本誌の人気連載コラム『一生バンギャル宣言!』でもお馴染みの作家・雨宮処凛が新宿LOFTとがっぷり四つに組んで企画するヴィジュアル系イヴェント『バンギャル ア ゴーゴー』が遂に今月20日に開催される。雨宮が愛してやまないバンドに新宿LOFTに出演してもらい、後日LOFT / PLUS ONEにて"公開打ち上げ"という名のトークライヴを敢行するシリーズ企画である。
記念すべき第1回は、雨宮が「まさに雲の上の存在!」と前のめり気味に語るMix Speaker's,Inc.とダウトの2組が出演。イヴェント開催を目前に控え、前者からはseekを、後者からは幸樹をお招きして賑々しく座談会を執り行った。大好きすぎるバンドのメンバーを前に極度の緊張で心ここに在らずな雨宮の姿を想像しながら読み進めて頂くと面白さ倍増、のはず。(文・構成:椎名宗之/写真:o-mi)
未だに夢のようで現実とは思えない!
──まず、どんな経緯で今回の『バンギャル ア ゴーゴー』が開催に至ったのかを雨宮さんに語って頂きましょうか。
雨宮:去年、元赤軍派議長の塩見孝也さんが生前葬をやった時にLOFTのオーナーである平野悠さんと会って、「そんなにヴィジュアル系バンドが好きならイヴェントをやってみなよ」と言われたんですよ。それで半年くらい前からLOFTさんと打ち合わせをさせて頂いて、今回1回目のイヴェントを開催することになったんです。苦節20年のバンギャルの夢がようやく実現したんですよね(笑)。
seek:光栄ですね。記念すべき第1回に出演させて頂けるなんて。
──イヴェントの門出を飾るバンドはMix Speaker’s,Inc.とダウト以外に考えられなかったと?
雨宮:そうですね。とにかくもう…大ファンなので。
seek:ホンマですか?
雨宮:もちろんです! 今もこうしてお2人を目の前にしているのが夢のようで、とても現実だとは思えないんですよ(笑)。
seek:まぁ、僕は「夢に出てきそうな顔や」とよく言われますけどね(笑)。
雨宮:実際、seekさんは私の夢によく出てきますよ(笑)。ダウトさんは一昨年の12月にAREAで初めてライヴを見させて頂いて、凄く感動したんです。
幸樹:ありがとうございます。そのライヴはカウントダウンですか?
雨宮:いや、カウントダウンじゃなくて、滝川クリズテルと山本モナッサっていうLiZとVanessAの変名ユニットが出たイヴェントで、そのトリがダウトさんだったんですよ(2009年12月13日、SPEEDDISK presents『THE 忘年会』)。Mix Speaker’s,Inc.さんもダウトさんも、私はとにかく曲が好きなんです。Mix Speaker’s,Inc.さんは去年の11月にキネマ倶楽部でライヴを見させて頂いたんですが、私の隣で子供がずーっと踊っていたのは驚きましたね。お子さんでも充分楽しめるエンターテイメントなんだなと思って。
seek:せっかく踊っていても、その後に僕が喋ると大抵泣かれますけどね。「あまり近くに来んといて!」って感じで(笑)。
雨宮:Mix Speaker’s,Inc.さんのライヴはミュージカルに近いものがありますよね。ライヴに行くという感じではなく、凄くクオリティの高い観劇に行くようで。
seek:いやいや、自分たちでは学芸会レヴェルやと思うてますよ。いずれにしても普通のバンドやないですけど(笑)。
雨宮:ダウトさんはこの間の赤坂BLITZのワンマンを見させて頂いて、幸樹さんのメジャー・デビューを発表したMCがとても感動的で、思わず泣きそうになったんですよ。ライヴももちろん良かったんですが、そのMCが凄く熱くて…。雑誌のインタビューとかを読む限り、そういう熱く語るキャラクターだとは全く思わなかったので凄く意外でした。
幸樹:僕はこう見えて、結構喋るほうなんですよね。自分たちとしては自然体でいることが一番だと思っているので、ムリに着飾ることができないんですよ。メンバーの中に東京出身がいないので、あまりガツガツしていないと言うか。それが良くもあり悪くもあるんですけどね。
seek:ウチも東京生まれはいないんですよ。幸樹さんは神戸出身ですよね?
