Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューアーバンギャルド(Rooftop2012年11月号)

古い価値観を爆破せよ!
「価値基準の創造」から生まれた『ガイガーカウンターカルチャー』

2012.11.01

バンドに出来ることはなんだ?

── みなさんの曲って聴く人によって歌詞の好き嫌いがあると思いますけど、2012年の今をちゃんと見据えて歌ってますし、すごく普遍的なものだと思うんです。何十年先でも聴けると思いますし、黒歴史にはならないと思います。ただ、規制がどんどん厳しくなっている中で、このギリギリの歌詞をよくメジャーレコード会社が出してくれたなとは改めて思いますけど(笑)。

松永:今回ダメになった歌詞がけっこうあるんですよ。

浜崎:本当はもう1曲入れる予定でしたけど、完全にNGをくらったものもあって。ライブでは定期的にやっていこうと思うんですけど、あれもダメこれもダメでジャケットもNGで、怒りの抗議は鳴り止みませんよ。

── そこは逆転の発想で、これならどうだという感じを楽しんでいるようにも見えますけど。

松永:出来ればそのままの形で出したいけれど、形が変わったら変わったで面白くなる方法は常に模索しています。マルセル・デュシャンという人が作ったガラスの作品が、輸送中に割れてひびが入っちゃったことがあるんですけど、それを知った本人が「これで作品が完璧になった」って言ったらしくて、そういう考え方もあるんだなと思って。規制されたり、これはちょっとって言われること自体を楽しんでも良いのかなと思ったんです。

浜崎:メジャーに行かせてもらって、縛るものがあるから生まれるものもあるんですよ。「好きにやって」って言われると逆に出来なくなっちゃうんじゃないかなとか。そこは自分たちでも葛藤している部分で、本当にやりたかったものが出来ないというもどかしさもありますけど、考えを変えてみたら自分たちが見えなかった部分が生まれたりするから、相乗効果なのかなって。それに縛りがないインディーズでやっていたとしたら、より過激なものを欲して歯止めがきかなくなる気がします。でも私たちは音楽をやってると思っているから、過激と言うならステージ上をめちゃくちゃにしたらOKなのかというのも疑問に思えてきたし、原点に引き戻してくれたというか。その時その時で見えてくるものがいっぱいあるんです。

松永:僕たちみたいなバンドがメジャーでCDを出すということ自体が面白いんですよ。

── いろんなものと戦いながら。

浜崎:時にはプンプン怒って(笑)。

── それが原動力かもしれないですね。

松永:そうかもしれないです。

浜崎:でも、歌詞は過激なものを書けば良いだろうみたいなことは絶対になくて、その曲にその言葉が乗るのが必然だから書いてるだけだと思うんです。

松永:『さよならサブカルチャー』とか『生まれてみたい』の歌詞は問題なくOK出ましたけど、そういう曲とアルバムに入ってる『血文字系』(ピー音が多めの曲)も気持ち的には一緒なんです。面白いものにしようというベクトルが曲毎に違うだけであって。僕はマニアックな映画も観ればメジャーの映画も観るし、両方とも面白いものは面白いんです。メジャーを悪くを言う人たちは売れれば売れるほど「売れるものはよくない」って勝手な原理主義みたいなものがあるけど、そういうことではないんじゃないかなって思うんですよ。

浜崎:そこも自分の中の基準で、メジャーに行ってつまらなくなったとかいろんな人が言われてますけど、ちょっと待ってくださいよと思うんです。作ってる側としては良いものを作りたいという気持ちが根本にあって、初期衝動に突き動かされるままにやってるんです。聴いてる人が若い頃はそういう音楽が好きだったけれども、老いていくうちに違う思考になったんじゃないかなって。でも過去は美化されるものだから、昔は良かったって言うのかなって。

松永:僕たちに過激なバンドというイメージが固定しすぎてしまうと、それがデフォルトになってしまうんですけど、常に自分たちの在り方を更新したり、問い直していく必要もあって、もっといえばバンドの在り方も日々変わってきているんです。“アイドル五番勝負!!!!!”をやって感じたのは、今のアイドルってすごく自由になっていて、バンドも自由な考え方を持たなきゃダメだなって。

── アイドルの方々との対バンをやってどうでしたか?

松永:アイドルの子たちは鋼のポジティブさがあって、「1枚でも多く売りたいんです!」「1人でも多くライブに来て!」というのがいやらしくないんです。純粋な気持ちが出ていて、それがすごく良いなって。だからファンもそれに対して複数買いたければ買うって。あの感じがストレートで良いなって思いました。

── 昔のアイドルってそういうことを口に出さなかったけれど、今はどんどん貪欲になっているというか。

浜崎:たくさん種類あるから全部買ってねって大前提で言っていて。

松永:昔はきれい事を言ってる歌謡曲の世界に対してロックがケンカを仕掛けていたのに、今はアイドルのほうがよっぽどストレート。じゃあ僕らバンドに出来ること、バンドが得意なことはなんだろうと考えた時に、アイドルのポジティブなエネルギーに対してネガティブなエネルギーをメッセージとして出せたり、警鐘を鳴らせる部分なのかなと思ったんです。言ってはいけないとされていることをあえて言ったりとか、みんなが日頃見たくないと思ってることをあえて晒すとかが、僕らが出来ることなんじゃないのかなと思ったんです。今はバンドのほうがきれい事を言ってる気がするから。ミュージシャンにしても悪人が見たいですよね。悪い人が減った気がする。それもネガティブなエネルギーと関係するかもしれませんけど、踏み外した部分をもっと作っていきたいし、自分たちもそういうのを見たいなと思います。

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アーバンギャルド
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1. 魔法少女と呼ばないで
2. さよならサブカルチャー
3. 病めるアイドル
4. 処女の奇妙な冒険
5. コミック雑誌なんかILLかい
6. 生まれてみたい
7. 眼帯譚
8. 血文字系
9. トーキョー・天使の詩
10. ガイガーカウンターの夜
11. ノンフィクションソング

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LIVE INFOライブ情報

『ガイガーカウンターカルチャーツアー、或いは生き残るための。』

11月3日(土・祝)名古屋 ell.FITSALL
11月4日(日)大阪 Music Club JANUS
11月11日(日)赤坂 BLITZ
11月16日(金)京都 MOJO
11月18日(日)福岡 VIVRE HALL
11月19日(月)広島 ナミキジャンクション

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