チャレンジする裏には絶対的な確信を持っています
── 今作を聴いて、最初に気になった曲が『東京流星群』なんですけど、シンガロングする感じが珍しいな、と。そしたら、前作をリリースした7月から今日に至るまで、どんな経験を積み上げてこういう作品に至ったのかなと思ったんです。
柳沢:『東京流星群』だけに特化して言うと、前回のツアーが始まった時に、みんながもっともっと体を動かしたり、もっと歌いてーんじゃねーかと感じたんです。僕らの曲って、1番も2番もサビが一緒だよというのは実はあまりなくて、そういう時にみんなで歌える曲というのがあっても良いんじゃないかって。そこに焦点をあてて作り始めたんです。裏テーマとしては東京生まれ側から見た東京の歌を歌いたかったんです。
── 地元・東京の歌を。
柳沢:世の中にある上京ソングに若干言い訳を感じていて、カウンターパンチを食らわせたかったんです。東京は星が見えないとか言われていて、もちろん別の土地ほうがキレイには見えると思いますけど、東京でも住宅街に行けば星は見えるし、上京して来た人が東京だから就職が難しくなったとか、東京に来て夢が見れなくなったとか、東京を言い訳にするのって違うんじゃない? と前作を作った時にすごく思ったんです。そういう気持ちがうまいことハマったのと、流星群のイメージと人が集まってわらわらしている感じがリンクして、“東京流星群”というワードが出てきたんです。
── 前に東京出身であることをあまり言いたくなかったと言っていた気がするんですけど、地元の東京を歌うことになったきかっけってあるんですか?
柳沢:自分たちでやり始めたからだと思います。東京生まれで何不自由なく過ごして、なんでも揃っていて、夢にも近くて羨ましいよなって、上京してきたバンドやかっこいいと思ったバンドに言われた時に、謎の劣等感を感じていて。俺らハングリーさがないのかな、どうやったら手に入るのかなって。でも、それが自分たちに自信がなかったから思うことなんだと気付いたんです。自主レーベルになって、『未来の始めかた』を歌っているあたりから自信が持てるようになったし、歌ってることの整合性が取れてきて、自分の考えともリンクしてきたんです。
渋谷:自信の裏付けみたいなものが、今までの自分らの王道と思う部分から少し外れてみてもいいんじゃないっていう柔軟さに繋がってきたのかなって。昔はライブで再現出来ないアレンジをCDに収録することが納得出来なかったんだけど、自分たちでレーベルを立ち上げて、ライブをたくさんやって、いろんなことを考えて、そういう経験は自信にもなるし、ライブでちゃんと見せる事が出来るんだから音源でしか聴けないもの、音源でしか得られない感動があったら良いんじゃないのって。それを柳沢とかに言われた時に、今までだったら、そういうのバンドっぽくないし、無理だと思うって答えていたんです。でも、今回色を意識した作品で、面白いと純粋に思えることをやったらいいんじゃないのっていう考えが自分たちにも出てくるようになったんです。
── 前作に比べて、より自由になった感じですか?
渋谷:状況は変わってないんですけど、気持ちの点ですかね。言ってしまえばずっと自由なので(笑)。
── 環境はそうですけど、前作を出して、こういうこともやれるんだと掴めたというか。
渋谷:前作からキーボードを入れてたりはしていて、アレンジに関してもどんどん発想が自由になってきているとは思います。
── アレンジが柔軟な発想になったって、ここ最近吸収したものなのか、今まで持ってたけど出さなかったのか、どちらだと思います?
渋谷:持ってたものだと思います。抑制されてた部分もあると思うし、いろんなことに対しての恐れもあったし、バリバリやってるバンドに対する劣等感も昔はあったけど、それがどんどんなくなって、今だから出せてるという感じがしています。
柳沢:今まではSUPER BEAVERの枠の小さいところしか見せていなかったけど、俺たちがやれることって果てしないと思うんです。自由に出せる環境や状況を自分たちで作っただけであって、本質は変わってないと思うし、歌ってる言葉も前作に比べて筋違いのことを言ってるわけでもないと思う。それを受け入れて全部でSUPER BEAVERっぽいねと言わせることが出来ると今は思っています。でも、当たり前ですけど自主というのは何の後ろ盾もないわけで、テメエのケツはテメエで拭くしかなくて、チャレンジする裏には絶対的な確信を持っています。“とりあえずやってみる”はないんです。そういうものは段階を踏んでようやく今持てていますね。
圧倒的なライブを見せれば響くという自信
── 今回は前作『未来の始めかた』の続きでもあると思っていて、未来を始めるためには今を大事にしなければいけないんだというメッセージを強く投げかけていると思いますが、すごくバンドが力強くなったなという印象を持ってます。
渋谷:Rooftopにはずっと前から見てもらってますから、そう感じるかもしれませんね。
柳沢:紆余曲折の全てを観てますからね。初めて出したCDでもインタビューをしてもらっていたと思うし。
── 初インタビューは、たしか柳沢さんが高校卒業したばかりの時で、『日常』だったと思います。もうあれから6年ぐらいになるんですね。
渋谷:結成満7年ですよ。
柳沢:4月1日で8年目に突入します。
── 若いのに芸歴長いんですね。今さらですけど(笑)。
渋谷:いろんなところに行っても言われますよ。まだそんなに若いんだね。
柳沢:でも長いよねって。
渋谷:ずっといるよねって。
── 止まらずにちゃんと活動が見えてるということですからね。
渋谷:ありがたいですけど。
── その間に前回のインタビューでも話してますけど紆余曲折あって、でも今はバンドにも迷いがなくなった感じはありますね。
柳沢:7年の間でいろんなことがあって、スタンスとして何がかっこ良くて何がかっこ悪いって、形に出来てきたのはここ3年ぐらいだと思う。そこまでが長すぎたというのはありますけど(笑)。でも今は迷いがないから、自主企画で対バンが全然違うジャンルでも自分たちがかっこいいなと思えば良くて、それは俺たちが圧倒的なライブを見せれば響くと思えたからなんです。だとしたら、ビーバーがまん中にいるとあんなに面白いイベントになるんだ! って思ってもらえるイベントが出来たらどれだけ楽しいだろうっていう考え方でしかやってないです。
── 昔だったら、影響受けるバンドを見て俺らもああなったほうがいいのかなと思ったり?
柳沢:俺じゃないですけど、ドラムセットに突っ込んでみたことありますよ。
── そうだったんですか!?
柳沢:壁に穴開けたりとか、破天荒なことをやってみるという。でも俺たちがそれをやって合うわけがないんです。
渋谷:どのジャンルでも信念を抱いている人の音楽とか、それに限らずでも、生き様とか気合いみたいなものが見て取れるとかっこいいですよね。“ド”が付く歌モノのポップバンドでもかっこいいバンドがいっぱいいるし、自分たちは経験を積んで自信がついたから、自分たちの見せ方にも信念を持てるようになってます。