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INTERVIEW

トップインタビュー『ポーラーサークル〜未知なる漫画家オムニバス』対談

漫画家が 映画を撮っちゃ だめですか?
だめだとしても 撮っちゃいました!

2013.11.19

『漫画と映画のはざまで!?』原作者である事と監督をする事

——そんなにメジャーでは無いと言いつつ、皆さん、原作漫画が映画化されていますよね。原作者の立場で映画化される事と、今回自ら映画を監督するという事の違いはいかがですか?

タイム:原作者の立場で、自作が映画化されるっていうのは、別段面白くはないんですよね。これは、映画がっていう意味では無くて

 

——「作業として」という事ですか?

枡野:クリエイティブの喜びがないって事?

羽生生:漫画業界と、映画業界は完全に性質が違うんですよ。映画って割と漫画だろうが、小説だろうが、エッセイだろうが、土台に原作があればそこから自分たちで映画を作るという作業なので、原作がどうこうというのはあまり関係ないんですよね。

タイム:漫画が映画化されるっていうのは、漫画家の誉れというか、それを目標にっていうのもあるのかも知れないし、大ヒットしたらまた違うのかも知れないけれど、あまり自分の事とは思えない別の事になっちゃうので、映画に関わった感はあまり無かったですね。

 

——タイムさんのブログで「映画化された時に映画を意識した」という話がありましたが。

タイム:出演者の若い俳優たちと仲良くさせて貰って、若さというか力を貰った部分があって。

 

——タイミング的には、映画化された後に「よるひる映研」に参加されたんですか?

タイム:重なってる感じですね。時期的に難しい時で『アベックパンチ』が映画化されて、発表パーティーの前日に原発が吹っ飛んだんですね。それで発表パーティーがポシャったんですよ。そういったこともあって、「やれる内にやりたい事をやらないと」っていうのもありますね。あと、これまでにも漫画家さんが映画を撮る事ってあったと思うんですけど、イロハのイから覚えてやるパターンは無いと思うんです。「よるひる映研」の何にも分からない所から始めて、1つずつ階段を登って行ってというのは、僕らくらいなのかなと思うんですよね。

羽生生:今までの流れだと、有名な漫画家さんがプロデューサーに依頼されて、話題性があったり、お金が出る企画に監督として呼ばれて監督する、自作を監督するというのはあったと思うんですが、何にも無い所から一から作っていって、映画館にかける所までやるっていうのは、最近はあるのかも知れないけれど珍しい事だと思うんですよ。

タイム:ぶっちゃけ、話題性も無いですからね、僕ら(笑)。

枡野:映画を始めて漫画家を辞めた方もいらっしゃいますよね。イワモトケンチさんとか、平口広美さんとか。

羽生生:そうですね。映画監督が本業になっちゃう方もいらっしゃいますね。あと、技術的な敷居が低くなったからこそ成立した企画だとも思います。

タイム:フィルム時代は全く無理でしたよね。あと、僕も羽生生さんもパソコンで漫画を描いているんですけど、それと同じような機材で映画が編集できるようになったっていうのも大きいですよね。違和感が無いんですよ、レイヤーを合わせて合成していく過程とか。そういう時代的な所は大きいですね。

羽生生:そう。技術的な所っていうのは大きいと思いますよ。高校で8mm映画を撮ってた時は、フィルムが1本何千円もする、尺も3分しか撮れない。現像にも何週間かかかって、あがって来たフィルムをテープでペタペタ貼って編集するっていうローテクな事をしてやっと、30分の映画が出来上がっていましたから。

タイム:いちいち現像を外国に出さないといけないんですよね。

羽生生:そうそう、そういうリスクというか、デジタルになった事でハードルが下がって来て、やりたい事に近づけるようになったっていうのが、今の時代のこのタイミングだと思うんです。

タイム:あまり若い頃に出来てたら、漫画に集中できてなかったんじゃないかと思うんですけどね(笑)。35歳過ぎてからでホントに良かった。

 

