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INTERVIEW

トップインタビューthe cabs── 『回帰する呼吸』制作秘話を語り尽くす!

独占インタビュー
『回帰する呼吸』制作秘話を語り尽くす!

2011.12.02

 今年4月に1st.ミニアルバム『一番はじめの出来事』をリリースしたthe cabsから、早くも2nd.ミニアルバム『回帰する呼吸』が届けられた。まず、1st.をリリースした直後に観たライブから数ヵ月後の彼らのライブを観た時に、明らかにバンドがスキルアップしていることを感じた。そして届けられた今作は、着実に彼らが進化を遂げていることを証明する1枚となっていた。首藤義勝(bass & vocal)の繊細な歌声、高橋國光(guitar & vocal)の作詞作曲のセンス、中村一太(drums)の爆発的なドラミング。まだまだ発展途上ではあるものの、これからの彼らが大いに期待出来る作品だろう。
 今回はthe cabsの音を作り出している高橋國光にメールでインタビューを行なった。思っていた以上に書き連ねられた返信メールを見て、作品に対する思いが充分に感じられた。ちなみに、今作のthe cabsへのインタビューはRooftopが独占になるそうです。(interview:やまだともこ)

作品的な要素を出したかった

── 2nd.ミニアルバム『回帰する呼吸』リリースおめでとうございます。1st.ミニアルバム『一番はじめの出来事』が4月にリリースされて8ヶ月が経ってますが、今作はどういう思いを持って作品に取り組まれたんですか? テーマやコンセプトがあった上で、制作に入ったんですか?
「1st.はどちらかというと作品というより記録の側面が強かったので、今回は作品的な要素を出したいと思ってました。選曲が決定した段階から自分の中でそれぞれの曲をアルバムという組織に当てはめるイメージをしていましたね。その後マスタリング済みの音源を聴いたときにしっかり像が見えたので安心しました。表現としてのコンセプトは想像にお任せします」
── 出来上がって手応えはいかがですか?
「それなりに懐の広い作品になったんじゃないかと。前作はあまり自分で聴くことがなかったんですが、今回は聴いています。これが最高、大満足、という域にはいっていないのですが、確実に引っかかりのある作品になったと思います」
── 前作で“もっとこうしたら良くなるな”という思いはどこかありましたか?
「強いて言うならサウンド的な部分が一番ですね。前作は機材を厳選している余裕がなかったので……今回は時間とコミュニケーションを充分とって臨めたので、曲の色が伝わりやすくなったと思います」
── 1st.は初めての作品ということもあって、衝動という意味での勢いも存分に封じ込められた作品だったと思います。1st.のインタビューで“レコーディングはとにかく緊張した”ともおっしゃってましたが、今回のレコーディングはいかがでしたか?
「レコーディングを怖がらないこと、コミュニケーションを多くとること、トライ&エラーを繰り返していこうという意識は強くありました。今回も緊張したんですが、精神的な余裕は生まれたと思います。また、エンジニアの方が冗談を言って常に和ませてくれてましたし、僕らも二度目のレコーディングだったのでリラックスした状態で出来たと思います。エピソードとしては、スタジオの近くに美味しいそば屋があるのですが、期間中はかなりの頻度でそこでご飯を食べてました。途中から“そば屋に行きたいから19時までにはこの曲終わらせよう!”みたいな、順序が違う展開になってたのですが、誰もその異常さに気付きませんでした。或いは気付いていたのかもしれませんが、美味しさで頭がおかしくなってたのだと思います。ときに味覚は人の感覚を狂わせるのだなと後々思いました」
── では、今作を作るにあたり、苦労した点等ありましたら教えて下さい。
「おそらくレコーディングそのものより、曲作りの段階だったり曲名とかアルバム名を決める時が一番苦労したと思います。レコーディングは今回プリプロをかなりして、ほぼ録るだけの状態に持って行っていたので。アルバム名が決まったのは締め切り当日で、前日までずっと考えていたので相当焦りがありました。でも適当にはしたくないし……というなかで結果的に納得のいく形になって安心しました」
── 『カッコーの巣の上で』は『残響record compilation vol. 2』に挿入されていましたが、その他の曲は今作に入れるために作り始めたものですか?
「昔からライブでやっていた曲をいくつかのプリプロを経て選曲しました。基本的に制作の為の曲作りはしたことがないのでライブで演奏して、自分たちのものにして、それをただ録音するという形ですね。カッコーに関しては1st.のリードにする話も出ていましたが、話し合いの結果2ndにまわすことになりました」
── 今作は、歌詞を読むと“生”と“死”に触れているものが多いと感じましたが、そういう意味もあってアルバムタイトルは『回帰する呼吸』になったんですか?
「特に生と死に関してのレトリックは意識してなかったですね。基本的に曲名とかアルバム名は僕に任されてるっていうのが前提として、前作はかなり早い段階でタイトルを決めていたんですが、前述したように今回はタイトルをつけたのがミックスの最終日で、割とアルバムの全体像が見えてからなんですね。それまでにいくつか単語を使いたいっていうのが漠然とあったんです。で、曲を聴きながら歌詞を見たときにやたらと“生まれ変わる”というモチーフが多いことに気付いて、これは全く意識していないことだったので自分で驚いたんです。ちょっと気持ち悪いとすら思いました。呼吸って生きている限り続くもので、ある種の無限とか、停止とか、空白とか、そういったもののイメージが僕のなかにあります。すごく表現するのが難しいんですが、それは呼吸の本質的な意味からのイメージではなく、文字からというか、響きからというか。回帰はとにかく響きも意味も非現実的で一つ次元の違う言葉な気がして、自分のなかでのイメージもぴったりだったので絶対に使いたいなと思いました。実を言うと他にもいくつか候補があったんですが、全体で話し合いをしてこれに決まりました」

