2010年、元WRONG SCALEメンバーの大西と野田を中心に結成されたivory7 chord。色彩に溢れ、甘美なメロディが最大の持ち味。また、抜群のハーモニーは、自らのイメージと意志をくっきりと伝えているようでもある。今年2月には『Light a tree』で華々しくデビューを飾り、そこから約7ヶ月。ついにファーストフルアルバム『leaves』がリリースされた。前作から増したアンサンブルの妙、ハーモニーの美しさ、サウンドの耳障りの良さ、そしてテクニカルな表現力は、ファーストにして大名盤が完成した。「今の環境の中でやれる限界値まではやった」と自信を持って言える作品だ。
現在は、この作品を引っさげ各地で待っていてくれるお客さんがいるという喜びを噛みしめて"leaves TOUR 2010"真っ只中。バンドとして無限に広がる可能性を感じながら、今ようやく地面に降り立ったivory7 chordは、ここからさらに進化し続けていくことだろう。今回は、ボーカル&ベースの野田剛史に単独インタビューを敢行した。(interview:椎名宗之 / text:やまだともこ)
本来バンドがあるべき姿
── 9月に『leaves』がリリースされ、現在リリースツアー中ですが感触はいかがですか?
野田:ツアーをやる前は、果たしてどうなるのかなという不安はありましたよ。まだ結成して1年も経ってないし、ライブもそんなにやってないし、不安と期待が入り交じっていたんですけど、ツアーの中盤を迎えた今のところはすごく良い感じです。各会場に行って、お客さんが待っていてくれたというのがすごく伝わってくるんです。9月に『leaves』をリリースしましたけど、インディーズで自分たちでバンドを回しているので雑誌やテレビに広告が出せないんですよね。だから、売り場でしか展開をしていないんです。でも、CD屋に行って音源を聴いて響いてくれた人がちゃんといたんだなって。そういう人たちがここに集まってくれているんだって思ったら、感慨深いものがありました。今はデジタル社会になってますけど、売り場発信でやって良かったなという感触はあります。
── 伝える側と受け取る側が、音に共鳴しあってライブ会場に足を運ぶなんて理想的な流れですよね。
野田:バンドって、本来はこういうはずなんです。俺たちが特別ではなくて、当たり前のことをやっているだけなんですけどね。
── 前作の『Light a tree』をリリースした時もDIY感は、バンドにとって肝でしたよね。
野田:この期間でアルバムをリリース出来たという事は、シングルの反応が良かったから出せることであって、聴いてくれるみんなに流れを作ってもらえたという感じもしています。こればっかりは、俺たちで強引にできるものでもないですからね。
── 今年の2月2日に下北沢SHELTERで初ライブをやった時は、WRONG SCALEのメンバーが新しく始めたバンドという期待値でお客さんが集まってくれた感じはありました?
野田:それはすごく感じました。そうじゃなきゃ、曲も知らないCDも出してないバンドのライブに、あんなに集まらないでしょ。よく集まったなって思いましたよ。
── でも、それだけの人が集まってくれて、新しいスタートを切れた手応えはあったんじゃないですか?
野田:あの時は、曲が手に付かなくてフワフワしていたし、なぜこんなにお客さんが集まってくれたのかわからないままやってしまった節はあるんです。前のバンドが前のバンドだったので、前のバンドを期待して来ているのか、本質を見て来ているのかわかりにくいところではあったんですよ。
── となると、地に足が着けたのは4月に新代田FEVERでやったワンマンの時になるんですか?
野田:いや、最近ですよ。アルバムを録って、自分たちで自分たちのことを昇華できるようになってからです。今回のツアーで、初ライブ以来見に来ましたっていう人がいたので話を聞いたんですけど、「SHELTERの時に比べると全然違うバンドみたいだね」って言われたんです。ライブの映像や音を聴いて振り返らないタイプなので、人の反応が気になって話を聞くんですけど、見てる側はどんな感じだったんだろうなって思います。
── 音源だけ聴いてもよりアグレッシブになってきたし、楽曲が引き締まった作りになっている感じはありますよ。
野田:対応するのが大変ですけどね(苦笑)。そこはツアー中にベタ踏みで詰めているところもありますけど。
── 吉田さんのドラムの技量が優れているというのもありますよね。1曲目の『Prologue』では連射しまくっていますし、ちょっと打ち込みっぽい感じにも聴こえますよ。
野田:打ち込みのサウンドはかぶせているので、そう聴こえるかもしれません。あと、大西がドラムを作り込んで来るんですけど、いつも面白いリズムを持って来るんですよ。ベースとしては、どこにどう合わせたら良いのやらって大変ですけど。「これどうすればいい?」って聞くと「任せます」って言うぐらいで、あまり指示してくれないですし。
── 今回のアルバムは、シングルで打ち出した感じを増幅させていくというのが基本的な発想になるんですか?
野田:そうです。曲が上がってきて、並べてみながらアルバムにしていくので、最初からこういう雰囲気にしようというのはそんなにないです。それで、最後にあと1曲欲しいなっていう時に、どういう曲を作ろうかという辺りでベタ踏みしました。
── いつもに比べると、ベタ踏みする感じは少なくなったんですか?
野田:けっこうベタ踏みしました。曲が全て揃ってなかったですから。
── それはいつものことじゃないですか(笑)。
野田:昔からそうなんですけどね(笑)。曲が上がらなかったですね。大変だったけど、やれる環境での限界値はやったつもりです。
── でも、改めて思うのは、大西さんのソングライティングの力量がグッと増したことですよね。
野田:すごいですよ。アルバムの先が重要だったりするので、この次が楽しみです。
── アルバムでこれぐらいのクオリティが出来るというのは、シングルを作った時にある程度予想は出来ていたんですか?
野田:はい。出来上がって聴いてみると、案外しっとりした曲が多いなとは思いましたけど。シングルは4曲中3曲ぐらい攻めてましたが、ガツガツした感じではなくなりましたね。
── 叙情感がある中にも疾走感があるという、純粋にメロウなまま終わる曲はあまりないですからね。『reach you』も最初はしっとりしているから、その路線で行くのかと思いきや最後は高揚感のある感じになっているし、『Autumn leaves』も叙情的だけどドラムを激しく踏んであったりとか。
野田:『Autumn leaves』はアコギで弾いてますけど、ライブでは歪みでやったり、ちょっと違う感じになっていると思います。
── 音質はシングルのほうが生々しい感じはありましたよね。今回はわりと端正な音作りになっているなと。
野田:レコーディングの環境を変えたというのもあるかもしれません。今までは、ドラム以外はほとんど家で録ってましたけど、今回はスタジオで録った音をけっこう使ってます。
── なかなか4人全員が集まるのは難しいかもしれませんが、スタジオに入る回数は増えたんじゃないですか?
野田:増えました。ツアーもあって練習をしないとならないですから。ベタ踏みはいけませんよね。
── 日頃の練習がなければ踏むものも踏めませんから。
野田:ノリで逃げるにも限界がありますし(笑)。このアルバムはそういう意味ではしっかりやらないとなという感じはありました。