Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー孤独な男女に贈る「せつない」クリスマス読書のススメ

切通理作、中村うさぎ、伏見憲明、枡野浩一、しじみがプレゼンする「せつない読書」とは?

2010.11.23

12/21(火)に阿佐ヶ谷ロフトAにて、孤独な男女に向けて開催されるクリスマスイベント「クリスマスのせつない書店にようこそ」。出演者のひとりで作家の伏見憲明さんがママをしているゲイバア「エフメゾ」に出演者が集い、イベントに向けての打合せをするとの情報を聞きつけ、早速潜入取材してきました。
(TEXT:児玉恵子 Asagaya/Loft A)

setunai_risaku.jpg切通理作
文化批評。著書『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』、『お前がセカイを殺したいなら』、『宮崎駿の<世界>』、『失恋論』、『情緒論 セカイをそのまま見るということ』等。3年前の阿佐ヶ谷ロフトAのオープニングイベントで「サンタ服を着た女の子〜死闘編〜」を開催、2009年12/24にも「サンタ女子たちとクリスマスパーティVol.3 中村うさぎがクリスマスにツッコむ!」を開催し、阿佐ヶ谷ロフトAのクリスマスには欠かせない存在。ネットからあえて「書店」にこだわり、本の話題をする「ゴー宣ネット道場」内の番組『せつないかもしれない』パーソナリティ。
https://www.gosen-dojo.com/?page_id=31

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中村うさぎ
小説家・エッセイスト。『だって、欲しいんだもん!―借金女王のビンボー日記』、『ショッピングの女王』、『私という病』等、整形や買い物依存症などの体験を綴り、 世の本音で生きる女性に支持される。一方、ファンタジィに造詣の深い小説家であり、クリスチャンとして育ってきた経験をもつ。

setunai_fusimi.jpg伏見憲明
作家。『魔女の息子』(第40回文藝賞受賞)、『さびしさの授業』、『ゲイという[経験]増補版』等。毎週水曜日は新宿二丁目にてゲイバア「エフメゾ」のママ。

setunai_masuno.jpg枡野浩一
歌人。『ハッピーロンリーウォーリーソング』、『結婚失格』、『ショートソング』、『君の鳥は歌を歌える』、『淋しいのはお前だけじゃな』等。

setunai_sijimi.jpgしじみ
女優。最新作は『SACHI』『極道協奏曲』『血まみれキャンプ場』等。ネット番組『せつないかもしれない』にて切通理作さんのパートナー。アイドルヲタとしてライブ活動もしており、イベント当日はクリスマスソングを披露する予定。


11月某日夜21:00、伏見憲明さんのバー『エフメゾ』に到着すると、店内は満席の大にぎわい。もともと常連さんでもある中村うさぎさんがすでにいらしていたのでごあいさつを交わしているうちに切通理作さん、しじみさんもご到着。バーのママとして大忙しであちこちの席を回られている伏見さんのお仕事の合間をみて、イベントで取り上げる本とそれぞれのプレゼン担当が決められていきます。

『人魚姫』はブスコンプレックスの女

中村:やるんだったらあたしは『幸福な王子』やりたいな。これね、すごく心のきれいな銅像の王子がさ、貧しい人や恵まれない人に自分の財産をすべて分け与えて、最後は……みたいな話でさ、すごいいい話っぽいんだけど、ここで使われているつばめの立場にたったらひどい話なの。
 つばめを遣いにして、アメジストでできた自分の目玉とかいろいろ運ばせて、最後つばめが疲れきって倒れるんだけど、王子はまったくそのことを意に介してないの。つばめが「自分はつばめなんで寒くなったら死ぬから、南の国に仲間たちと行くからわたしは今日でお別れです」って言うのに、もうちょっといてくれとか言って。

しじみ:あ〜小さい頃テレビでやってました! 怖い絵だったからよく覚えてる。

切通:つばめが最初から神の従者っていうか、神の使いみたいなものだったらまだわかるけど、でもあの話のつばめってそうじゃない。つばめは旅の途中に立ち寄ったっていう前段がわざわざ用意されてるんですよ。

中村:結局つばめは、王子に惚れてるの。でも王子はつばめを一顧だにしてないんだよね。なんだか切通さんみたいじゃない?

