人柄が見える作品にしたかった
── 1曲目の『G.B.V』ですが、これは何の略なんですか?
藤井:俺が好きなガイデッド・バイ・ヴォイシズというバンド名の略です。声によって導かれるという意味があるバンド名なんですけど、その言葉がすごく好きなのと曲が素晴らしいので。声によって導かれるのは理想だし、何か伝えられれば良いかなって。
── その次のタワレコ限定でリリースされたシングル『ありがとね』は、「風とロック」の箭内道彦さんが歌詞を手掛けてますが、歌詞を書いて頂くきっかけって何だったんですか?
藤井:『Alternative』の時に、激しい自分の感情を歌詞に出したので、受け止めるのがしんどかったと言う人がけっこういたんです。それで、俺が福島の人の気持ちを自分で歌詞を書くよりは、誰かに書いてもらえばフラットに受け止めてもられるのかなと思って箭内さんに書いてもらうことになったんです。箭内さんは「福島の人の気持ちは人それぞれで、ひとつに決めるのは大変だから、藤井くんの気持ちを書くわ」って。それで上がってきたのを読んだら、思ってることを全部書いてくれていて。たぶん俺が「戻れない 戻れない」って『Alternative』で歌っていた時よりは受け取りやすいんじゃないかなと思います。
── タイトルもすごく素敵ですね。
藤井:俺の口癖らしいんですよ。
大久保:1日に1回は言いますね。
藤井:言ってるつもりはないんですけどね。
大久保:言ってるつもりはないって言った何分か後には言ってるんです(笑)。
── シングルのジャケットは1枚ずつ、お2人がスタンプを押したんですよね。
藤井:7時間以上ずっとスタンプを押してたから、予想以上に腕がパンパンになったよね(笑)。ハンコ痛っていう。
── それ、演奏に支障が起きますよね(笑)。
大久保:その日にリハがあったらやばかった。
── でも、ハンコ痛になるぐらいに一生懸命作った愛情たっぷりの作品ですね。
大久保:愛情と気合いです。
藤井:スタンプは、箭内さんが「音速ラインだったらこういうふうにしたら伝わるんじゃないの?」って提案してくれたんです。今回は、大事な人にあげるために3枚買ったという話を聞いたり、1枚1枚スタンプの位置も違うから、どれ買ったら良いかわからなくて悩んでる人もいたみたいで。俺らのテンションがおかしくなってジャケットにスタンプを6個とか押してるのもありましたから(笑)。気持ちと気合いを充分に詰めた作品ですね。
── 6曲目の『under the sun』は、キラキラとした音の楽器が入っていますが、あれは何という楽器なんですか?
藤井:ダルシマーっていう楽器です。「風とロック」を広島でやった時にHouribe LOU(ホウリベ ルウ)くんという人が出演していて、渡邊俊美さんとセッションしてたのがすごく良くて連絡先を聞いて、レコーディングは広島から日帰りで来てもらいました。ルウくんと出会って出来た曲で、ツアーにも呼ぼうと思っています。ほんとはアルバムの最後に入れようと思ったんだけど、俺らの世代の言ってみればレコードのA面の最後という位置でも良いかなって。
── じゃあ、7曲目の『傘になってよ』はB面の1曲目という扱いになりますね。
藤井:そうそう。その体質は抜けないよね。
── 8曲目の『東京』は、福島在住の藤井さんが今、東京を題材にして歌うというのもとても意味があるような気がしていて。
藤井:渋谷とかにいると、ほとんどが地方の人なんだろうなと思うんですよ。みんな夢を追って東京に出てきて、日々頑張っているんだろうなって。俺はあんまりそこの世界観はわからなかったんだけど、そういう人がどう思ってるんだろうなと思ったところから曲を書き始めて。渋谷のど真ん中というのは夢の対象というか。いろいろと考えて、迷って、でも何か掴みたくてという人の集まりなのかなという。
── その感じわかります。私もそうでしたから。ところで、今回収録されている曲で驚いたのが『Beer can』でしたけど、缶ビール開けるところから始まって、ビール好きの藤井さんを始め、音速ラインの人柄が見える曲だな、と。
藤井:昔の音速ラインだったらナシの曲でしたね。でも、音速ラインの音楽とやってる人が結びつかないという現象をどうにかしたかったんです。話すとこういう人だっていうのを曲でやってみた。こんな歌唄うんだって。等身大の歌だよね。
── 缶ビール開けたプシュッの後、藤井さんがすごく楽しそうに笑っている声までそのまま入ってますよね。
藤井:あまりにもあの音が良く録れちゃったから。普段のまんまです。
人間くさく出来たかどうかが判断基準
── 『Beer can』はライブでの盛り上がりが見えますよね。
藤井:大久保の「ファイト!」のかけ声が新鮮だし、ライブで楽しみたい曲NO.1です。ライブはいろんなものを発散させるために来てくれるわけだから、大久保と一緒にかけ声かけてもらって発散してもらえたらと思いますね。いろいろアイディアもあって、曲の中にセリフエリアがあるじゃないですか。ライブでは、そこでお客さんにマイクを預けて魂の叫びを言ってもらおうと思っていたり。やまださんも東京のライブでやります?
