歌舞伎町に移転したロフトにて新生SAを再起動させ、ポイントとなるライブでは必ずロフトで伝説の1日を作り続けてきた屈指のライブ・バンド、SA。日本のパンク・シーンを牽引していると言っても過言ではない彼らのライブは、あらゆるジャンルのシーンでもその存在感で会場をSAコールでひとつにしてきた。最高のライブ・バンドSAとライブハウス・ロフトとの濃密な13年間に迫る。(interview:大塚智昭/新宿LOFT店長)
西新宿のロフトと歌舞伎町のロフトの違い
TAISEI:ロフトが歌舞伎町に移転してから15年なんだ? もっと長い感じがするけどな。今のSAのスタートは歌舞伎町のロフトだったから、なんか感慨深いよね。
──TAISEIさんは西新宿のロフトにも出たことがあるんですか。
TAISEI:あるよ、SAとして。まだギリギリ高校生でさ、共演したTHE LOODSの西村(茂樹)君に「今までロフトで出たなかで一番若いんじゃないか?」って言われたね[註:86年3月28日、THE LOODSの“LOUD MACHINE TOUR”にLOOS HALOWEENと共にゲスト出演]。その頃は俺もインディーズでレコードを出してたから、一応その名前もあって出させてもらったんだけど、オーディションを受けずに出られたからラッキーだったね。でも、当時は岐阜に住んでたから、ロフトって名前はもちろん知ってたけど、ロフトがどんな場所なのかよく分かってなかった。ああ、ここでやるのね? くらいの感じだったよ。
──LAUGHIN' NOSEがロフトに初めて出たのは?
NAOKI:85年4月(28日)だね。アルタ前でインディーズ最後のソノシートをばらまきまくった日。急遽昼間もライブをやることになって、2ステージ入れ替え制で700人近く入ったのかな。当時のロフトの最高記録。それで、その日のうちに取っ払いで1人10万ずつもらった。
──10万ずつ!
NAOKI:お、こんなもんなんやと思って。俺もTAISEIと一緒で、ロフトなんかよう分からへんやん。ARBの「LOFT 23時」を通して知ってただけやから。あと、『さらば相棒』って映画で(石橋)凌さんがロフトの楽屋でセックスしてるのを見て、新宿ロフトってメチャクチャやなって(笑)。そういうイメージっすよ、俺は。
──TAISEIさんがロフトに出ていた頃のSAは、何年くらい活動していたんですか。
TAISEI:賞味3年くらいじゃない? 名古屋ではけっこうライブをやれたけど、東京や大阪ではそんなにできたわけじゃないから、メンバーもチェンジするでしょ。高校出たら就職しなきゃいけないしさ。
──その時のメンバーは、今はバンドをやってないんですか。
TAISEI:うん、もう何もやってない。普通の一般人。ライブはたまに来るけどね。
──元SAとして?
TAISEI:そうそう。でも俺、言うのよ。「お前なぁ、元SAとか二度と言うなよ!」って。
NAOKI:ハハハハハハ!
TAISEI:「もう終わったんだよ! あれは!」って。今もこうしてSAが続いてるから、なんか勲章じゃないけどさ、そういうことを言いたくなるじゃない? 「俺、SAやってたんだ」って。そんなの言うなよ! って。
──(笑)じゃあ、西新宿のロフトでライブをよくやった記憶はないんですね?
TAISEI:でも、SAの後にJUN GRAYたちとやってたBAD MESSIAHの時はロフトばかりだったからね。年末のカウントダウンとかにも出たしさ。
──NAOKIさんはLAUGHIN'の後も西新宿のロフトにずっと出ていますよね。
NAOKI:LAUGHIN'の後はあんまり。でもね、LAUGHIN'は86年に『LAUGHIN' ROLL』のプロモーション・ビデオの撮影をロフトで貸し切ってやってんの。あと、DOGFIGHTでも2デイズやったりね。メジャー契約切れてから自分でブッキングして2デイズ。そうだ、1個思い出があるわ。酸欠で倒れた。
──ステージで?
NAOKI:うん。本編の最後のほうの曲の時、自分の目の前に膜がかかってて、何とかやりきったんやけど、あのほっそい階段上がって、上で倒れた。記憶戻るまで誰かにパタパタと風をあおいでもらって、それからアンコールをやった記憶がある。西新宿のロフトに出たのはそれだけ。最初のソノシートばらまきの時、プロモーション・ビデオ撮影、DOGFIGHTの2デイズ。あと再々結成のCOBRAでイベントに出たくらい。
──歌舞伎町に移転してからのほうが馴染み深いと。
NAOKI:メチャクチャ出てるでしょ(笑)。西新宿はよく呑みに行ってた記憶があるね。LAUGHIN'やKENZIみたいな仲間内のライブを客として見に行ったりね。あと怒髪天。もうこーんな長髪の、グルと呼ばれそうなくらい酷かった頃の増子とかね(笑)。
──意外ですね。NAOKIさんは西新宿時代からずっと出ているイメージがあったので。
NAOKI:もうこのSAになってからやね。なんかでも、ここで言うことじゃないねんけど、ロフトってその、問題はまだまだありますよ。早くウォシュレットにしろとかね。ごめんね、こんなこと言っちゃって(笑)。
──ハハハ。大丈夫です。
NAOKI:ただ、今のロフトはいつ俺らが会場に入っても、スタッフがいつも凄く気持ちよく応対してくれる。そこはロフトに感謝してるよ。「おはようございます!」っていう挨拶から気持ちいいからね。
TAISEI:西新宿の時はこう、スタッフがみんなツーンとしてたよね。やっぱりロフトっていう看板があるから、他のライブハウスとは違うんだよみたいなプライドもあったんじゃないかな。ロフト・ブランドみたいなさ。
NAOKI:あと、今のスタッフの子らは、メンバーの名前を覚えてくれてんのかなって思う時がある。上の指示で「ちゃんと今日の出演バンドの名前は覚えとけよ」って言ってんのかな? って。
──それは言ってますね。
NAOKI:やっぱり! スタッフに声かけたら「どうもNAOKIさん!」とか言うからね、普通に。自分のライブじゃない時も、プライベートで夜中にバーで呑んでても普通に声かけてくれるから。スッゲーなぁと思って。ある意味、しっかり商売してるって言うか。
TAISEI:しっかり商売してる(笑)。
NAOKI:とも言えるし、アーティストへの配慮がちゃんとあるっていうのは、やってるほうは凄く気持ちいいね。
──一時期、アナーキーの(仲野)茂さんやARBのKEITHさんの顔写真が受付に貼ってありましたからね(笑)。
NAOKI:ハハハハハ。これ忘れたらアカンでって? それじゃ指名手配犯やろ(笑)。