“洋楽”を歌う夢を叶えて下さるのは松田聖子さんしかいない
──今回は、どのような流れでリリースという形になったのですか?
「CDを出せるのはこれが最後という気持ちで、それを『Like a record〜』でどうしても発表したいって。それで、好きなものと言ったら洋楽だ、じゃあ僕が洋楽を歌うとなったらどうするのが一番良いかなって考えていったんです。僕が洋楽って言うと違和感があると思いますが、洋楽にこだわっていたんですよ。それで、その思いを叶えて下さるのは、大好きな松田聖子さんしかいないと思って、今回作詞・作曲をお願いさせて頂いたんですけど、海外での活動を経験されている松田さんに自分の思いを一回話させて頂きました。Naked Loftっていう場所でイベントをしていて、どうしてもそこで発表したいので曲を作って頂けないでしょうかってお願いしたら受けてくださったんです。本当ロフトさんのおかげですよ」
──いやいやいや! とんでもないです。『She is my new town / I just want to hold you』は、聖子さんが作曲もコーラスもされていますが、曲を作って頂くにあたり、藤井さんから聖子さんにイメージはお伝えはしたんですか?
「子供の時から、ただのアイドルじゃなくて後々ミュージシャンになる人達みたいな、UKチャートを賑わせている方々がすごく好きで。“どっちかって言うとアメリカのビルボードチャートじゃなくてUKチャートのイメージなんです”って松田さんに言ったら、“分かりました”って。更に“どういうのがお好きか私も知りたいから、好きな曲を挙げて何曲か聴かせてもらっていいですか”って。それで選んで40曲ぐらいお渡したんですけど、お家帰ってから渡し過ぎたなと思って(笑)。でもある日出来上がった曲を聴いて、“これです!”っていうのやったから、あぁほんまに聴いて下さったんやなって言うのは、ひしひしと伝わりました。松田さんてすごい音楽家やと思うし、すごい稀有な存在だと思うんです。そんな方に作って頂けて本当にありがたいなと」
──何か印象的なエピソードとか、ありましたか?
「最初はシングルで1曲だけと相談していたんですけど、2曲挙げてくださって、どちらか選んでくださいって。で、聴かせて頂いて2曲とも好きやし、これは選べないですってなっちゃって。そしたら2曲くださったんです。あぁ、松田さんの事を好きで良かったなぁと思いましたね」
──余談ですけど、先日プラスワンでやって頂いた『Like a record〜』で、松田聖子さんからのビデオレターが流れたじゃないですか。その時に、聖子さんが“本当だったらそちらの会場にお伺いしたかったんですが”っておっしゃっていて、会場全体から“いやいやいやいや”という声が上がっていましたよね(笑)。来ちゃダメという意味じゃなくて、プラスワンにあの聖子さんが!? という。
「聖子さんは常に本気の方ですからね。お世辞じゃないと思います。もちろん来ちゃダメじゃないんだけど、本当に来られたら、えっ!? って、こっちがアップアップしちゃいますよ(苦笑)」
──今回のビデオクリップは2曲とも『くるみ割り人形』がモチーフになっていましたが、ご自身で編集されたんですよね。
「2曲ビデオクリップを作る事はマストじゃなかったんですけど、ビデオクリップを観るのが好きで。最初『She is my new town』を聴いた時に、通りを歩いている感じがしたんですよね。で、2曲目『I just want to hold you』を聴いた時に、帰ろうと思ったけど寄り道してお店に入った感じがすごいしてて。その時に、8歳か9歳の時に劇場で観たサンリオの『くるみ割り人形』を急に思い出したんです。クララが暗い中を歩いてるイメージが思い浮かんで、サンリオさんになんとか映像を使わせてもらえないか相談したらOKを頂いて。本当にラッキーなんですよね。僕が子供の時になりたかったものが、カメラマンとCMディレクターとあと電気屋さんだったんです。なぜCMディレクターかと言うと、『くるみ割り人形』につながるんですけど、『くるみ割り人形』は人形アニメーションを真賀里文子さんという方が手がけていらっしゃるんです。CMもたくさん手がけてらして、すごい方なんだなって思い始めて、CMディレクターに興味を持ったのがきっかけてで。話は逸れちゃいましたけど、今回ビデオクリップを作るにあたり、『聖子さん』も『くるみ割り人形』も自分にすごく影響があるものでその2つをどうしてもくっつけたかったんです。それで、1コマ1コマの作業をスタッフの方と話し合いながら完成出来たので、もうなんの悔いもないです。それをロフトさんでやったイベントで見ていただけたっていうのは本当嬉しかったですよ。制作に取り掛かった当初からそこをゴールにしてたから。映像の発表は都合上プラスワンさんになりましたけれども、楽曲を発表させていただいたのはNaked Loftさんやし、そこだけは譲りたくなかったんですよ」
──初披露した時の心境はいかがでしたか?
「本当は自分が楽しむ前にお客様に楽しんで頂かなきゃいけないんですけど、自分が一番楽しんでいたと思います(苦笑)。Naked Loftで初披露出来ることが本当に贅沢だと感じたんです。歌いながら今まで味わったことのない感じがありましたね。Naked Loftさんとかプラスワンさんに思い入れがありすぎる部分もあるんですけど(苦笑)。僕の20年とかのキャリアは別に大したことじゃないと思いますが、もともとこんなに長くこの仕事を続けさせて頂けるなんて思っていなかったけれど、このまま続けられたなら、ここから先の芸能生活のほうが長いと思っているんです。そこで新しい自分になるきっかけを与えてくれたNaked Loftには恩を感じてるんです。」
──以前藤井さんが“こんな世界があったんだ”っておっしゃっていたのは印象的でした。
「本当にそう思いました。わかりやすいから世界って言ったんですけど、こういう場所があったことを知らないというのは、どう考えても自分の勉強不足でしかなかったんですよ。なぜなら、自分より若い人達が出ている場所ですから。以前は、自分が今面白いと思うのはこういう事ですって言い切るのは怖かったし、洋楽が好きということも昔から言いたかったけど、僕が面白いと思ってもまわりは面白いと思って下さらないでしょっていう勝手な思いがあって、それをNaked Loftはバンって言わせてもらえた場所なんです」