『未知なる漫画家オムニバス』に続く道

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——それにしても、タイムさんのハマり方凄いですよね。機材揃えたり(笑)。

羽生生:今回のオムニバスも、タイムさんが本気を出して「よるひる映研」からどんどんスキルを上げて、機材を買い揃えて、映画館で上映できるようなクオリティーのものができるようになったからこそ、成立した企画とも言えますね。

 

——タイムさんは前回の「ポーラーサークル」にも参加されていましたよね。

羽生生:まず、「ポーラーサークル」を説明した方がいいんじゃないですか?

蔭山プロデューサー(以下、蔭山):元々「ポーラーサークル」の前に別の映画団体で活動していたんですが、監督たちが大勢いれば意見が一致する訳もなく、考え方の違う者同士で分裂した事があったんです。

羽生生:監督の方達は商業で活躍していた方々なんですか?

蔭山:商業っていうと微妙なんですが、映画館で公開して、映画祭にも出品して、DVDも出してっていうのは最低限やろうっていう事で活動していました。さっき枡野さんも仰っていましたけど「とにかくお客さんを楽しませたい」っていう事が一番だと思う人たちだけで集まってやりたいと思い、分裂してポーラーサークルを立ち上げました。あと更に遡ると、ロフトプラスワンで「面白い自主映画大会」っていうイベントを99年から4回やってたんですね。そのキャッチコピーが「めずらしく面白い自主映画上映します!」っていうもので(笑)。今人気の井口昇さんや、山下敦弘さん、リリー・フランキーさん、天久聖一さんとか、色んな人たちに目をつけて作品を集めて上映してたんです。その頃から、お客さんに面白いって言ってもらえるのが一番楽しいという感覚だったので、ポーラーサークルもそういったエンターテインメント性を重視した団体にしようと思ってやっていました。それで、タイムさんとたまたまツイッターで知り合って、その頃丁度「よるひる映研」に参加されてたんですよね。

タイム:そうですね。古泉さんをジェダイにしてみたりとか(笑)!

 

——『ジェダいあんちくしょう』ですね。

蔭山:あと、『おくりひとびと』とか!

タイム:『おくりひとびと』では古泉さんをゾンビにしたりと! オジさんイジリをしてたんですよ。

蔭山:タイムさんと知り合ってすぐに「よるひる映研」を見に行ったんですよ。そしたら、面白い自主映画が立て続けに上映されていて、それこそ「めずらしく面白い自主映画」が何本も何本もという感じで。それでお話を聞いてみたらやはりお客さんを楽しませたいという意識が強い方が多くて。そういった流れでタイムさんにポーラーサークルで撮ってくれないかというお話をして、『実験失敗家族』という作品を監督して貰ったんですけど。お声がけした時には、劇場公開まで3ヶ月位しかなくて、今から映画撮れますか? ってかなり無茶なお願いをしたんです。

タイム:しかも、漫画も連載中でしたからね。でも、蔭山さんの力も借りながら「ゆうばり映画祭」だったり、ドイツの映画祭(ハンブルグ日本映画祭)で上映できたりと色んな事があって「よるひる映研」でやっている僕としては自分だけやっているのが嫌で、古泉さんだったり他にも色んな面白いものがあるんだぞっていうのを見せたいと思って、今回の漫画家オムニバスに繋がったんです。

蔭山:そうですね。昨年(2012年)6月に公開した『ポーラーサークル~未知なる生物オムニバス』の上映後イベントでタイムさん担当の日に、ゲストという形で今回の監督さん達にも来て頂いて「よるひる映研」で撮った短編を上映したんですよ。

タイム:盛り上がりましたよね〜。

蔭山:盛り上がりましたね〜。本編より面白かったっていう人もいたりして(笑)。というのもあって、この4人でやったら面白いなと思ったというのもありますね。

 

テーマは「SF」。暴走し始めるタイム涼介!

