SUPER BEAVERが、1年半振りとなるニューアルバム『未来の始めかた』を7月11日にリリースする。
前作のミニアルバム『SUPER BEAVER』をリリース後、これまでの経験を糧に自身のレーベル"I×L×P× RECORDS"を立ち上げ、新しいスタートを切った彼らが作り上げた今作は、今を生きる全ての人に贈られる力強い作品だ。一度はメジャーというフィールドで活動していた彼らだったが、そこでバンド内がバラバラになるという状況に直面し、輝かしいものばかりではなかった。でも過去があるから今があって、ここからの未来は自分の手で作り上げる。そんな強い意志が全編に満ちたアルバムと言えるだろう。きっと今の彼らには希望に満ちた未来が待ち受けていて、着実にそれを手にしながらこれからを一歩ずつ進んで行くに違いない。
今回は久しぶりのインタビューということもあり、メンバー全員にお話を聞いた。前回のインタビュー時には20歳になったばかりだったメンバーも、多くの経験をして成長している様も窺うことが出来た。(interview:やまだともこ)
一度バンドが崩壊しかけた
── 実はRooftopでのインタビューは3年ぶりぐらいになるんですよ。前のインタビューが2009年にリリースしたシングル『深呼吸』の時で、その間に環境もいろいろ変わりましたね。自主レーベルI×L×P× RECORDS”を立ち上げて、今回リリースされる『未来の始めかた』は、そのレーベルからの1枚目になるんですか?
柳沢 亮太(Gt.):4月にライブ会場限定でシングル『歓びの明日に』を出して、全国流通盤としては『未来の始めかた』が1枚目になります。
── レコード会社や事務所の方の手を借りず、自分たちでやるようになって何が違いますか?
渋谷 龍太(Vo.):明確にいろいろなものが見えるようになりました。大変な反面楽しいことも多いと思います。あと、メジャーで活動していた時に多くの人と出会い、繋がりを作ることが出来たので、メジャーを離れても力を貸してくれる人がいるということが嬉しかったですし、それを見直せたのは良かったと思います。バンドの窓口になっているのが柳沢なので、大変な思いはしていると思いますが。
柳沢:でも、これまでレコード会社や事務所に所属して、ある程度経験を積むことも出来ましたし、正解か間違っているかは別として、自分らがやりたいことをダイレクトに形に出来るというのはストレスもないですから。レコーディングにしてもジャケットにしても、グッズにしても、この4人がOKと思えばOKに出来る。全ての判断を自分たちで決められるんですよね。その分背負うものも多いと思いますが、ダイレクトに出来るのは良いですよ。
── 少し前のことになりますが、2009年11月に『幸福軌道』をリリースした当時はバンド内がバラバラになっていたという話を聞いていて、どうなってしまうのかと思っていたんですが、しっかりと持ち直しましたね。
渋谷:バンドとしてとか人間としてとか、やりたいことをやるという点では元に戻って来れました。それに、音楽とちゃんと向き合えて、その中で切磋琢磨して悩んで答えを出すという点ではあるべき姿に戻れた感じはします。
──当時はバンドの解体みたいな感じだったんですか?
柳沢:解体と言うよりは、バンドの崩壊でしたね。
渋谷:どうしたら辞められるかなということばかり考えてました。
柳沢:『幸福軌道』のレコーディング中に渋谷が倒れたこともあったんです。スタッフの人とのやりとりがうまくいかなくて、渋谷は心も開いてくれなくなっていたんですけど、当時のマネージャーが引っ張り出してでも話を聞いたほうが良いんじゃないかって言ってくれて。この状況ではバンドが出来ない、音源を作ることが出来ないという話をスタッフを交えてして、そこでようやく僕たちがもともと鳴らしたかったものとか、4人がやりたかったもの、「こういうことだったよね」という共通認識を持つことが出来たんです。その後に、自分たちが素直に良いと思ったものを作ってみようというところで、前作の『SUPER BEAVER』を作りました。そこで原点回帰して、今回はそれを純粋に、より良い形で自分たちがやりたいのはこれなんです、というのを提示出来た作品だと思います。
── 『SUPER BEAVER』をリリースして以降、バンドとして向かう方向が固まったということですか?
