Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

目まぐるしく変化する時代に抗うかの如く、いつの時代も聴き継がれる極上のメロディを

2010.11.01

大事なのは行動に移す事

── 以前に比べると、曲作りの楽しさは増したんじゃないですか?

野田:今の方が大変だけど楽しいかもしれません。前がつまらなかったとは思わないですけど、今はいろいろ試せるような感じがして。前のバンドをあれだけ長くやっちゃうと、自分の立ち位置とか出す音が決まってきていたし、あまり羽ばたけない感じもあったんです。あの時は、これが正解だと思ってやってましたけど、今の方がこういう風に弾いてみようというアイディアはすごく出てきてます。その分もちろん自分で自分の首は締めてますけど。

── それは今のほうが新たなトライアルをした時に打てば響くということですね。

野田:広げる力は前よりもあります。ドラム・パターンの引き出しが多いヤツがいますから。

── 吉田さんは、本当に恐ろしい若手ですね。

野田:移動中アイツと話をしたんですけど、毎日ドラムを叩いてないと不安になってしょうがないって言ってたんです。俺なんか毎日弾かなくても不安も何も感じませんよ(笑)。

── それは今までのキャリアもありますから。吉田さんの中にはUNCHAINとivory7 chordの違いを楽しんでいる節はあるんですかね。

野田:確実に楽しんでます。どっちが良いとかじゃなくて、UNCHAINはソウルなテイストですけど、うちがやってるのはド・ロックで、お互い違うドラミングをしていますからね。うちの場合はアタックも強いから大変だと思いますけど。今回のツアーでは大阪でUNCHAINと対バンしますけど、どうするんだろうって思っちゃいますね。両方やるってアイツがやるって言ったんでそうしたんですけど。

── 若いから大丈夫ですよ。

野田:と思いますけど、さすがに最近疲れてるみたいですよ。UNCHAINもツアーをやって、俺たちもツアーやってるから。

── 野田さんの実感としては、もう少しライブの本数を増やしたいという気持ちはあるんですか?

野田:これぐらいで良いかなと思います。みんなライブやりすぎなんですよ。そんなにやったら、ライブに特別感がなくなっちゃう気がするんです。音源が売れないと言われている時代だからライブで何とかってやってるバンドが多いですけど、今ってライブにも人が来なくなっているんです。みんなフェスだけになっちゃって、フェスを増やしたらフェスも入らなくなっちゃって、これからどうするんだ? って思いますよね。環境がだいぶ変わっているんですよ。俺たちもそれに多少対応しなければいけないのか、これぐらいの規模ではまだわからないですけど、確実にライブハウスレベルでもいろいろなものが大きく変わっている気がします。例えばUSTREAMで配信とかやってますけど、それが主流になっていったらどうなるんだ? ライブハウスは要らないんじゃないか? って。UST は面白くて好きですけど、いろいろ出し過ぎちゃうのも良くないと思いますよ。この間ラスアラ(LAST ALLIANCE)と打ち上げでそんな話になったんですけど、いろんなものを与え過ぎちゃうとそれが当たり前になってしまうんじゃないかって。無料で配信して試聴させるとかありますけど、やりすぎちゃうと無料で曲を聴けることが当たり前になっちゃうんですよ。それをパソコンで聴けちゃうというのも、スピーカーのクオリティにも限界がありますし、CD屋さんで音源を試聴した時の感動って大事なんじゃないかと思うんです。

── 価値のあるものに対して対価は払うべきだし、簡単に手に入れられてしまう怖さは僕も感じてます。価値のあるものは自分の足で探して喰らいついていかないとダメだし、多少飢餓感を感じるぐらいの方が良いんですよね。だからライブの本数をセーブするとか、吟味された作品を期間をあけてリリースすることって実はすごく大事なことだと思います。

野田:こっちが与えてばかりいるとダメですよね、追っかけてもらうぐらいじゃないと。そういう意味では俺たちのお客さんはそこに属さない連中ですから。無料配信もやってないし、先行試聴も1曲だけ45秒ぐらいにしてホームページで流しているぐらいで。

── バンドの活動を通じて、本来あるべきバンド像を改めて今のシーンに提示したい気持ちはあるんですか?

野田:そのために自主でやっているようなものです。俺たちに出来て、みんなに出来ないはずがないと思ってますし。俺ら以上のことができないと、音楽会社は何だよという思いにもなりますし。これを口に出して訴えたいわけではなくて、結果で表したいんです。言うのは簡単だけど立証しないと。後ろ盾も何もないけど、これだけやれたぞということを。

── 本来のインディペンデントイズムはそういうものですからね。

野田:やれって言われてもなかなかできないですけどね。始まったらやれるものだし、やらないと始まらないですから。自分たちでやれる限界まではこのアルバムの段階でやったから、来年どうするかはツアーが終わってから考えようかな。

── フルアルバムを1枚作ったことで、ivory7 chord像がくっきり見えてきた部分もありますよね。

野田:もちろんそうですね。これが軸ですから。ライブも出来上がって来るから来年が楽しみです。前のインタビューで言ったかもしれないけど、バンドってドラクエみたいなものなんです。敵を倒してレベルを上げて、装備を増やしてというノリなんですよ。僕たちはまず機材車を買うところからですけど。ドラクエで言うところのこん棒を最初に買うみたいな感じです(笑)。

── 最近は、ドラクエの途中で電源を抜いてしまうバンドも多いですよ。リセットしてすぐに新しいバンドを始めるんですけど、足腰が鍛えられてないからすぐに辞めちゃう。好きでバンドをやっているはずだし、好きでやっているからには多少のリスクは承知の上だと思うんですけどね。

