SUPER BEAVERが前作のフルアルバム『未来の始めかた』から9ヶ月ぶりとなる、ミニアルバム『世界が目を覚ますのなら』を4月3日にリリースする。自主レーベルを立ち上げて1年の間、ライブの回数を重ね、たくさんの人に出会い、多くの経験をし、その結果メンバーそれぞれが確固たる自信を持ってこの作品の制作に取り組んだ。以前は、地元が東京であるが故に感じてしまう、どうしようもない劣等感や不安もあったそうだが、より彩り豊かな表情を持った全6曲、揺るぎない自信と強い意志を持った言葉が散りばめられていた。
リリースごとに、ライブごとに進化を続け、常に最高を更新し続ける彼らが、またしても、最強で最高に思いが溢れた作品を完成させた。これを持ってツアーにまわる彼らは、さらなる成長を遂げて東京に戻ってくるのだろう。(interview:やまだともこ)
ようやく歌ってることと自分たちの整合性が取れてきた
── ライブの数が多かったり、ずっと動いているイメージがあるんですが、作品としては9ヶ月ぶりになるんですね。それでも、あれだけライブをやってて、いつ作っているんだろうという感じもしなくはないですが。
柳沢亮太(Gt):とにかくライブがやりたくて、出来れば新しい作品を持ってツアーに行きたいので、ツアーをしながら曲作りをやってます。
── 曲はコンスタントに出来ているんですか?
渋谷龍太(Vo):出すって決まってからやるんだよね。
柳沢:出すって決めてから作ったりもするし、ネタみたいなものはたくさんあるんですけど、それをバンドでアレンジするというところまでなかなか行かなくて、録るって決めてからいっきに仕上げていくというところはありますね。
── 今作をリリースしようという話になったのはいつぐらいですか?
柳沢:昨年の7月に『未来の始めかた』を出して、ちょっとして次を出したいって話をしていました。それで、『未来の始めかた』のツアーと同時進行で制作に取りかかり、11月にロフトでツアーファイナルをやって、その後にワンマンをエッグマンでやっていたんですけど、昨年中には録り終わっていましたね。『未来の始めかた』以降に出来た曲ばかりだし。
── ということは全部新しい曲なんですか?
柳沢:『二人のこと』はすごく昔からあります。
── 収録するタイミングが今回だったということなんですか?
渋谷:今回のアルバムは、カラフルに見える作品にしようという話をしていたんです。だから、アコースティックとかシンガロング系の曲が入っていて、『二人のこと』は、これまでどのCDに入れてもちょっと浮いちゃうテイストだったんですけど、曲自体は好きだったし、どこかには入れたいという話をしていて、このタイミングしかないって入れ込んだら良い色になったんです。
── いつぐらいの曲なんですか?
柳沢:メジャーにいたときには作っていた曲なので、3〜4年ぐらい前からありますね。
── 「君」と「僕」をテーマにした曲ってSUPER BEAVERにしては珍しいですよね。昔はたくさん書いていたと聞いたことがありますが。
柳沢:書いてましたね。でも、ここまでわかりやすいラブソングはなかったので、けっこう珍しいです。そういう意味でもテイストは違うかなと思います。
渋谷:曲調、詞の内容、全部。当時もけっこう特殊な感じで、曲自体はすごく好きだし良いなと思っていたんだけど、どこで入れたら良いのかがわからなかった。
── では、今回のアルバムのコンセプトとかはあったんですか?
柳沢:聴く人が聴いたら変化球ととらえるかもしれないところをあえて狙いに行きました。レコーディング中キーワードになっていたのが、“剛速球のギリギリボール玉”だったんですけど、今までこんなボール見た事ないというものも敢えて狙って行こうかなって。具体的にサウンドのことで言うと、ドラムの藤原が叩きたがりの人なんですけど、ドラムのフィルを最低限シンプルにして、それで表現できる空気感で1曲作ろうよとか。シンプルに叩くことが僕らにとっては新しいことだったりもするんですけど、そういうのを意識して狙ったというのはありますね。
── 『世界が目を覚ますのなら』のアルバムタイトルはどんなところからですか?
柳沢:1曲目の『それでも世界が目を覚ますのなら』が先に出来ていて、言い訳も含めて毎日の中でいやになっちゃうものとか、やめようって言うけど結局やめないものとか、諦めようって口先では言うけど諦め切れないものとかいろいろあるんですけど、目を覚まして今日という日を迎えられたのであれば、やってみる価値はあるんじゃないの?って。そういう意味で『それでも世界が目を覚ますのなら』というタイトルになって、そこからですね。
── 『それでも世界が目を覚ますのなら』の「終わりは終わり」という歌詞が印象的でした。
柳沢:終わりが始まりだって言う人もいて、感覚はすごくわかるんですけど、それって別物の話だと思うんです。同じものっていうのは絶対にないんですよ。意志を受け継いで始めるものはもちろんあって、それは素晴らしいことだと思うんですけど、例えばバンドが解散して新しい音楽人生が始まるかもしれないけど、新しく始めたバンドは絶対に同じバンドではないわけじゃないですか。同じ始まりはひとつもないと思うし、終わったら終わりだと思うし、っていう気持ちで生きてたいし、やっていたいという気持ちなんです。やり直しが効くものはいっぱいあるけれど、何でもかんでもやり直せると思ってるのは違うから。
── 例えば彼氏にゴミクズのように捨てられて、新しい彼氏を見つけたとしてもゴミクズのように捨てられたという事実は変わらないですからね。
柳沢:新しい彼氏が出来てもそれは別の人だから。
渋谷:何でやなぎが“彼氏”で例えてるの?
柳沢:いや、それは、やまださんの話の流れで言ったんだよ(笑)。
渋谷:こういうの怖くなるんだよな(笑)。