ルーフトップでの取材中のやりとりにて編集長やまとも氏から頂いた「コラムやりましょうか」という鶴の一声。かなり食い気味で快諾した結果、今現在いそいそとキーを叩きまくっている。埼玉某所の喫茶店にて。
コラムをやるには何か題材が必要だということでやまとも氏と協議した結果、僕の人生における失敗談を書いてはどうだろうかとの結論に至った。「人の失敗ほど面白いものはないですからねえ……」とほくそ笑むやまとも氏のご尊顔は、完全にサイコパスのそれであり、僕という人間の性質を加味し、失敗談を書かせようではないかというその嗜虐精神はまさに有象無象の音楽業界においても一際目立っており、エントロピーが増幅しユニバーサルメルカトル的なタスクがプロトコルでモラルハザードしまくった結果コラム書かせてもらってあざーっすっ!! まじあざーっすっ!! なのだ。ルーフトップに載せていただけるなら、僕の恥部のような失敗談などいくらでもさらけ出し、プライドなぞちぎっては投げちぎっては投げ、靴まで舐める所存なのだ———
去年の三月ごろに渋谷の某ライブハウスでDJをさせていただく機会があった。友人のバンドの企画で、出演するのも見知った人たちばかり、そのライブハウス自体もお世話になることが多く、かなりアットホームな空間で楽しく参加させていただいた。
ライブ終了後といえば打ち上げというのが世の常。皆でテーブルを囲み、あれやこれやと肩の力を抜いて歓談……などと甘いものではない。渋谷某ライブハウスはそのような甘え、惰性による馴れ合いを許しはしない。話をするならカフェへいけ、飲むものだけがここに残り、存在意義を与えられる。アルコールの亡者たちの吹き溜まり。酒神への信仰。アルコールという熱病に侵されたアベンジャーズ。それが渋谷某ライブハウス。飛び交う罵声、なみなみに注がれたショットグラス、整合性のない理由での言いがかり、飲め、飲まない、飲みます、飲むな、いや飲め、トイレ行きます、飲みます、もう一度トイレ行きます、飲みます! 飲ませてください! もう飲めません、いや飲みます、すいませんあいつトイレから帰ってきません……。気づけば前線を共にした戦友たちは儚く散り、残るは数えるほど、僕も満身創痍ながら午前四時まで立ち続けていた。夜明けは近い、僕は勝ち取ったのだ。しかしながら犠牲の上に成り立つ勝利なぞ……と、ふらふらの中、ひと時の葛藤に溺れる僕の目の前に突如現れた五つのショットグラス。そのグラス越しに見えたのは渋谷某ライブハウス店員S氏のさわやかな笑顔であった。ああそっかそうですよねー。
気がつくと僕は見知らぬアパートの部屋の前で寝ていた。午前九時ころだったろうか。まだ肌寒い季節、強烈な頭痛だけが妙に生々しく、コンクリートの冷たさが熱病を取り除くように僕を包んでいた。どうやら誰にも見つかってはいないようだ。部屋の主は休日の惰眠を貪っているに違いない。ふと手元をみやると、なぜか割と高めの生ハムが開封済みで置かれていた。メロンとかに巻くようなタイプのアレだった。脳裏でかすかに残った確かな思考が呟く。またディグっちまった……(また酔った勢いで余計なもの買っちゃったお金ないよどうしよう、の意)。僕はのろのろと立ち上がると、鈍い体を引きずりながら次の戦地へと赴く。そう、二日酔いとの決着をつけるために……。ちなみに生ハムめっちゃうまかったです。