ラジオを続けることで新たなシーンが生まれたら面白い
──昨年はついに大阪にもロフトプラスワンウエストを出店しましたよね。なぜ大阪だったんですか?
平野:今までは僕たちは、ロックのロフトというのをずっとやってきたけど、この10年間ぐらいは、ロックのロフトよりトークライブハウスのロフトって言ったほうが通りがよくなってきている。それぐらいトークライブハウスには今、勢いがある。大阪に出店したのは、その勢いに乗ってトークライブハウスを全国展開したかったからなんだ。あと、この3年間で2回もピースボードに乗ったんだけど、船の上に乗っている時、生まれて初めてロフトの今後について考えたんだよ。それで、ロフトは東京以外の地に出るべきだと思って、札幌か、はたまた博多かって考えていた時に、自然と大阪が出てきたんだよね。本当は物件探しを始める前に徹底的なマーケティングが必要なんだけど、直感的に大阪って決めちゃったんだ。僕はやっぱり大阪には幻想を持っているんだね。
──大阪での手応えはどうでしたか?
平野:敗北感を味わったね。自分の自負はコンテンツをたくさん持ってることだから、企画を40本ぐらい立てたんだ。もちろん(加藤)梅造さん[ロフト文化部/デモ担当]にほとんど手伝ってもらって、宿泊費と交通費を出して東京からガンガン出演者を呼んだんだよ。そしたらこれが見事に客が入らない。東京で必ず100人以上入る企画が大阪では2、30人ぐらいしか入らない。だからイベントが終わるたびに出演者に謝った。それでよくよく調べてみたら、大阪の集客というのはロックでも何でもイベント関係で東京の2、3割しか入らないっていうんだよ。それで僕は絶望しちゃったんだ。もし大阪で頑張るとしたら、在阪で本当に土着化してゼロから地を這うようにしていかなきゃならない。けどもう自分は前に出てやるような歳でもないだろうし、後進の世代に委ねたほうがいいと思って東京に帰ってきちゃったんだ。でも、大阪にはいたいよ。やっぱり大阪は何でも安いし、スリリングでカルチャー・ショックを感じるし、面白い街だもん。
──悠さんがラジオを始めたのは、ロフトプラスワンウエストの出演者のラジオに刺激を受けたからという話も聞きました。
平野:そうそう。『凡どどラジオ』というのを聞いていて面白かったからラジオをやってみたくなったんだよ。ラジオは聞きながら他のことができるからいいよな。あと、ヘタにおっさんの顔を見せるよりも声だけのほうがいいだろう? ラジオっていうのは聞いていると凄くイマジネーションが広がるんだよ。
──確かにラジオにはいいところがいっぱいありますよね。
平野:僕はロフトのブッキングの現場からしばらく離れていたせいで、会社の利益を出すようなイベントができなくなってきている。商売だから、客が入らなければ話にならないわけだよ。それでどうするかって考えたら、やっぱりラジオなんだよね。トークライブとかだったら毎回チケットの売れ具合とかを気にしたりして、焦ったりするわけじゃない。もうそういうのはイヤなんだ。客入れに関係なく、自分の好きな人間を招いて質問したいんだ。また今、沖縄とかイスラムとかが緊迫した状況になってきているけど、2ヶ月とか3ヶ月スパンでスケジュールをつくっていたら、そういった状況に対して言及するようなイベントなんてできない。あらゆる時代状況に対応できないトークライブハウスは意味がないと思う。
──一概には言えませんが、確かに今のライブハウスは新しいことがやりづらくなってきているのかもしれません。
平野:ロフトラジオの前半は毎回店内会議をやるわけ。その店内会議で店の内幕を暴露しちゃう。その店内会議をやった後にキャッチーなゲストを招いて話してもらって、最後にはみんなでブレインストーミングして、そのまま打ち上げに行くという。けっこう費用もかかるけど…(笑)。このラジオが人生最後の仕事のような気もしております。
──え!? 全然そんな気がしないんですけど(笑)。でも、どれぐらい続けるつもりなんですか?
平野:分からない。このラジオも収入がないから完全に赤字でしょ。でもそれを続けることによって新しいシーンが生まれたり、みんなが考えられないようなことが構築できたら面白いなと思っているんだよ。今回のラジオは誰にも迷惑をかけてないもん。イヤだったらやめればいいだけの話でしょ。まぁラジオ・スタッフの梅造と椎名(宗之)[本誌編集長]と(成宮)アイコ[ロフト新人/こわれ者の祭典]には迷惑かけているけど。だいたい僕は、君ぐらいの年齢の時には70歳まで生きるなんて思ってもみなかった。だからもう玉砕したっていいだろう? ロフトプラスワンウエストは玉砕したら困るけど(笑)、ロフトラジオはいいでしょ。ロフトに集う若い諸君が刺激を受けるようなことを僕はやっていきたいんだよ。
──凄い刺激をもらえそうで本当に楽しみです!! また悠さんは今後ネイキッドロフトでレギュラー・イベントを開催する予定もありますよね。
平野:そうだね。そのラジオから派生してイベントもやるんだけど、ゲストには塩見孝也さんを呼ぶつもりです。塩見さんが清瀬市議会議員に立候補するって言うんだよ。塩見さんはよく誤解されていて、連合赤軍事件と関係があるように言われることもあるんだけど、実際、彼はその前に逮捕されて事件には全く関わっていないし、20年もの刑期を終えてみそぎは済んだし、今は駐車場管理の仕事をしている人のいいおっさんだからね。そんなロートルなおっさんを呼んで、「青春と革命」についてちゃんと聞こうと思っています。