・バンドのノンちゃんみたいに、普段は実家のある青森にいて、みたいな人もいれば、もっと、つまり生死も不明なのが、栗沢いずみとか、あとジラフ・エンタープライズを連れてきた、コックとして遊塾に入れた西沢とかがいて、いずれもそうだけど、まるで伝てもなければ、あたかも、実在したのかさえ疑いたくなる…まぁそういう存在の仕方もあった。
「TACO・フールズ・じゃがたら 三大過激バンドツアー」って、あったの知ってる?
──それはまた、すごい組み合わせですけど、非常階段やスターリンはどうなるんですか?
春美:さてね。何と言ったもんやら。指向性の、または嗜好の、違いだろうね。ま、それはそうと、この中でもフールズは誰ひとり楽屋でじっとしていられないんで、いつもいない。だもんで、外で出くわしても、誰が誰かわからなかった…とはいえ、もう(まるでラモーンズだ)(山口)フジオも青木も(川田)良もみんな死んじまったら、(伊藤)耕しか残らないんだし。みんな早死にしすぎ。
たとえば角谷美智夫。僕自身が東阪間を何度も行き来する間に、もうおらんようになって、気づいたらもう死んでた。今年博多に行った時には、ずっと近所やった、みたいな人と会って話したけど。それから篠田(昌巳)君や(江戸)アケミが死んだりしてるうちにもう、歯止めが利かなくなって、拍車までかかったかのようになった。
それでもまだ、元スターリンのシンタロウの訃報のあとに、明石(賢生)さんが亡くなられて美澤真之助(隅田川乱一)と一緒に葬式に行った頃まではマシやったよ、まだ。
その(明石さんの)葬式、一緒に行った美澤さんに逝かれてからやっぱり、オカシクなったんやね。自暴自棄。母親が死んだんで大阪にまた帰らなあかんようになって、あれやこれやめちゃめちゃになってった。
アンバランスの、オリジナルINUの林が、一度も再会せずに死んだと思ったら、三条通も好機タツオも、ジョニーもディーディーもジョーイも、最近ではトミーまで(これこそが本物のラモーンズ)死んだし、北村(昌士)が死んで、金子寿徳が死に、(山本)土壷が死ぬ。遊塾生で『JAM』にも一度書いたことがある中島も死んだらしい。そして桃山晴衣さんの訃報を聞いてから日を置かずに、大里まで死んだ。
最近では、今井次郎さん。先に書いた副島輝人さんが鬼籍入りした。ミラクルでもプロセスでもない。
──戦争みたいですね。
春美:戦争だよ。