「コミックビーム」漫画家と編集長
——『実験失敗家族』から引き続きといえば、コミックビームの奥村編集長が今回の幕間映像にも出演されていますよね。さすがに漫画以外にこれだけ力を入れていると怒られるから引っ張り込んだのかなとの思ったんですが?
タイム:(苦笑)鋭い…。あぁー、いやぁー、その通りなんですよ!
一同:爆笑!
タイム:関わっちゃえば、っていうね。
——共犯者になっちゃえば、協力もせざるを得ないだろうと!
タイム:最終的には、あの娘は…可愛かったんじゃないか? とか(笑)。
羽生生:ご満悦だったんだ。
タイム:あと今回、古泉さん、羽生生さん、僕と、現在連載しているしていないに関わらずビームの作家陣だったので「こんな所でお前は何をやっとるんだ」と! 僕が引っ張り込んだのはバレバレなので、結構キツいんですよ。針の目を向けられているので、ここは一発引っ張り込んで「イメージキャラクターを是非!」とか言って(笑)!
羽生生:そういう政治的な駆け引きも作家個人がやるっていう(笑)。
——奥村編集長の反応は?
タイム:「おう、やるぞ。いくらでも脱ぐぞ!」って言ってました(笑)。結構ノリノリでやってくれました。
羽生生:多分『実験失敗家族』に出て、完成品を見て、あれだけ本気でやってんだっていうのが分かったからぐうの音も出なかったんだと思いますけどね。
枡野:タイムさんが段々本気になっていく様が面白くて、丁度お家にお邪魔して撮影していた時にも三脚が届いて「SONYの三脚がきた!」って言ってて、この人はドンドン行ってしまうと思いました(笑)。
——カメラスライダーとかも買われてましたよね?
タイム:今、カメラスライダーを使った映像が好評でして、外国のメーカーなんですけど、是非レビュアーをしないかってメールが来てて。
羽生生:えっ! 使ってみないかって!
タイム:違う機材も提供される事になりました。
羽生生:いいじゃないですか。
枡野:でも性格出ますよね。古泉さんの処理って、「UFOってこうでしょ?」っていうギャグみたいな処理じゃないですか。宇宙人も「宇宙人ってこんなだよ」って漫画みたいな宇宙人で、また中に入っている見ル野(栄司)さんが凄く似合ってて、全体のトーンが古泉さんの作風なんですよ。
——漫画と地続きな感じしますよね。
枡野:SFオムニバスだと1つぐらい似たようなものがあると思うんですけど、今回それが無いのが凄いですよ。
——そこは、事前に擦り合せとかは無かったんですか?
羽生生:擦り合せはしてなかったですね。
タイム:でも全然似ないとは思ってたけどね!まず絵が三者三様で、枡野さんは歌人だしっていう所もあるから。
羽生生:でも、テーマ的にセックスだったり、愛だったり、っていう共通項もあったりして
タイム:年齢的に近いっていうのもあるんですかね?