切通:そんな僕は『人魚姫』をやりたいです。僕がよく片思いで、叶いそうもない相手に失恋して勝手にショックを受けてるんですよっていう話を中村さんに聞いてもらったら、中村さんが「それは切通さん人魚姫ですよ」って言ったんですよ。

中村:私も人魚姫なんで、手の届かない相手に恋をしてしまうわけですよ。陸の生き物なんかに恋をしたって結ばれるわけないじゃないかっていうね。
 そもそも無理な恋をしながら、それでも陸の生き物になりたくて、魔女に足をつけてくれと。ついでに呼吸もえらから肺にしてもらったんだと思うけど──それは書いてないけど(笑)。それで魔女は人魚姫の声を奪うわけ。人魚姫は人間の姿になって陸地に行って王子様に会いにいくんだけど「好きだ」って言えないの。声が出ないから。ずっと伝えられないの。王子様は気がつかないの。それで王子様は他の女と結婚しちゃうわけですよ。めちゃめちゃせつないじゃない。それで、切通さんは人魚姫だって言ったの。
 でもディズニーは『人魚姫』をアニメにしたとき、ハッピーエンドにしたんだよね。そこがディズニーのダメなところで。
 人魚姫っていうのは声を奪われ、好きとも言えず、本当は自分が魚だって言うことも隠して……。要するに私は人魚姫ってブスコンプレックスの女だと思うの。王子様っていうイケメンに恋をしちゃってさ、でも自分はそもそもさ、下半身魚の化け物なの。その「化け物な私」っていうアイデンティティがずっとあってさ、それでも整形して王子様に会いに行くんだけど、本当は「私はブスだから」ってずっと思っているわけですよ。声を奪われているから愛も伝えられないし、「こんな醜い私が王子様なんかを好きになって、身の程知らずだ」ってずっと思ってるんですよ多分。それで王子様が他の女と結婚する時に人魚姫が悲しんでると、人魚のお姉さんたちが来てさ、ナイフを渡して、王子様を殺せと。王子様を殺したらあなたはもとの人魚に戻って私たちの所に戻って来れるし、もし王子様を殺さなかったらあなたは海の泡になって死んでしまうんだよって言われるのに、王子様を殺せないんだよ。自分を振った男を殺せなくて、自分が死ぬ道を選ぶわけですよ。本当に可哀想なの。

しじみ:私だったら絶対殺すのに……私は人魚姫じゃないですね。

中村:それがディズニーはさ、悪い魔女と戦って。そもそも喋れるしね(笑)。それで結婚してめでたしめでたしって。めでたいのかと。お前は海の人魚じゃないかと。下半身魚だったはずなのに、人間の顔して幸せになるってひどくないですか?

切通:この間ディズニーシーに行ったんですけど、そこでは人魚姫は陸上に出ないんですよ。海中の世界の王女様って言ってて、めでたしめでたし。今はやっぱりエコロジー時代なんですよ。海は海、みたいな。

──人間にならなくていいよ、っていう。

中村:海を大事にしよう、って。

切通:でも中村さんによれば『人魚姫』の本質はブスの深情けなんですね。

しじみ:逆に王子の側で「あたし人魚だけどそれでもいいの?」なんて言われたら、きゅんとしそうじゃないですか? 逆に萌えーな気が。

中村:でも王子っていうのは、だいたい相手のことを考えてないわけよ。やっぱり身の程知らずな恋っていうのが、この人魚姫っていうのもそうだし、幸福な王子も、銅像とはいえ王子だし、かたや鳥ですよ。セックスもできないし。これはやっぱり「身の程知らずな恋」がテーマですね。

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LIVE INFOライブ情報

2010.12.21(火)Asagaya/Loft A 3rd Anniversary
せつないかもしれないSPECIAL
「クリスマスのせつない書店にようこそ」

【出演】中村うさぎ(眠れる姫)、伏見憲明(さびしさの授業)、枡野浩一(離婚男)、中沢健(初恋芸人)
【司会】切通理作(失恋論)、しじみ(恋愛否定派)

OPEN18:30 / START19:30
前売¥1,500/当日¥1,800(共に飲食別)
会場:阿佐ヶ谷ロフトA
前売チケットはローソンチケット、Loft Aウェブおよび電話予約にて11月7日より発売開始!!
・ローソンチケットLコード【L:33986】
・web予約:http://www.loft-prj.co.jp/lofta/reservation/
・電話予約:03-5929-3445 (17:00〜24:00)
註:イベントタイトルは「書店」ですが、書店営業をするわけではありませんヽ( ̄▽ ̄)ノ

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