幸樹:そうです。seekさんも近いんですよね?
seek:はい。僕は姫路なんです。
雨宮:そうなんですか。でも、幸樹さんは関西の訛りが全然ないですよね。
幸樹:敬語や丁寧語を使う時は関西弁が出てこないんですよ。ウチのドラム(ミナセ)は京都出身なんですけど、普段から関西弁が抜けてしまってるんです。でも、キレた時だけ関西弁が出るんですよね(笑)。
雨宮:ちなみに、私は北海道出身なんですよ。
seek:揃いも揃って東京出身じゃない面々が今回新宿に集まるわけですね(笑)。
“バンギャル”という言葉を誇りに思う
雨宮:幸樹さんのMCに話を戻すと、あの時、「バンギャルはいい言葉だ」みたいなことを仰っていたじゃないですか。あれはどういう意味なんですか?
幸樹:バンギャルという言葉の本来の定義はよく判らないし、自分は使わない言葉なんですけど、僕らからするとバンギャルの人たちは自分たちを支えてくれる大切な存在だし、その言葉とバンギャルさんを誇りに思うし、感謝の気持ちでいっぱいなんですよ。ただ、あの日のMCではバンギャルという言葉を発した途端にフロアから笑いが起こったんですよね(笑)。
雨宮:バンギャルではなくバンドギャルズと仰っていませんでした?(笑) なんで“ド”と“ズ”が入るんだろう? と思ったんですよ(笑)。
幸樹:バンギャルだと単数だから、ちゃんと複数形にするべきかな? と思ってバンドギャルズと言いました。
seek:もの凄く真面目ですね(笑)。でも、バンギャルって言うようになったんは結構最近なんじゃないですか?
雨宮:確かに、20年前はなかった言葉ですね。
seek:ですよね? ホンマに最近聞くようになったなと思って。
幸樹:ただ、バンギャルは女性じゃないですか。男性は何て言うんだろう? と思ったんですよね。バンドマンだとこっちサイドになってしまうし。
雨宮:バンギャル男とかバンギャ男って言いますよね?
幸樹:ああ、言いますね。
雨宮:Mix Speaker’s,Inc.さんはバンギャ姫という独自の呼称を使っていますよね。
seek:そうですね。ウチは毎回お客さんの呼び名を変えてるんですよ。Mix Speaker’s,Inc.には独自のストーリーがあって、今はちょうどサード・ストーリーなんですね。一番最初はモンスターをコンセプトにしたストーリーで、その時はバンギャオバケと呼んでいました。その次のストーリーは宇宙モノやったんでバンギャ星人。今はそれがバンギャ姫とバンギャ王子という愛称になってるんです。
雨宮:seekさんの中でバンギャルのイメージっていうのは?
seek:とにかくもの凄い熱量やなと思いますね。親御さんから「今日もおっかけしに行くんやろ?」とかイヤミを言われたり怒られたりするのをかいくぐって、家出同然で地方まで足を運ぶわけでしょう? その子らの熱量は僕らがちゃんと受け止めてあげたいんですよ。長年お世話になってますし、ただならぬ関係になってるんじゃないですかね。
雨宮:今、バンドをやられて何年目なんですか?
seek:前のバンドも含めると12年くらいですね。
雨宮:その間、ずーっとファンでいてくれている方もいるんですよね?
seek:いるかもしれないですね。ホンマに有り難い話ですよ。辞めるのも辞めないのも、結局はバンド側のわがままじゃないですか。いくらお客さんが「一生付いていきます!」と意気込んだところで、バンド側からなくなるケースがやっぱり多いですよね。でも、お客さんの熱心な応援がなければバンドを長く続けていくことは難しいですし、お客さんに背中を押されながら次のステージに向かえているのは確かなんですよ。お歳暮のひとつも贈らなアカンと思いますね(笑)。