sleepy.abが2月23日に発売するアルバム『Mother Goose』は、日常の忙しなさをふと忘れさせてくれるかのような12篇の童話集。そして、それは一人静かな部屋で聴いていると色んな景色や感情が頭の中を駆け巡り、いつも強ばった私の心を柔らかくほぐしてくれる子守唄のようだ。北の街で丹精込めて作られた『Mother Goose』は、ちょっと頑張りすぎなあなたをポジティブな現実逃避へ誘ってくれるだろう。
そんな作品を生み出したsleepy.abよりボーカル&ギターの成山 剛さん、ギターの山内 憲介さんにお話を聞いてみる事にしました。(interview:樋口寛子/ロフトプロジェクト)
もっとトゲトゲした部分や色んな形を見せたい
──『Mother Goose』を作り終えた今の心境はいかがですか?
成山 剛 (以下、成)「昨年やった全国ツアーの合間にレコーディングをやったんですけど、車内で作業をしたのを思い出しました」
──今回の作品は昨年1年かけて制作していたのですか?
成「はい。昨年の1月末辺りから制作していました。昨年初めてシングルを2枚リリースして、そこから派生した感じがありますね。アルバムを録ろうというよりは、シングルをアルバムの中にどう落とし込むかという作業から始まりました」
──『Mother Goose』を聴かせてもらってまず感じたのは、とても時間を掛けて制作したのだろうな、そして丁寧にものを作る職人気質の方々の集まりだろうなという印象を受けました。
成「ありがとうございます」
──実際北海道に住みながら活動をしていますが、不都合を感じた事ってありますか?
成「あまり感じた事はないです。北海道を出てライブをしに行くと、より札幌の良さがわかるというか…」
──お二人から見て、「東京」はどんな風に映っているんですか?
山内 憲介 (以下、山)「東京ってみんなテキパキしていて、時間のスピードが早いですよね。だから曲を作る時はやっぱり札幌じゃないとダメだろうなと思います」
成「いつも思うんですが、動体視力がいるなって。避けたりして歩くというか(笑)」
──「東京」に住んでみたいと思った事はなかったですか?
成「ないです。住むというよりは来る所という感覚が初めからあったので。外からのほうが、東京や音楽のシーンを冷静に見られるのかもしれないって。東京に行くと芯の部分が飲まれそうな気がして(笑)。外から見て、これはこうしたいって自分たちでチョイス出来るバランスの方がいいかなと思って」
──基本的に曲作りは北海道なんですね。
成「はい」
──北海道以外で、曲作りに関してインスピレーションを受ける事はあるんですか?
成「昨年アコースティックライブで全国ツアーに行ったのですが、プラネタリウムでライブをした時はすごくインスピレーションを受けました」
──プラネタリウムでライブをするってすごく素敵な発想ですよね。バンドの雰囲気にとても合うと思いましたが、そのアイディアって皆さんから出るんですか?
成「各地イベンターさんに色んな所でやりたいと相談したんです。中でも仙台の天文台は素晴らしかったね」
山「ツアーをやる前は、酒蔵などライブをする会場じゃなかったので“ライブが出来るのかな?”って心配だったんです。でも、実際やってみると空間の感じとか、いるだけで気持ち良い場所で音楽が聴けるというのはすごい良かったなと思いますね」
成「音楽だけじゃなく、空間を演出しているような感じでした」
──『Mother Goose』を制作する上で、ここはこだわったという部分を聞かせてください。
成「今まで僕たちの曲を聴いた事がない人でも、Twiiterとか情報が溢れている中でsleepy.abって何となくこんな感じなのだろうなっていうイメージはあると思っています。癒しだったり、気持ち良い音楽とかがクーロズアップされてる感じですが、今までもロックとしてのsleepy.abを大事にしていたので、もっとトゲトゲした部分を見せたいし、色んな形を見せたいというのはありました」
──私はM4『マザーグース』やM8『シエスタ』が印象に残りました。アルバムの中で良い味を出していますよね。
成「今まであったようでなかった曲ですね。『マザーグース』はわりと激しめだしね」
山「アルバムを作ってきて勢いがあるような曲がなかったので、そういう曲を作ってみようと思って」
──『シエスタ』の肩の力が抜けた感じが良い味を出しているなって…。
成「この曲は、レコーディングの終わりがけの頃に、違う色が欲しいよねと宅録で作ったんですよ」
──各楽曲ともに成山さんをはじめ、メンバーさんが作曲に参加されているんですね。
成「今までのアルバムもそうだったんですが、今回はそういった意味ではバランスよくやれました。それと、リズム隊の曲が出てきた事が今回のアルバムの色というか、バリエーションが生まれたのかなってのはあります。その中には、苦手だと思う曲もありましたよ。M10の『トラベラー』のサウンドは、今までのsleepy.abにはない新しい感じだったので、その中でどういった歌詞を書こうかとすごく悩みました」
──生みの苦しみがあるからこそ、お客さんの反応が気になりますよね
成「先日ライブで『トラベラー』と『マザーグース』を演奏したんですが、思ってた以上にお客さんが反応してくれて、いつもは横揺れだったのが初めて縦揺れになったんです。新しい反応を見る事が出来ました。初めて演奏する時って、お互い緊張感があるから結構怖いんですよ」