他のバンドにはないSDRの楽しさ
──ファースト・アルバムを完成させるまでのバンドは純真な気持ちで音楽と向き合っているものですからね。
仲野:だからファースト・アルバムってどのバンドもイイんだけど、それからどんどん個別になっていくわけ。「言わなくても判ってんだろ?」って倦怠期の夫婦みたいになる。SDRはそういうところがないのがイイ。あと、俺にとっては世代間っていうのが割と大事で、このバンドに20代、30代のヤツが入るとちょっと違うんだよね。
名越:20代、30代はキツくて入れないよ(笑)。
仲野:お前、アナーキーに入った時にキツい感じが全然なかったじゃん(笑)。『ディンゴ』をレコーディングした時にいきなり俺にダメ出しだもん、新人のクセしやがって(笑)。
名越:だってダメだったんだもん(笑)。
仲野:まぁそうだけど(笑)。でもいくらダメでも、俺だって一応はそれなりのキャリアとネーム・ヴァリューがあるわけじゃん?
名越:それを差し引いても酷かったってことだよ(笑)。
──EBIさんは6歳上の茂さんに遠慮したりしないんですか?
EBI:僕は無責任ですからね。「ハイ、あとはお願いします!」って好きなようにやってもらってます。
内藤:その辺をまとめてるのが俺なのかな(笑)。
仲野:でも、これだけ勝手にやってる4人をまとめてるのがきっと音楽なんじゃねぇかな。喋ってる時より演奏してる時のほうがまとまってるもん。
──各自SDR以外にもバンドやユニットを継続していますけど、その中でSDR独特の良さってどんなところですか。
名越:第一に“楽しい”だよね。実験的なこともできるしさ。
EBI:“こうじゃないといけない”っていう縛りがないことじゃないですかね。“この4人で何ができるか?”という意識がみんなの中に常にあって、そこへ向かいながら音楽を作る楽しみがSDRにはあるんですよ。
名越:何してもイイんだよね。それに対して誰も文句を言わない。誰かが“エエッ!?”と思うようなフレーズを出しても、やってるうちにそれもアリかなと思える。
内藤:ただ、SDRの色っていうのがちゃんとあると思うし、その色の中だったら何でもアリってことじゃないかな。“そりゃねぇだろ!?”っていうフレーズはさすがにあると思うよ(笑)。
仲野:俺はそういうのからだいぶ解放されたな。言葉なんて何百年も前から限られてるわけだけど、言葉を自由に配列して組み合わせるのが今は凄い楽しいよ。
名越:大体、『コーヤ・モーヤ』なんてタイトルは普通付けないでしょ?(笑) でも、それをOKにする懐の深さがあるのが面白い。
内藤:まぁ、『コーヤ・モーヤ』はホントにこれで決まっちゃったの!? って思ったけどね(笑)。でも、『タイ!タイ!タイ!』みたいにダジャレ王が本領を発揮してる歌も、ストレートな『感動』の歌詞も俺は凄く好きだよ。
──『一瞬の時』の中で“相談”に掛けて“ヤーレン・ソーダン”と続いた時はぶったまげましたけどね(笑)。
仲野:ああいう言葉遊びが俺は大好きだから(笑)。ワードに関してはこれからもっと自由になるんじゃねぇかな。“青春”ってワードも一周回ってアリになったりしてね(笑)。体力は衰えても脳ミソはちゃんと働くし、やるべきことが明確で、そこへ向かっていけるからやれないことはないよね。ロックってやっぱり“生き方”なんだよ。もうちょっと生きると“方”が取れて“生きる”ってところまで行けるかもしれない。瀬戸内寂聴の域を抜くかもね(笑)。
──いつか茂さんが青空説法を開くことがあるかもしれないと?(笑)
仲野:そりゃウザイねぇ(笑)。まぁ、昔からウザかったし、今でも充分すぎるほどウザイけどさ(笑)。