── 叫びたいことがたくさんありすぎて、時間に収まりきらなそうなのでご遠慮致します(笑)。ラストの『彼女といえば』は、打ち込みやストリングスを使用したすごく広がりのある曲ですね。
大久保:これこそシューゲイザーですよ。ど真ん中の。
藤井:ザ・ヴァーヴも入ってるんだよ。
大久保:それはちょっとわからなかった。
藤井:メンバーなのに(笑)! まさにこういう人が聴いて、さかのぼって欲しいんですよね。
── 曲順は悩みました?
藤井:めちゃめちゃ悩みました。『Beer can』をどこに入れたら良いかわからなかった。最終的にエンジニアの(杉山)オサムさんに相談したら、「最後から手前じゃね?」って。そしたら最後の曲も活きるし、オサムさんの一声で決まりました。
── 『Beer can』だけちょっと雰囲気違いますからね。
藤井:『Beer can』のあとに『彼女といえば』を聴くと、より名曲に聴こえるという流れです(笑)。飽きないで聴いてもらえたら嬉しいですね。
── 藤井さんが一番思い入れがある曲はどの曲ですか?
藤井:今一番放りたいメッセージは『傘になってよ』ですね。簡単なことなんだけど、迷ったり辛くなったら立ち止まりたくなると思うんだけど、それでも歩き出せば良いんだよって思うんです。そしたら何かしら答えも結果も出てくるし。止まっちゃったらそこまでだっていうことを言いたかったんです。
── 大久保さんは?
大久保:あたま3曲(『G.B.V』『ありがとね(album edit)』『Paint[]』)ですね。レコーディングした場所が神奈川県の大和のほうで、駅から歩いて20分ぐらいあって。そこでやらせてもらった印象がすごく強いんです。他の曲は下井草にあるスタジオインパクトでオサムさんに録ってもらいました。
── レコーディング作業はどうだったんですか?
大久保:今回時間かけさせてもらったので、気持ちに余裕がありましたね。今までは録らなきゃというテンションでやらせてもらっていたんですけど、今回は全体的に敢えてフレーズを考えて行かず、その場で考えてセッションしながら録るという形を取らせてもらい、クリックもあまり聴かずに、バンドの空気感を優先させたんです。うまく弾けたかというよりは、人間くさく出来たかどうかを判断基準にして。全体的にそんな雰囲気が出てると思います。
── かっちりかっちりという感じではないなとは思っていました。今回も人柄とお酒と音楽が紡いだ人肌感のあるアルバムになりましたね。この作品をリリースして、10月19日から東名阪福島の4箇所でライブがあります。
藤井:最近はアコースティックツアーが多くて、バンドでのツアーはひさしぶりだし、家族みんなで来て欲しいな。
大久保:楽しみでしょうがないですね。アコースティックがイヤだというわけではないんですが、やっぱりバンドで音を出したいので。
── ライブはどんな感じになりそうですか?
藤井:アルバムの曲がメインになるとは思うけど、激しくやりたいですね。
大久保:振り切りたいですよね。ひさしぶりなので面白いセットリストを組みたいと思っています。アルバムの曲はライブに焦点をあてて作った曲だし、今まで以上に楽しくなるはずなので絶対に見に来て欲しいです。