SAは何があろうと解散させるつもりはない
──他のライブハウスとは違うロフトの特性とはどういうところですか。
TAISEI:一番よく聞くのは、俺ら演者よりも「やっぱりSAはロフトで見たい」って客が言うよね。やっぱりロフトで見るSAは最高だって。SAにとってのホームグラウンドっていうイメージがあるんだろうね。ただ、決してやりやすいハコじゃないんだよ。ステージも低いしさ。でも何だろうね、お客の圧がやっぱり凄いんだよ。客席に近いし、見てるほうも近くに感じられるんじゃない? そうなると、みんなやんちゃになるよね。
NAOKI:ロフトは“THE ライブハウス”だよ。地下の匂い、天井の低さ、キレイなんかキレイじゃないのかもよう分からんのも含めて、“THE ライブハウス”やね。だから天井の高いリキッドルームとかじゃ味わえないものがある。凄く近くて熱い人間の圧を感じるとかね。
TAISEI:確かに、これぞライブハウス! って感じはするな。
NAOKI:ライブハウスに行く時のワクワク感がロフトにはあるよね。ちょっと背伸びして、ビール呑んでタバコ吸ったろかみたいな。ちょっと不良の匂いがあるしね、あのハコには。
TAISEI:あと、今のSAで初めてワンマンをロフトでやった時かな、『STIFF UPPER LIP』ツアーの初日だったんだけど、ソールドアウトでさ。あれは嬉しかったよ、ホントに。今までの音楽人生のなかで一番嬉しかったかもしれない。
NAOKI:2003年4月30日だったかな。
──よく覚えてますね!
NAOKI:みどりの日の次の日だったから覚えてるんだよ。だから俺、その日のライブは髪を緑にしたんだもん(笑)。SAでは初めて1回だけ色入れたから、覚えてる。これはなんかやっぱり節目にしたいなって。ロフトでソールドアウトできたのを祝う意味でね。もうやんないよ、絶対に。
TAISEI:そういう感覚と言うか喜びを忘れちゃダメだよね。売れていっちゃう人たちって、だんだんそういう喜びを忘れていっちゃうと思うんだよ。ソールドアウトするのが当然みたいになっちゃうと、違うんだよお前ら、ぺーぺーだった時を思い出せよ! って思うね。
──7月12日にリキッドルームで30周年を記念したライブがありますよね。
TAISEI:そうね。30周年の“THIRTY”と、この13年の“THIRTEEN”の語呂合わせみたいなところもあって、まぁ面白いかなって。一応のケジメとして、30周年のイベントをなんかひとつはやってもいいかな、っていうくらい。30周年で1年間商売する気はないけどね。
NAOKI:それこそ初期メンバーまで引っ張り出してオールスターでなんかやるつもりはないもんな。初期メンバーに「お前、SAを名乗るな」って言うてるくらいやから(笑)。
──この間、ウチでTHE STREET BEATSの30周年ライブをやったんですけど、今年30周年を迎えるバンドが凄く多いんですよね。
TAISEI:そうだね。ホント面白いくらいに。
──今回の“LOFT FES.”に出演する怒髪天もそうですし。
TAISEI:そうそう。ニューロティカやKENZIもそうでしょ。だから、それくらいの歳の連中がみんな一斉に始めたんだな。バーンと、音楽を。
NAOKI:83年から84年にかけて、札幌でも広島でも東京でも大阪でも岐阜でも、いろんなバンドが産声を挙げたよね。当時高校生だった子らが。
TAISEI:LAUGHIN'を筆頭に、当時ロフトに出てた人たちがバーンと出た時、「あ、俺らにもできんじゃねぇの?」っていう初期衝動が、あの時に一気に広まったんじゃないかな。そういう時代だったよね。みんなが高校生になって楽器も弾けるようになってさ。まだバンド・ブームの前だったけど。
NAOKI:俺らがメディアとかで情報仕入れるのは、『DOLL』とか『宝島』くらいしかなかったしね。しかも、扱いももの凄くちっちゃい。
──30周年を迎えるバンドって、よく考えてみたらメンバーの年齢がもう50前後なんですよね。
NAOKI:怖いよー(笑)。
TAISEI:途中、中抜けはあったにしろ、50前後はなんか意地張ってやってる連中がけっこういるんだよね。
──今、その年代が一番元気な感じもしますね。
TAISEI:うん、元気だよね。
NAOKI:それでどっか、覚悟が決まってるのか決まってないのか分からないけど、帰る所がない人たち。
──帰る所がない人たち?
NAOKI:そう。一般という社会から弾かれた人たち。弾かれたのか、弾けて出たのか。いずれにせよ、もう後には戻れないっていう。俺たちの世代は、復活ブームはよくあるけど解散ブームはないわけ。こうしてバンドをやり続けることも怖くなくなっていくの。
TAISEI:だからさっきの話じゃないけど、俺らが周年、周年っていうのはなんかおこがましい気がしちゃってね。一度止まったバンドは30周年とか言っちゃダメだよね。周年を語っちゃいけない。そんな気はするけどね、俺は。だから今回の30周年イベントは“生誕”30周年ってことにしてる。
──怒髪天も一度休んでいましたよね。
TAISEI:彼らが美しいのは同じメンバーで戻ったことなんだよ。だから周年を祝っていいのはTHE STREET BEATSとか、あとTHE STAR CLUBとか、一度も止まってないバンド。凄いよね。メンバーは変わってるけど、止まったわけじゃないしさ。一度解散って言ったバンドがまた復活するのはどうかと思うんだよね。
NAOKI:それをいっぱい繰り返したらCOBRAになるよな。
TAISEI:(笑)俺自身、30周年って言われて、?マークで頭がいっぱいになってさ。何をもってして30周年なの? っていう。
──LAUGHIN'はやり続けていますよね?
TAISEI:LAUGHIN'は1回解散してるんだよな。
NAOKI:うん、一度止まってる。PONが抜けて俺が抜けた後、ちょっとだけ続いたけど、チャーミーがソロ出して一度止まるんよね。でも、PONがCOW COWを辞めて以降、すぐ声かけするけどね。だからわずかな間だけ止まってる。
TAISEI:だからアレだな、バンド続けてる今の若い子は解散って言っちゃダメだな。
──言わずに休めばいいと。
TAISEI:休むのはいいよ。ただ、わざわざ休止とか言うあの商法もなんかな。
NAOKI:休止商法。休止詐欺(笑)。
TAISEI:だから俺は思うよ。SAはもう何があろうと解散させるつもりはない。解散の二文字は今さら意味がないからね。