野田:みんなリスクは背負いたくないんですよ。バンドってステージ上では楽しいだけに見えますから、リスクがなさそうに見えるんです。

── 逆に言うと、今みたいな時代は本気で退路を断ったバンド以外は残らないから風通しが良いのかなという気はしますけど。

野田:そういう意味ではやりやすくはなってますね。

── パッケージひとつでも、ここまでこだわり抜いているから残っていける気もしますし。

野田:出せば売れる時代でもないし、それなりなものだったらそれなりにしか伝わらないんです。そのバンドの見え方にも通じてしまうところがあるんじゃないですか? すごい時代に突入してきますよね。

── でも、先人バンドも地に足を着けた活動をしてきたわけだから、ivory7 chordの活動の仕方は共感ができるところがたくさんあるんです。

野田:昔はこういうバンドばかりだったはずなんですけどね。俺は先輩たちに教えて頂いたものをやってるだけで、自分で開拓したとは思ってないですから。

── そういう手法でやっているバンドが、あまりにも少ないのが現実なんですよね。

野田:考え方が、バンドマンがミュージシャンになりすぎちゃったんじゃないですかね。何千人も入る会場で毎回やっているわけでもないのに。

── 僕たちは生身のバンドマンが出す五線譜に載らない音が好きで、それはバンドマンでなければ出せない音だったりするんですよ。

野田:バンドマンでなければ出せないものって、作り込みすぎるものではないですしね。

── そういったことも含めて、これからは淘汰される時代になってきますよね。

野田:新しい時代が来年辺りに来るんだろうな。どんどん削られて行くと思います。

── まさに『Change』ですね。変革の時ですよ。

野田:これをみんながどう感じてくれるかですよね。自主だって言うのは、聴いてる人たちにはそんなにわからないことだと思うんです。でも、俺たちが今後いろんなアイディアを出しながら活動した時に、音楽の関係者がもっとアイディアを出してメジャーも面白いことやるじゃんっていうのが出てくると楽しくなるんですけどね。

── メジャーの人たちは地に足着けて頑張ってるバンドに夢を与えて欲しいですね。

野田:いつの時代の事言ってるんだよっていう人いっぱいいますからね。

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一流の音楽ファンが作った作品

── 流通のあり方とかプロモーションの仕方とかライブの運び方とかは置いておいて、まずivory7 chordは音楽自体が良いわけで、バンド名にもある7th chordのキュッとなるんだけど疾走感がある感じというのは、音楽でも映画でもマンガでも普遍的だと思うんですよ。だから、残るものだと思います。

野田:良い意味でニュートラルな感じでやってるから、大丈夫だと思います。ずっとゴリゴリしてるわけでもないし、ずっとゆったりしている歌モノでもないし、ロックンロールでもないしスカでもないし。

── 今どき珍しいぐらいのストレートなロックアルバムですからね。

野田:そうなんですけどね。音数は広がりを持って作ってはいますけど、大西の才能の広がりと同調しているような感じです。

── あの広がり感が大西さんの人間的な成長とリンクして、30歳を超えたらもっと良くなる気がしますね。

野田:もしかしちゃうんじゃないでしょうかね。俺は30代の半ばにもなって人生の下りに入ってますから(笑)。俺がセンターに立たなくなって良かったなと思いますよ。

── 僕たちはロンスケ=野田さんというイメージがありましたが、そこで大西さんをセンターに据えるっていうのは意図的だったんですか?

野田:俺はあれだけ真ん中をやればもういいやって思ってますし、大西をもっと前に出したかったんです。並の人間じゃ真ん中って無理なんです。でもアイツは、俺がちっちゃくなるぐらいの大きさを持つ可能性があるので、そこに期待しているんです。でも、いきなりやれっていっても無理な話ですからね。とりあえず、お互いが成長し合えていけたら言う事ないです。今はどうしても俺が前に出ているから、上手に俺を使って踏み台にして行ってくれるといいかなと思います。

── バンド間のバランスが窮屈じゃなくて、うまくまわってる感じは音にも出てますね。

野田:前に「野田さんは大西さんのファンなんですね」って言われた事があって、その言葉にすごく納得したんです。たぶん、ベースで歌も歌っているけど、大西のファンがやってるみたいな感覚かもしれないですね(笑)。センターだと前しか見えなかったですけど、上手にいるおかげでメンバーも見れるし。吉田もああいうドラミングするから、こっちも頑張るじゃないですか。だから今すごい楽しいです。

── なんとなく今思ったんですけど、野田さんはプロデューサー的な資質があるんでしょうか?

野田:そんな大それたものではないです。ただの音楽ファンです。

── 一流の音楽ファンが曲を作るから、こんなに良い曲が出来るのかもしれないですね。

野田:バンドのファンの人がライブレポを書いた方が良いものが書けるのと一緒ですよね。音楽ファンだからこういう楽曲が出来上がると思うんです。

── 全てはそういうことなのかもしれないですね。

野田:だから、今は音楽業界自体もあまり良くないですけど、何か変わって行けたら良いなと思います。俺は変われないですけどね、こん棒持って最後のボスまで行っちゃうぜってぐらいの。レベルは100ぐらいまでブチ上げて行きますけど(笑)。

── ちなみに、今年の2月2日はivory7 chord初ライブでしたけど、来年の2月2日のご予定は?

野田:………考えてなかった! やらなきゃだめですよね。すっかり忘れてました。何やろうかな。

── この日の限定のCDを出すとか?

野田:10月いっぱいでプレスをやらないと間に合わないですからね…。時間的にムリです(笑)。何か他の事を考えます。

── Rooftop誌面上では、来年の2月2日に何かあると書いてしまって良いですか?

野田:はい。そしたら、やるしかないって奮い立たせられますからね(笑)。


PHOTO BY:橋本 塁

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