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——その流れから、今回の漫画家オムニバスに繋がるんですね。企画はいつ立ち上がったんですか?

蔭山:『未知なる漫画家オムニバス』を撮影したのが2012年の12月頃でした。

 

——では、企画が立ち上がって半年程で撮影に入った訳ですね。

タイム:無茶ぶりです(笑)。俳優のオーディションをしたんですけど、合格した人がすぐ次の月に出る位、無茶の無茶でした(笑)。

羽生生:俺も今回初めて個人でプロの方にお金を払って出演して貰うっていうのをやったんです。「よるひる映研」ではその日考えて、その日撮るっていう流れだったので、撮りながら脚本を書いたりもしていたんです。でも今回は、どの位時間をかければ良いのかも分からないし、とりあえずこの時期までに脚本をあげてくれって言われたのに合わせて、何とか間に合わせるっていう感じでした。漫画家という仕事上、締切をクリアする仕事なので出来た事ですね。

 

——今回のテーマは「SF」っていう縛りですけど、「ささやか映画」というコンセプトでやってきた中だと苦労されたんじゃないですか?

羽生生:それは、タイムさんが『ジェダいあんちくしょう』でライトセイバーを光らせたりっていう特撮の技術を身につけていたっていうのが大きくて、俺もタイムさんにVFX、特撮を頼むっていう前提でSFというテーマで考えましたから。

タイム:そうですね。羽生生さんの合成だったりVFXをやりますからって口説いた部分もあったんですけど、やはり実際の作業となると、羽生生さんもコダワリがあって大変でした。皆さんまだ見ていないので、詳しくは言えないんですけど合成素材がグロくて(笑)! メイキングで見せたい位ですよ(笑)!

枡野:詳しくは劇場のアフタートークですね(笑)。

羽生生:まぁ、そういうのもあって、枡野さんみたいにお話でSFを表現したり、古泉さんみたいに50年代60年代のチープな特撮感を出したりっていう、皆それぞれやりたい事をやっています。

 

——古泉さんの特撮もタイムさんですか?

タイム:あれは、古泉さん自身でやっています。アフターエフェクト使って。古泉さんの場合は、ここまでっていうリミットを決めてVFXやっているからまとまりがあるんですよね。僕の場合は天井を見ずにやっちゃってるから、完全に力技というか、その時出来る事を全部ぶち込むっていう(笑)。

羽生生:一個新しい事が分かったら全編のクオリティーを上げないといけないっていうね。

 

——では、やっている内に方法を発見して、行って戻ってを続けるという事ですか?

タイム:そうです。銃を撃つシーンなんかは、フルハイビジョンの映像がレイヤーで120〜140枚重なってるんですよ(笑)。

一同:爆笑!

タイム:かなりの容量のパソコンを組んだんですけど、「ブ〜ン」って、パソコンのファンも回るし、グラフィックボードのファンも回るし、五月蝿いしで

蔭山:夏だったらぶっ壊れてましたよ!

タイム:いやぁ、そうですよ!あ、実際ぶっ壊れたんだった(笑)。今は、新しいパソコンです!

羽生生:その銃を撃つシーンのクオリティーを上げると、今度は3DCGのクオリティーを上げないといけないってCGを勉強し出したりして! お金が出る現場だと予算があるから、その予算内で誰にどれだけの分量を任せるかという判断があると思うんですけど、この企画は自分たちができる範囲でやるっていう企画だから、古泉さんみたいにいい塩梅にする人もいれば、タイムさんみたいに暴走する人もいるっていう所で、作品の性質の差が出てメリハリにもなっているんだと思います。

タイム:ガンエフェクトだけは日本一にしたかったんですよ。薬莢がちゃんと飛んでね。薬莢へのコダワリは前作の『実験失敗家族』からありまして、地味にフルCGなんですよね(笑)。

 

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