ロックンロールに呼ばれた宿命
──そう考えると、10年掛けてようやくバンドっぽくなったとも言えませんか?
K:普通のバンドと逆だよね。今度出るアルバムから順に遡って聴いてもらえるといいかな(笑)。ベストも最後の曲から逆に聴くのがいいかもしれない(笑)。最初の『BEAT THE MACKSHOW』はちょっと違う風合いかもしれないけど、その後からの何作かは完成度重視で、「こういうロックンロール・バンドがいたら面白い」って考えながら作っていたんだよね。もちろんファーストからずっと藤井も伊東君も参加してるんだけど、今と違ってモノとしての完成度に比重を置いていた。たとえば『怪人二十面相』は随分と荒くれた音だけど、あれも狙ってやってるからね。今みたいな録り方だってもちろんできたけど、それよりもモノとして面白い音、面白いジャケットが作りたかったわけ。初期の作品はデジタル時代の申し子って言うか、デジタル・レコーディングがなければ生まれなかった産物ではあるよね。そんなバンドが今やアメリカでレコーディングしちゃうんだからさ。こんな何でもない曲をわざわざアメリカで録るのか!? っていう醍醐味だね(笑)。
──ちなみに、ベスト・アルバムの収録曲は何を基準に選ばれたんですか。
K:選曲はスタッフに任せたんだけど、結果的に各アルバムのリード・チューンのみをすくい取った形になったね。今までマックショウのことを知らない人たちに向けたラインナップというのが第一義で、もっとディープな部分はファンならよく知ってるはずだから、俺はツアー先でファンに言うわけ。「同じ音源だからお前ら買うなよ!」って。でも、「何言ってんだ! 絶対買うぞ!」ってみんな言ってくれるんだよね。ファンそれぞれの中にベストがあるし、俺たちメンバーの中にもあるんだけど、そういう意見をいちいち拾っていたらキリがないし、これも入れてあれも入れるとなったら10枚組になっちゃうからさ(笑)。まぁ、ベスト・アルバムから遡ってオリジナル・アルバムを聴いてもらえたら嬉しいよね。
──甲子園を思わせる16曲の代表曲と10曲のPVが付いた豪華仕様だし、コア・ファンも所有欲を掻き立てられるアイテムだと思いますけどね。
K:何と言うか、作品としてレコードを出していく人間としては、自分たちのファンばかりじゃなく音楽ファンを減らしたくないんだよ。そのためにはしっかりとした作品を本気で作らなくちゃいけない。今までの音楽業界は良くないレコードでもムリに買わせるようなことをして、音楽ファンに対して失礼なことをしすぎたからね。ただ、今のCDはもともとのレコードとしての機能とは全く違うものだけど、十何種類と出てるK-POPのCDを全部買わないとチケットが入手できないみたいな商売も別に否定はしない。あれはもはやレコードって意味のCDじゃないし、昔のねぶりくじみたいなものだから。でも、俺自身はちゃんと思い入れを持ってレコードを聴いている人たちにはちゃんとした作品を届けたいし、俺たちが予算5万円でそこらの風呂場で録ったようなCDを出すわけには絶対にいかないんだよ。
──今年でDJのアラン・フリードがラジオで「ロックンロール!(突っ込んで、かき回せ!)」と叫んでから60周年、ビートルズがデビュー50周年、ストーンズが結成50周年、キャロルがデビュー40周年、もっと言えばサンセット・サウンドが設立50周年というロックンロール・プレミアム・イヤーに結成10周年を迎えたマックショウは、やはり時代に呼ばれてロックンロールをかき鳴らしているように思えてならないですね。
K:全然狙ったわけじゃないんだけど、ロックンロールに呼ばれてるんだろうね。サンセット・サウンドのエンジニアや、街で「ヘイ! エルヴィス!」って声を掛けてくれた人たちのリアクションを見てても「やらなきゃいけない」って思ったよ。正直言って、やりたくない時だってある(笑)。またのり弁? また吉牛? みたいな感覚は正直あるよ。確かにのり弁も吉牛も好きだけど、「またやらなきゃいけないのかなぁ…」と思うことは多い。でも、いざやれば「やってて良かった」と心から実感するんだよ。アメリカへ行ってもそれを痛感したからね。ロックンロールがあったから向こうの人たちとも会話ができたし、そもそもロックンロールが好きでずっとやってきたからこそアメリカへ来れたんだなと素直に思えた。だからやっぱり、これからもやり続けなきゃいけないよね。