ジャンルという枠組みにとらわれず、そのままの『存在』でありたいというlloyが主催する『IMMIGRANT HAUS』(移民の家)が7/19に新宿LOFTにて開催される。人の意見に左右されやすく、なにかとグループ分けをする趣向がある世間に対し、「自分の意見が無いなんてダサイでしょ!」と一蹴りする松原(勇樹)氏。そんな彼が企画したイベントの思惑、今の音楽のあり方について語ってくれた。かなりアクのあるlloyからのメッセージがビンビンに伝わってくる。そして、そんな個性強いメンバーがいるlloyとは。今回は、ボーカルのyuko-kat(yuko)とギターの松原氏を迎えてインタビュー。(interview:重田 磨美/camera:大参 久人)
「偏執狂な音楽家」との出会い(yuko-kat)
yuko:2005年かな?
―yukoさんはlloyの前にもGIRL NO PAINというバンドで八田(敦)さんと活動されてましたよね。
yuko:昔スタジオで働いてて、そこの店長さんが「HATE HONEYっていうかっこいいバンドが居るよ」って教えてくれて、LOFTが西新宿にあった頃にライヴを見に行ったんですよ。そのときに「ベースの人、超かっこいいな~」と思って。いつかのライヴ終了後、八田氏にデモ音源を渡したんです。Portishead(ポーティスヘッド)のインストに声をのせて作った音源とか入れて(笑)。。それで興味を持ってくれたのがきっかけです。
―松原さんとは、どういう出会いだったんでしょう?
松原:現RADIOTSのボーカルYOSHIYAさんが12年くらい前にQUARTER HOOLIGANというバンドをやっていて、そのイベントをLOFTに見に行ったんだよね。その時にGIRL NO PAINも出演していて「かっこいい!」と思ってよくライヴを見に行くようになったんですよ。ずっとバンドメンバーを探してたんだけど全然見つからなくて、パチンコばっかりして腐ってた時期だったんだよね。そんな時にGIRL NO PAINがスタッフ募集してたから、当時俺が付き合ってた女の子に「スタッフやってみなよ!」って言って潜入してもらって! 好きな音楽とか好きな映画とか、全部俺の趣味の作品を挙げてメールを送りました(笑)。
yuko:そのメールの内容、覚えてるよ。
―(笑)メール見たとき、どう思いました?
yuko:リストに並んでるバンド名を見て、音楽のセンス良いな~と。でも実際その女の子がスタッフとして来てくれるようになってから話していると、あんまりファンでもなさそうな雰囲気だったから、「あれ?」って。
―そのメールを書いたのが松原さんだったっていうのは、いつ発覚するんですか?
yuko:今ですね。
一同:笑
松原:GIRL NO PAINが解散することになった時に、yukoちゃんと一緒にバンドをやりたくて音源を渡したんだよね。
yuko:それもね、その頃スタッフをやってくれていた男の子といつの間にか仲良くなってて、その男の子を介して音源を持って来たんですよ。(松原ちゃんの)潜入っぷりは凄いです(笑)。
松原:しょうがないよ~!(俺は)誰かに求められて友達になったことなんて一度も無いんだから(笑)!
yuko:その頃、私の周りにもバンド界隈の人がいっぱい居たんだけど、「この人達は本当に音楽を作っているのか?」みたいな疑問があって。実際、お酒を飲んで、自分は何も作らず人の音楽をあーだこーだ言ってるだけの人が多いように見えたんです。だから私は自分で曲を作ろうと試行錯誤していた時に松原ちゃんが30曲くらい入ったデモ音源をくれたんです。その音源がMDだったんだけど、曲名を書ける小さいシールのところに30曲分の名前が綺麗に書かれてあって、それを見た瞬間に「この人は変人だな」と。
一同:笑
yuko:さらに「yukoちゃんが好きそうな曲を選曲したよ!」って言って、MIX MDもくれたんだよね。まぁ、殆ど当たってなくて(笑)。
松原:KinKi Kidsの「kissから始まるミステリー」まで収録したからね!
―(笑)
yuko:ま、そういう感じでこの「偏執狂な音楽家」に出会ったわけです。それからほぼ毎日会うようになって、長時間セッションし続けました。私の楽曲を形にしてくれる共同作業の人を求めていたんだけど、いつのまにか松原ちゃんの勢いに巻き込まれていきましたね(笑)。GIRL NO PAINの時は曲作りに口出し出来る程、自分の感性に確信が持てなかったんですが、結局のところ、理論もコードも安っぽいラブソングなんかもクソっくらえで、自分がかっこいいと思えるもの、自分の音楽をやってやろうじゃん!と考え始めました。そしてまたバンドをやるなら絶対に八田さんのベースで、と思っていたので自分が最高だと思える楽曲を八田さんに弾いてもらいたいという気持ちの上で曲作りをしてました。
松原:ドラムは結構メンバーが入れ替わったりしてたんだけど、ミスター(shigeo)とやりたいって思ってたので、本格的に活動しようってなったときにお願いしました。八田氏が一度lloyを辞めたときがあったり、俺とyukoちゃんが絶縁状態だったときもあって、当分一緒に演奏することは無いだろうと考えていたんだけど、意外と早く再始動出来るようになったんですよね。
―lloyの皆さん、それぞれの個性が強いですよね!
松原:その個性をもう少し柔らかくすれば上手くいくんじゃないの? っていう感じはあるかもしれませんね(笑)。
―個性的といえば、yukoさんのステージ衣装もいつも素敵だなと思うのですが、やはりこだわりがあったりするのでしょうか?
松原:俺もこだわりあるんだけど!
一同:笑
yuko:初期の頃は、会場にミシンを持ち込んで、ウェディング用のオーガンジー(薄く透けている生地/遺体用ベールにも使用される)をその場で縫いながら燃やして、ステージの装飾をしたり、同じ生地でステージドレスを自分で作ったりしていましたね。その頃は『古い自分を脱ぎ捨てる』というコンセプトがあったので、埋葬するっていう意味合いでそのオーガンジーの衣装を燃やしたものを着ていました。他にも、今までに出会ったアーティストのステッカーをTシャツに貼って衣装にしたこともあります。でも、どれもファッションとしてかっこいいっていうだけの理由で着ているのではなく、アートを身にまとっている感覚なんです。今まで出会ってきたアーティスト達には心からのリスペクトを表したいので。例えば、今着ている服も昨年ヨーロッパツアーで共演したAniaetleprogrammeur(アーニャエルプログラマー)のTata Christiane(タタ クリスチャン)がデザインしたものだったり。旅をしたり、活動したりして目的地に進んでいく道の中で出会ったものを身体にペタペタ貼っていってる感じですね。曲に関しても、旅の途中で出来たものを出会った人と作って作品になっていくことがありますね。
―出会いを大事にするってことですね。
松原:スタンプラリーみたいな感じだね!
一同:笑