いろんなことが有機的に変化している
── 顔の表情も前と比べると変わりましたよね。
「どう変わりました?」
── イキイキした気がします。
「今日も『I LOVE YOU』をリハでやったんですけど、すごく楽しいんです。バンドっていいなという感想が普通に出てくるぐらい(笑)。姉さん(HISAYO)が加入以降、俺となべちゃんの関係もだいぶ変わってきているんですよ。今までのなべちゃんは“俺が俺が”なところがあって、デモを聴かせた時に俺の意見を受け止めつつも、俺はこう思うんだよねっていうアイツなりの答えをドラムで出してんたんですけど、最近は亮介がこう歌いたいってことはこういう音かなっていう感じになってきていて。いろんなことが有機的に変化している感じがするし、やっと充実してきたなと思っています。前はライブが終わってすぐに焼酎を飲みたくなってたのに、最近ビールを楽しく飲めてますし(笑)。姉さんも曽根さん(サポートギター)も大人だし、ミュージシャンとして先輩だから、俺が自由に曲を書いたり、こうしたいああしたいを受け止めてくれているんです。俺が開けてきたのは、メンバーの力が大きいと思う。最初は同い年の4人で始めて、全員下手くそで、手探りで音源を作ってきたんですけど、今の方がある意味衝動的だと思っています。姉さんは加入してまだ1年も経ってないんですけど、濃い時間を過ごしているので、もう3年ぐらい一緒にいる感覚になってます(笑)。話し合いをしていると、姉さんから“技術的なことはもちろんあるんだけど、ハートの話をしたほうが良いと思うんだよ”っていう意見が出て、それって前まで出来てなかったことで…」
── 前はどんな話を?
「精神的な話は暗黙の了解みたいなところがあって、それを前提に具体的な話をしたいんだよねっていう感じだったんです。でも、お客さんに見せているのはプレイであり音ですけど、なんでその音が出てるのかという元々の部分を共有しましょうってことで。口に出していたか出していないかであって、変わってないと言えば変わってないですけど、曲に対しての意識がはっきりしてきた。だから“I LOVE YOU”を言う自信が出てきたんです」
── メンバーチェンジは転機だったのかもしれませんね。
「それは間違いないですね。今、最も格好良いafocが出来てるんじゃないかと思います。新しいステージに行けるなという手応えはあります」
── “これでどうだ!”という作品になった、と。
「遠慮なく“俺たちこうなんです”って言えます。これまでは良くも悪くも腹を括らなきゃいけないシーンが多くて、俺なりの経験上、言いたい事を今言い切らないとダメだなっていうのがすごくあって…。シンプルなことですけどね。覚悟を決めました、腹を括りましたと言わずとも音で表さなければいけないなと思うし、今の社会でバンドが生きていくのは難しいですけど、“これだけ不安定なバンドだけど自信を持って生きてますよ”って俺は言えるから、それさえあれば充分なんです。それが俺にとってブルースだし、ロックンロールが50年も前からあるんだけど、今やる意味があるというのはそういうことなんだと思っています」
── afocの歌詞の中の“ブルース”という言葉がない時がないですよね。
「言うだけじゃなくて、ブルースというものが何かをなんとなくでも良いから伝えられたらなと思うんですけどね。100年前の労働者の気持ちはわからないけれど、その時の熱い気持ちは伝わるので、ここから100年経った時に、俺らの曲を聴いて生きていくことの意味はわからないかもしれないけれど、情熱だけは伝えられるんじゃないかなと思うし、そういう音楽が出来たらいいなと思います。ブルースを貫いて生きていきたいんです。それが多くの人に届いたら面白いなと思うし、多くの人に届いて見えた景色で出来る曲もあると思う。この5年間、経験することが変われるってことなんだなということがすごくわかりました」
── でも、どれだけ周りに変化が起きても、佐々木さんの言ってる事はずっと一貫してますよね。
「逆に言うとそれが自信を持って。メンバーも、スタッフもお客さんとの関係も、極めたら一対一だと思うので、俺はこうなんですというのを誰に対しても同じ事を言うべきだと思っているから、それがあれば環境が変わってもどうにかやっていけるかなと思っています」