柳沢:渋谷の歌を中心に聴かせたいというのは共通認識としてあって、そこに演奏だったり、どういう曲を作りたいかということは意思疎通が図れるようになりました。
“今”を認識した瞬間に未来を始められる
── 今作は未来がテーマになっているそうですが、もともと未来をテーマに作っていこうという感じだったんですか?
柳沢:最初から未来をテーマとして考えていたわけではなかったんですけど、気付いたらそういう感じになりました。『SUPER BEAVER』の時は、現状をなんとかしたいけどモヤモヤしてますという歌詞が多かったと思いますが、今回はモヤモヤしたものはあるけれど、俺はこうしようと思う、こうしたいんだという、ひとつの意思表示みたいなものがどの曲にも入っていることに気付いたんです。だから、ただ原点に戻ったんじゃなくて、そこから一歩進んだ曲になりました。で、締めの1曲が欲しいという話をして『始まる、未来』が最後に出来たんです。その曲の最後は「未来が、始まる」という一節で終わるんですけど、それを作った時にひとつひとつの現実と向き合って少なからず答えを出していく、“今”を認識した瞬間に未来を始められるんじゃないかと思い、アルバムタイトルは『未来の始めかた』になりました。
── 今回は合宿に入って作ったんでしたっけ?
柳沢:初めての合宿で、4日間伊豆に行きました。
藤原 広明(Dr. ):インディーズ時代から一緒にやっているエンジニアさんに今回もお願いしたかったんです。それで、その人の繋がりで伊豆の合宿所を紹介してもらって。あと、一発録りでやりたいというのもあって、それが出来るスタジオって都内だとあんまりなかったんですよ。
── 一発録りは歌もですか?
渋谷:歌もです。僕だけ違うブースですが、ガラス越しでみんなの動きを見ながら同じ空気感で録りました。
柳沢:基本的なテイクはせーので、だいたい1〜2テイクぐらい。だから、1日でマックス3曲ぐらい録れたんです。
── ということは、濃厚な4日間でしたね。
柳沢:どん詰まりみたいな濃厚さじゃなくて、コクのある良い4日間でした。
渋谷:テンポ良く進んで、時にはエンジニアさんも一緒に考えてアイディアを出してくれて、何かの目を気にしながらみたいなこともなかったし、自分たちがよいと思ったものをそのまま出すことが出来て、すごく素直な作品になりました。
上杉 研太(Ba.):一発録りでやるというのも、前作の時にエンジニアの人が提案してくれたんです。あとは今回は、この曲を活かすにはというところでいろんな音の要素が入っています。
柳沢:スタジオで4人だけで鳴らしていると、どうしてもこの4人の音にしかならないじゃないですか。ギターも1人しかいないし。でも、例えばこういう楽器を入れてみるのも良いかもしれないよ、というアイディアを出してくれました。
── アルバムは勢いももちろんありましたが、サウンドや歌詞は重みが出てきたような気がしたんです。
柳沢:曲の良さや言葉、メロディーをどれだけ演出出来るかをテーマにやっていたんです。前回はライブと音源をイコールにしようというところに特化してましたけど、今回はコーラスや打楽器を多めに入れたり、ピアノを入れてみたりとか、『your song』(M-5)の頭はアコギが4本入っていたり、曲の世界を増幅させるという作業をとても楽しくやりました。歌詞は言葉数が多かったりすると思いますけど、トータルで伝わるものを大事にしようという考え方でやったんです。
── 確かに言葉数が多いというか、歌詞長いですよね(苦笑)。
柳沢:もともと長いですけどね。
── 1曲も長いですしね。
柳沢:それはけっこうネガティブな面でも言われますよ。普通に喋ってても長いんで(笑)。でも、ニュアンスで伝えるとか、ひと言で伝えるというよりは、それをどういう意味で言っているのかまでちゃんと伝わって欲しいと思っているんです。