今を生きる不自由さを感じている人たちが自分だけの世界に浸れる手助けができれば
──ちなみに、川口潤さんの「デストロイヤー」とJimbo Matisonさんの「ディストーション」のミュージック・ビデオをそれぞれご覧になって如何でしたか。
カヨ:「デストロイヤー」は、膨大な情報をひとつの美しいライブ映像に作り上げる、そのエネルギー。まさに、川口さんにしかできない映像だと思いました。この映像が残って本当に良かった。美しいです。
小磯:1曲だけでも新譜の発売記念ライブを体験させてもらったようです。奇跡のような体験に感謝しています。
カヨ:「ディストーション」はまず全員の人形があまりにそっくり、動きや雰囲気まで作り込まれていて、素晴らしいと思いました。小道具も素晴らしく、そして愛らしい。ブッチャーズに対する愛情が伝わってきて、なんだか嬉しかったです。
小磯:愛にあふれた作品に、見終わった瞬間、飛んでいってハグしたくなりました。WE LOVE Jimbo!!
──去年はReguReguと縁の深かったブッチャーズの吉村さん、魔女卵店主の鎌田理絵さんが相次いで亡くなるという散々な一年でした。お2人との別離から学び得たことはありましたか。
小磯:大切な2人との突然の別れは、未だ心の整理が全然ついてなくて、絶えず、体の一部を失ったかのような強い喪失感に包まれている状態です。
6月からずっと曇り空の日が続いているよう。
何か作っていないと押しつぶされそうなので、それが創作の糧になっているかもしれません。
──この『よどみのくに』をどんな人たちに見て欲しいですか。
小磯:これらの物語を愛してくれるすべての人たちに。
──今後、ReguReguとして計画していることは? 昨年出版された絵本『屋根の上の娘』のような映像以外の作品を発表する予定はありますか。
小磯:予定はありませんが、小さな本を作るのはとても楽しい作業だったので、また何かの形でできたらと思っています。
──長編映画を作る構想は未だ途絶えていませんか。
小磯:これまで作ってきた短編映画は、いつか長編映画を撮るための準備であるという気持ちはあります。
いつか、ということをいつまでも言っているうちに人生が終わってしまいそうですが、慌てずに、少しずつ構想をまとめていこうと思っています。
──シュルレアリストを自称するReguReguが本懐を遂げる場である「芸術」が、この今の時代に果たす役割とはどんなものだと考えていますか。
カヨ:残念ながら今の時代には、自分にとって魅力的に見えるものがとても少なくて、私はずっと小さい時から自分だけの世界に浸ることに喜びを見いだしてきました。
だから、私の考える物語には必ず、パートナーにさえも分からない部分が生じてしまうのですが、その個人的な部分こそがReguReguにとってのシュルレアリスムなのだと考えています。
もし、私たちReguReguにもこの時代に果たす役割があるなら、この個人的な部分を、観客側からも完全に個人的な誤解によって観てもらうことにあるのではないかと思っています。共有したいとか、メッセージを与えたい、という思いはまるでないです。
同じ時代に生きる、同じように不自由さを感じている人たちが、自分だけの大切な世界に浸ることができますように。その手助けが少しでもできたら、と考えています。