ミスしないことよりもライブ感があるかどうか

── ところで、歌詞は変わらずにヒリヒリしていますが、どんな時にこういう言葉が思い浮かぶんですか?
「まず頭をひねって歌詞を書くことはないですね。歌詞書こう、と思ったらPCのテキストにパパっと打ち込んで行きます。表現するのが難しいんですが、作詞は自分の頭の中にある言葉をはめ込んでいって壁を作るような感覚でやっています。僕はパズルとかすごく苦手なんですが、行程としてはそれに近いんじゃないかと。といっても歌詞の全体像はあまり考えないようにしています。自分のなかにある言葉の好き嫌いとか、受ける印象とか、些細なものだけど妙にグッとくる感覚とか、そういった物を基準にしてやっています」
── 本を読んだり、映画を見たり、美術館に行ったり等、何か作品に触れた上で歌詞を書いたりすることはありますか?
「本の影響が一番大きいですね。美しい文章が好きで、それは語学的な要素よりも表現としてなのですが、そういうものを見ると、こういうの書きたいな、と思います。内容的な部分での影響はない…と思いたいです。あとは海外の詩人の作品なんかはすごいチープな言葉を使ってたり、些細な表現を使ってたり、直接的なものが余りなくて好きです。そういうやり方にはすごく憧れますね」
── ネガティブな歌詞が多いように思いますが、それはもしかしたらご自身の中にある何かしらの不安が言葉となって出てきているのでしょうか? それはサウンドの刺々しさともリンクしますか?
「まず何より僕はすごくメンタルが弱いんです。本当にすぐ凹むし、常に自己嫌悪に苛まれているし……。そこの部分で、僕のなかでの“ハッピーエンド”の感覚は確実におかしくなっていると思います。救いがある、と僕が思っている歌詞でも、他の人が見たら救いのないように見えたり。そういうことは多々あります。だから“心情の吐露”とは違いますが、滲み出ているという表現が正しいのかもしれません。不安感というよりも、傲慢な厭世感というか、長大な時間に対して屈服しているというか、ルサンチマンとかそういう部分が。
 サウンドに合わせて歌詞を書くことはなくて常に別のベクトルで考えているのですが、知らずに引っ張られている部分はあると思います」

── サウンドは3人のアンサンブルが絶妙で、演奏が前作に比べると明らかにスキルアップしていると感じました。ライブがたくさんあったり、ツアーに出た事により、意識が変わって来ているのでしょうか?
「やってたら上手くなるの一言に尽きる、と思います、僕は。レコーディングでもライブでも最低限の部分は別として“上手にミスなく”という意識は全員あまりなくて、どちらかというと生々しさとかライブ感を出したいと思っているので。スキルの部分はライブが増えたことで良い影響を受けたと思います。僕は相変わらず下手ですが、バンドとしての演奏は1st.の頃よりスムーズになったと思います。レコーディングでもオケでハマることはなかったですし」
── the cabsは、目まぐるしく展開するサウンドに重なる、透明感のある義勝さんの歌声が魅力のひとつだと思いますが、今作の作曲面、アレンジ面で特にこだわった点等はありましたか?
「演奏的部分での複雑さって言うのは全員あまり気にしてないんですが、面白さは意識していますね。変拍子とか急な展開とかはあくまでそこの副産物だと思ってます。あと絶対的に義勝のメロディーが綺麗に乗ること、キャッチーさを忘れないということ、そこは最近すごく考えています。今回のアルバムで言うと『第八病棟』は今までのcabsの要素も含みつつ、義勝の歌が綺麗に乗っているので個人的に気に入っています」
── 聴いている人がハッとするサウンドというのは常に考えていますか? 特に『カッコーの巣の上で』の展開は息を呑む連続でしたが。
「あくまでギタリストしての感覚なのですが、バンド全体の単純な音量の大小とか音数の足し引きでハッとさせたいという気持ちが常にあります。空間系のエフェクトを一切使わずにいるのもそこによる部分が大きいですね。カッコーにおいてはテンポチェンジだったり急な音数の引き算が多いので、聴く方からすると怒濤のように感じるのかもしれませんね」

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the cabs
回帰する呼吸

ZNR-116 / 1,890yen (tax in)
12.14 IN STORES

amazonで購入

1. キェルツェの螺旋
2. camm aven
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