羽生生:バラバラなのに、何となく繋がっているっていうのが面白かったですね。
『漫画と映画のはざまで!?』映画との距離感
枡野:あと、皆さん年を重ねて、それぞれ違う分野ですが仕事をやっている感じが、若くてこれから映画監督になるぞと思っている人とは全然違うなと思います。だから本気じゃないとかじゃなくて、違う分野であってもプロでやっている自分に恥じないものを作ろうっていうプロ意識。たまに「よるひる映研」で若い人たちと組むと、野心があるって思うんです(笑)!「時間をかけて撮っちゃうぞ」とか。与えられた制限の中でこうしようという大人の対応を若い人はしないなっていうのが、対比で分かりますね。
タイム:若い人は怖いもの知らずで、羽生生さんにそんなに走らせるのか! とかね。羽生生さんのハンチング帽を取ったり、眼鏡を取ったり、色々考えつかない事をやるよね(笑)。
羽生生:感情だけでもなく、理屈だけでもなく、人に見せるものと、自分のやりたい事の落とし所をみつけて商売にしてきた人たちばかりだから、そこがそれぞれのバリエーションなったんだと思いますね。
タイム:あと、映画学校で先生に教わって映画を撮るのと違うのは、漫画家って人に迷惑をかけるのが嫌いというか、苦手なんですよ。なので自分たちで何とかしようという意識が強いんです。
羽生生:本当の映画の現場って共同作業というか、体育会系じゃないですか。漫画家は割と個人プレーだから、自分で何とかするっていう。
タイム:「自分さえ寝なければいい」みたいな(笑)
枡野:あと、スタートが古泉さんだった事や、古泉さん自身のキャラクターも大きかったと思うんですよ。古泉さんの作品を見て「こんなにささやかで面白いんだ」と。そういった「よるひる映研」の精神を皆が勝手に解釈して始めた所があるので、映画のプロの方が見たら、嫌な所もあると思うんですけど、良い所もあると思うんですよ。「こんな所に目を付けるんだ」っていう、それを見て頂ければと思います。単純に映画が好きな人にも見て欲しいんですけど、モノを作る人たちに何かヒントを与えられるんじゃないかという気はするんですよね。与えるというとおこがましいんですけど。
タイム:面白さとしても、キレイに丸く削っていってというよりは、イビツに尖ったものがまだ残っている切りっぱなしの鉄みたいになっていると思うんです。その飛び出た部分がとても面白かったり、足りない部分も感じているんですけど、その尖った部分が突き出していると思うので、そこは楽しんで貰いたいと思います。
羽生生:作品の種類として、ウェルメイドないい感じの作品は当然あって良いと思うんですけど、そうじゃない「何これ!」「変わったもの見ちゃったな」っていう映画がもっと増えるといいなと思っていて、見てくれた人が「何か変なもん見たな」っていう気持ちになってくれると有難いですね。
タイム:しかもね、奇をてらった訳ではなく、全力でやった結果だからね(笑)。
羽生生:片手間じゃないですよね。
「アニメと漫画は僕の両輪だ」まぁ、そんな感じで!
——チラシのキャッチコピーもいいですよね。その感じが出ていて。
羽生生:枡野さんの素晴らしいコピーですよね
枡野:短歌になってるんですよ。
——「漫画家が 映画を撮っちゃ だめですか? だめだとしても 撮っちゃいました!」気負いの無い感じというか…。
羽生生:…決然たる意思はありますよね。乗りかかった船だから最後まで行くよっていう気持ちは各作品に出ていると思います。
——これからも続けて行くぞと?
タイム:いやいや(笑)。漫画も準備中なんでよろしくお願いします。
映画は…、手塚治虫先生がですね「アニメと漫画は僕の両輪だ」と仰っていましたから…まぁ、そんな感じで(笑)。
羽生生:また割とデカイ事言ってますけど(笑)。
——でも皆さんの本業と映画のバランス取れているのが面白いですよね。
羽生生:無茶な事をするのが面白いってあるじゃないですか。若かったり、法に触れたりっていう。
枡野:PUNK精神ですね。
羽生生:はい。そういうのももちろんアリだと思うんですけど、そうじゃなく変な事をやるっていう方向性もあるのかなって思いますね。
タイム:皆、中年っていう(笑)。中年の青春かな?
枡野:年を重ねた、違う仕事を持っている人が、クリエイティブなものをきちんと作ったっていう事の結果だと思うんですよね。
羽生生:自分の生活もギリギリ保ちつつ、無茶な事を出来る範囲でやるみたいなね。
タイム:でも俺、カミさん働いてるから(笑)!!
一同:爆笑!
枡野:でも「俺、映画いつか絶対撮る」って言って、全然撮らない人もいますけど、そういうのとは全然違うものですね。
羽生生:ホント、「よるひる映研」から始まって、地続きの結果で、今に繋がったという感じです。
『ポーラーサークル 〜未知なる漫画家オムニバス』
監督 羽生生純、古泉智浩、タイム涼介、枡野浩一(上映順)
2013年12月7日(土)〜 11日(水) 5日間限定レイトショー!
オーディトリウム渋谷にて
初日、上映前に監督、出演者による舞台挨拶アリ!
開場21:00 上映21:10より
特別鑑賞券¥900 / 当日料金¥1,000
(2013年/日本/カラー/104分/ポーラーサークル配給)