10年後も歌っていたい
──今作を聴いて、血の通ったアルバムになったという印象がすごく強かったんです。キクチユウスケという人が思った言葉が素直に吐き出されているというか。
キクチ:やっと人になれたんですね(苦笑)。「ずっと歌い続けます」って言い切る人もいるんですけど、僕は今まで言い切る事が出来なかったんです。でも、『あと何度』という曲は、10年後も歌っていたいという思いで素直に出てきた曲だったんです。今までのアルバムって、言葉もキーの高さも、テンポ感も、肉体的に疲れてきてしんどいやろうなって、作りながらわかってたわけですよ。でも、今回は50歳ぐらいまでは歌える歌なんじゃないかなという作品しか入ってないんです。テーマはそれでした。
── 良い意味で力が抜けてる歌い方だなって。でも、歌詞の情景が浮かぶし、サウンドもポップで聴きやすいから、すんなりと体に入ってくる曲というか。
キクチ:「歯医者に行こう」とかそういう曲も歌いたと思うんですけどね。奥田民生さんとか、D.W.ニコルズのダイちゃんが『カレーのルウ』とか『ファミレス』とか歌ってますけど、ああいうのいいなって思いますよ。
── planeはないですよね。
キクチ:出来ないんですよ(苦笑)。
── 『幸せがおとずれますように』とか『出逢いの日』のような、ちょっと切ないラブソング的なものが多いというか。
キクチ:この年になると、別れた人も新しく付き合う人も、みんな幸せになって欲しいなと思うしかなくなるわけで、恋愛だけでなく辞めていったマネージャーにも思う。前にプロデューサーが、「みんな売れたらええねん」って言っていたことがあるんだけど、今になって思いますね、本当にそうやなって。みんな売れたらええねんってみんなが思っていたら良いのになって。そう思えるようになりました。
── そういう気持ちの変化なのか、ライブに来てくれるお客さんに対しての感情とか、キクチさんから見えてる景色も曲のひとつひとつに込められているような気がします。
キクチ:今回初めて母親にCDを渡したんですよ。一番近くの人に応援してもらえないなら辞めた方がいいと思っていて、例えば結婚して大切なひとが出来てその人が辞めてくれって言うなら続ける事は無理やわって思う。自分の一番近くにいる人に応援してもらえないって無理やもん。音楽を続けられる続けられないってそこしかないと思うんです。
── キクチさんはまわりの仲間に支えられてるというか。
キクチ:そうですね。でも、この人がおるからええじゃなくて、こいつおるけどもっともっと頑張らなって思いますね。
── また、今作ジャケットは、サイの背中に街が乗っているすごく綺麗な作品ですが、これはどなたが描いているんですか?
キクチ:これは池原悠太くんという人の作品です。彼の展示会で、ウミガメの背中に街がある絵を見た時にすごく衝撃を受けて、本当はその絵を使わせてもらいたかったんだけど、権利がいろいろとあったみたいなので、サイの絵を使わせてもらうことになりました。今、池原くんにPVを作ってもらっていて、アニメーションになると思います。自分が背負ってきた生き方やスタイルがあって、それぞれに今があるということなんです。だから同じ歌でもそれぞれの解釈があるわけで、そこにこのplaneの音楽がどう響くかというのがテーマです。
── それぞれに過去があって、それぞれに今があると。
キクチ:一番大事なのが今日、二番目に大事なのが明日、三番目に大事なのは昨日だって言ってる人がいましたけど、そういうことですね。
── それで、キクチさんの「今」をこのアルバムでは歌っている、と。
キクチ:そうなんです。絵と繋がったんです。アルバムのジャケットは事務所をやめてからは自分達でデザインして来たんですけど、第三者が僕らの曲を聴いてどう思うかも大事で、自分じゃない人に描いてもらいたいなという気持ちもあって。planeの作品に関しては今後池原くんとやっていきたいと思っています。
── なるほど。そのリリースイベントが4月7日に下北沢GARAGEであります。
キクチ:LOVE LOVE LOVEとammoflightとの3マン。慌てて組んでもしゃーないなって思ってるからツアーはその先ですね。このアルバムは1年かけてじっくり売っていこうと思ってます。ホントは2月に出そうと思っていてリリースツアーも組んで、ファイナルが4月7日のGARAGEを予定していたんですけど、流通に乗せたかったし、自分の知らないところでCDを手にしてくれてるってやっぱり嬉しいから、リリースは予定より遅いこの時期になったんです。ツアーはまだですけど、ライブはたくさん決まっているので、遊びに来て欲しいです。
LIVE PHOTO BY:o-mi